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八月十八日の政変

 一連の長州の真意はすぐに新選組に伝えられた。近藤が会津候へその旨を知らせようとしていた時、会津と薩摩は長州のやり方を危惧し、長州を京から追い出すという計画を立てていた。そして新選組にも出動命令が下ったのである。


「我らはこれから御所に参内し、御花畑を護るよう命じられた。」

 近藤が皆の前で言った。

「御花畑?何だそれは。もっと大きいもんじゃねぇのかよ。花を護ってどうするんだよ。」

 芹沢は明らかに嫌そうな顔をした。

「私にもよく分からないんです。広沢様も知らないって言うし、行ってみないことには何とも…。」

 近藤は会津藩の公用方の広沢から命を受けたのだが、おそらくあまり必要でないところなのであろうことを近藤は理解していた。

「とにかく行くぞ。出陣だ。」

 芹沢の号令で、新選組は御所へ向かった。


新選組が御所へ着いたころには、既に門には会津や薩摩・淀などの兵士が護りを固めていた。

「何だ、お前ら。関係のないものは即刻立ち去れ。中へは一歩も入れさせん。」

 門を護る兵士は浅葱色の羽織を纏った者たちを一掃しようとしていた。刀を抜き、いつでも斬りかかれるような体制をとっている。

「我らは会津藩御預かり新選組である。会津候の命により御花畑を護るよう賜ったのだ。中へ入れさせていただこう。」

 近藤は胸を張って言う。しかし門を護る兵士たちからは失笑が漏れている。

「御花畑だってよ。」

「壬生狼にはそれくらいで十分だな。」

 あちこちから聞こえる声に、皆の顔からは怒りが込み上げて来ていた。その時、ある男の一言で笑っていた者達から顔色を奪う。

「黙れっ!!」

 芹沢は鉄扇を広げ、近くにいる兵士の頬を軽く叩いた。その兵士は芹沢のあまりの迫力にその場にへなへなと座り込んでしまった。芹沢の威圧により、新選組は悠々と門を通って参内できたのだ。

芹沢の存在を嫌という程感じた土方。悔しさが溢れていた。芹沢の存在こそが局長という風格であり、威厳であった。そして土方は決意する。

『近藤を局長とするためになら、自分は鬼になってやる。』


 新選組が御花畑を護っている頃、堺町御門では長州と薩摩の睨みあいが続いていた。

「堺町御門は我ら長州がお護りすることになっている!」

「長州は門の護衛から外された。即刻立ち去れ。」

「何を言う!帝にお伝えしろ。長州藩士久坂玄瑞がお迎えに参ったと。」

「帝は長州に愛想をつかされたのだ。即刻立ち去れ!!」

 長州藩は御門を強行突破することも出来ず、京を追われることとなった。

 これが後に、『八月十八日の政変』と呼ばれるようになる。


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