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屯所での報告

 総司との愛を確認し合った次の日、なつは島原での仕事を終え、屯所へ帰るところだった。店の女将と禿の蓮華に挨拶をし、島原大門に差し掛かった。

「なつ!!」

 名前を呼ばれ、顔を上げるとそこには愛しい人の笑顔があった。

「総司、今日、見回りは?稽古はないの?」

「さぼった。」

「土方さんに怒られるよ〜?」

 そう言いながらも嬉しさを隠せないなつは顔がほころぶ。総司はなつの手をとり、屯所への道を楽しそうに歩いていた。


 二人が屯所に入ろうとすると、ちょうど土方が外へ出て行くところだった。二人の世界に入り込み、土方の存在に気付かない総司となつ。この幸せな雰囲気が癇に障った土方。

「おう、なつ、お帰り。総司、お前また稽古さぼったろ?早く行け。で、なつはいつもの仕事に戻れ。」

 声をかけられようやく土方の存在に気付いた二人はあからさまに嫌な顔をする。

「えぇぇぇ。今日は総司とゆっくりすごしたいなぁ。」

「そうですよ。ちゃんと成果を上げてきたんだからご褒美に一日ぐらい休みをくれたって良いじゃないですか。」

 ああだこうだと言う二人に土方は青筋を浮かべた。

「うるせぇな!褒美は昨日やったじゃねぇか!総司に店を教えてやったのが褒美だ!お前ら、まだいちゃつくつもりか!!」

 昨晩、総司になつの店を教えたのは土方だった。この時ほど、自分が総司に優しく気遣ってしまった事を後悔したことはない。


 なつは帰宅の報告をしに近藤の部屋を訪れていた。

「なつ、本当にご苦労だったな。お前のおかげで長州の奴らを京から追い出すことに成功した。しかし奴らはまた戻ってくるだろう。このままで終わる奴らじゃないと思う。その時はまた力を貸してくれるか?」

「近藤さん、もちろんですよ。私はそのためにここにいるんです。」

 なつの心強い一言に近藤は安堵の表情を向けた。

「…にしてもお前、よく久坂からそんな話聞き出せたよな。噂じゃあいつ、頭がきれる奴らしいじゃねぇか。それを丸めこんだんだから大したもんだよ。…まさかお前………。」

 土方は勘が鋭い。土方の言葉で一斉に近藤・山南の視線が刺さった。

「や…やだなぁ…そんな目しないでくださいよ。ちょっと惚れられただけですよ…。」

 突如、障子が外れそうなほどの勢いで開け放たれた。

「惚れられた?!」

 竹刀を持った総司がそこに立っていた。

「総司、お前、稽古に行けって「何されたの?!」

 土方の言葉なんて耳に入らない総司はなつに詰め寄る。

「…何されたって…えーっと………忘れた!!」

 小首をかしげながらおもいきりはぐらかした。

「なつ!まさかお前、総司の前に久坂に抱かれたか?!」

 土方の遠慮のない言い方になつは慌てる。

「抱かれてない!!神に誓って久坂には抱かれてない!!」

 なつの反論に疑問を持ったのは山南と近藤だった。

「…久坂……には?」

「総司には…か…。お前ら、いつの間に…。」

 慌てて否定したことが別の意味で肯定してしまい、顔の赤くなるなつと総司。

「あ…あたし、夕食の準備してきまーす…。」

「私も稽古に…。」

 なつに続いて総司も出て行く。

「それにしてもなつ、絶対久坂となんかあったぞ。」

「あの総司となつが…」

「もう沖田君もなっちゃんも大人の仲間入り…か…。」

 それぞれの思いを口にする三人であった。


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