表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
48/82

疑惑(中編)

土方はなつに疑いの目を向けながら徐々になつに近づいていった。

「そうか…こんなことはされなかったのか…?」

そう言うと土方はなつの耳にふっと息をかけた。

「ひゃあっっっ////」

なつの反応が面白かったのか、今度は甘噛みしてきた。

「いやっ…////」

調子に乗る土方。女の扱いには慣れているので、どこが弱いかしっかりと心得ているのだ。耳から段々と首筋にかけて口付けをし、舌を這わせる。

「やめてっ…ん…////」

おもわず声が出たなつを見ると、土方の口付けに感じ、今までにない色気を放ったなつがいた。


   あ…やばい…


 土方が反応した。


   い…今ならまだ間に合うっ////


 しかし、なつから放たれる色気は尋常じゃなく、土方が止められる物ではなかった。


   あ…無理だ……


「…土…方さん…やめ…て…////」

感じた顔でそんな事を言っても土方の興奮をあおるだけだった。土方は嫌がるなつに強引に口付けた。

「ンンッ…////」

なつの逃げるような仕草に土方は執拗に迫る。なつを押し倒し、身動きの取れない状態にさせてから、着物の中にスルリと手を忍び込ませる。口付けは激しさを増し、土方は舌を絡ませた。

「…土方…さん……もうやめ…」

 なつは涙目になりながら、必死に土方から逃げようとするが、乗りかかられているため身動きが取れず、土方のされるがままだった。


「ひーじかーたさぁーーーん!」

 襖が勢いよくと開いた。

土方に暇を潰して貰おうと思い、将棋を持ってきた総司。今、総司の目に映るのは、兄と慕う人が自分の恋仲の相手を襲っている姿だった。

 ガシャーンと持っていた将棋を落とした。

「……そ…総司…」

 涙目になりながら手を伸ばし、助けを求めるなつ。総司は土方の着物の襟元を掴み、殴り飛ばした。土方は襖と一緒に庭に転がる。自分が悪いと思いながらも殴られた事に腹を立て、殴り返した。

 総司の尋常じゃない怒りに、危険を感じたなつは仲裁に入る。しかし、二人の激しい取っ組み合いに突き飛ばされてしまった。そこへ駆け付けてきた近藤、永倉、左之助。そして現在に至る。

 二人を一緒にさせておくと、いつまた殴り合うか分からないため、とりあえず、別々の部屋で話を聞く事になった。


「歳…お前はいったい何をしているんだ!女を抱きたきゃそれなりの所があるだろう。」

近藤は呆れて溜め息をつきながら言った。

「…いてっ!!!」

「す…すみません…」

 総司に殴られた傷の手当てをする平助。どうも平助は貧乏くじを引いてしまうらしい。

「とりあえず、何でなつにあんなことしたんだ!」

 自分の幼なじみの女癖の悪さは重々承知してたつもりだが、まさか昔から共に暮らしてきた、妹のような存在のなつを襲うとは思ってもいなかったのだ。

「初めはちょっとからかってやるつもりだったんだよ。だけど、あまりにあいつが色っぽい顔するから…男だったら俺の行動は普通だ!!」

「からかう事自体が普通の行動じゃない!!はぁ…もう良い。反論する気にもなれない…。お前、総司にはちゃんと謝れよ。それと!なつにもな。」

 近藤はそう言い捨て、総司の元へと向かった。


   あ…近藤さん…私を置いて行かないでぇ〜〜〜!!


 平助の心の叫びは近藤へは届かず、土方の方をちらっと見る。

「何見てんだよ!」

「…すみません……」

 どこまでも貧乏くじを引く平助なのであった。


総司の部屋では、なつが総司の傷の手当てをしていた。

「…総司……ごめんなさい…」

 必死に抵抗しようとしたものの、土方に感じてしまったのは事実。その意味も込めて、総司に謝罪した。

「なつが悪い事じゃない。」

 なつの本意を知ってか知らずか、なつを責める事はしなかった。

「総司…大丈夫か…?」

 ゆっくりと襖を開け、近藤が入ってきた。

「大丈夫ですよ。それより土方さんは…」

「あいつも悪気があった訳じゃないんだ。ただ馬鹿なだけで…」

 土方には見放すように言っておきながら、総司には土方を庇う言い方をした。

「なつからだいたいの話は聞きました。久坂の事は仕方ありません。それもなつの仕事だったと思えば諦めもつきます。」

 総司、大人になったな…とふと思う近藤であった。

「でも土方さんは…土方さんは私となつを応援してくれてると思ってたんです。なつのいる店を教えてくれたのも土方さんですし…」

 総司には土方の行動が理解出来ないのであろう。応援してくれたり、裏切ったり、どちらが本来の土方なのか分からなくなっていた。

「とにかくお前らが仲違いしてもらってちゃ困るんだ。総司、大人になってくれないか?」

「………分かりました。土方さんと二人で話をさせてください。」

「あぁ分かった。」

「…近藤さん……」

 心配そうに近藤を見つめるなつ。大丈夫だと言うように頷いた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ