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その時まで

なつは、他の隊士達より少し早く島原の角屋という店に来ていた。天神牡丹としてではなく、新選組女中のなつとして舞踊を披露することになっていた。そのための着付けやら化粧やら色々と準備が忙しい。

 遊女特有の化粧はせず、いつもより濃いめに化粧をした。


   何だろう?さっきから落ち着かない。

   皆の前で舞踊を披露するから?いや、そんな簡単な物じゃない。

   起きてはならない事が、これから起きるのではないか。

   そんな嫌な胸騒ぎがする…。


何かの不安に囚われながら宴会の時間は着々と近づいてきていた。



 屯所では、近藤から芹沢に、新見の切腹が伝えられていた。

「……そうか…」

 芹沢は一言呟いただけで近藤の前から姿を消した。

 芹沢は気付いていた。今日の宴会がただの宴会ではないことを。自分の最期が近いことを…。


  新見、俺もすぐに行くさ。あっちでもまた俺の世話をしてやってくれ。

  抵抗しようと思えば出来る。でもそんな気も起こらない。新選組はもう近藤の力で     やっていける。俺はそのお膳立てをしてやったまでだ。

  俺を殺るのは誰だ?俺に恨みがある土方か?初めて人を殺る沖田か?


  ひとつ気掛かりは…お梅だ。出来る事ならあいつには生きて欲しい。でも俺がいなくなった世界に生きるなんてあいつは望んでないだろう。

  それなら一緒にいこうぜ?

  死の恐怖を味わわないように、俺がお前を殺ってやるよ……。


なつの胸騒ぎはおさまらないまま、宴会は始まった。

「今日は皆さん、遠慮しないで呑んで下さい。朝まで騒ぎましょう!」

 平隊士達は幹部の奢りで酒が呑めるとあって、皆上機嫌だ。次から次に運ばれてくる酒に浴びるように飲む隊士達。

 そこへ、いつもの仕事着とは違う、艶やかな着物を着た女性が現れた。

「……え…?おなつ…さん…?」

「…うわっ//////きれいだ……」

「//////////////」

 平隊士達はそこになつが来るとは聞かされておらず、ましてやこんな艶やかな着物姿を見られるとは思っていなかった。全員が口をぽかんと開け、顔を赤らめる者、おもわず酒を落としてしまう者がいた。

「実は、なつには特技があってだな…舞踊をやっているのだ。今まで披露する機会が無かったが、今日は特別にやってもらう事にした。」

「「「おぉぉぉぉ」」」

 歓声が沸き上がった。なつの舞いは誰しもが釘付けになり、その妖艶さ、艶やかさに、一瞬で恋に落ちる者が続出した。総司と恋仲なのは全員が知っている事だが、それでも自分に入る余地はある!と張り切る者もいた。

 なつは舞いながら、近藤達の表情を見る。明らかに固い。何か自分に隠している。長年一緒にいた者には、僅かな変化が分かるのだ。


  いったい何を隠しているの?

  ねぇ…近藤さん…


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