表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/82

真実

 総司は京の町の案内役として、なつの買い物の付き添いをしていた。久しぶりに会った二人はおしゃべりに夢中。江戸にいた頃を思い起こさせるようにはしゃいでいた。

「京へ来て、どんな仕事をしたの?」

「将軍様の警護だよ。」

 実はこの時、総司は嘘をついていた。清川が作った浪士組から離れていた壬生浪士組は、ただの浪士。どこにも属してもいない、将軍警護要請も来ない、ただ将軍の行列を見ているだけだった。

 しかし、なつはすっかり信じ込み、試衛館の仲間が京を護っているのだと思っていた。


「すみませーん!これくださーい!」

 なつは八百屋の主人に声をかけた。

「へーい。おおきに。…………。」

 八百屋の主人はなつと総司を見て、言葉を無くした。

「あ…あの〜何か…?」

 まじまじと顔を見られて不審に思うなつと総司。

「いや〜別嬪はんと凛々しいお方があまりにもお似合いやさかい、見とれてしもてたわ。勘忍え〜。」

本人達は気付いていないのだが、実はこの二人、横に並ぶと美男美女という言葉がぴったりなのだ。それを自覚していない二人なのだが…。

「やだな〜商売上手なんだから。じゃあ、お葱ももらっちゃいます。」

「お世辞ちゃいまっせ〜、ほんまの事や。お譲はん、どちらから来はったん?」

「江戸から来ました。今、壬生浪士組にいます!」

 自信満々に答えたなつ。総司はそれを止めようとしたが間に合わなかった。

 急に八百屋の主人の顔が変わった。

「あんた、『壬生浪』の仲間なんか。あんな田舎侍に食わせるもんはない。もう来んといてくれるか。」

「…え?どういう事ですか…?」

「…っ…なつ行こう!」

 総司に引っ張られ、八百屋を後にした二人。重苦しい雰囲気が流れた。


鴨川沿いを沈んだ顔で歩く二人。話す言葉を探していた。

「総司…どういう事…?」

 やっとの思いで口を開いたなつ。

「実は…私たちは京の人達から、恐れられてるみたいなんだ。」

 言いにくい言葉を続ける総司。

「原因は、壬生浪士組のもうひとつの一派の芹沢先生達なんだけど、あちこちの貸金屋からお金を借りまくっているんだ。それも脅迫紛いで。確かに今、壬生浪士組はお金を貰える立場にいない。そうしないと生活していけないのは確かなんだ。」

なつには信じられなかった。壬生浪士組は将軍様を護り、京の人々を護っているのだと聞いていた。それは方便だったのだ。

「じゃあ、総司たちはどうやって生活してるの?」

「芹沢先生に…貰っている…」

 それは、京の人々からお金を巻上げているのと同じだとなつは思った。何のために京にいるのか、疑問しか思い浮かばなかった。

「総司…ごめん、一人にして…」

 まだ京に来て間もないのに一人にはできない。総司はなつからは見えない所に身を隠し、後ろから付いていくことにした。


 なつは悲しかった。上様を護り、京の人々を悪い奴らから護っている皆がなつの誇りだったのだ。それなのに護るどころか『壬生浪』と恐れられていた。お金が無いなら、無いなりに働く事もできるはず。それなの、強請、たかりでお金を京の人々から奪い取り、のうのうと暮らしているのが許せなかった。

「芹沢って人にやめてもらえば良いんだ。」

 なつはこの時、まだ知らなかった。芹沢という男の正体を。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ