狂喜
少々、過激な表現が出てきます。
角屋で暴れ帰って来た芹沢は、自室に戻り勢い良く障子を開けた。そこにはいつもの通り、お梅と仕事を終えたなつが床に就いていた。乱暴に開けられた障子の音に二人は目を覚ます。
「芹沢はん…お帰りやす。」
起き上がり、頭を下げたお梅。芹沢はお梅を見つめ、なつに視線を移す。芹沢のその視線に背筋が凍るような嫌な汗が流れた。
芹沢は笑っている。いや、口元は笑っているが目は笑っていない。
「おい、なつ…お前に良いものを見せてやるよ…。」
そう言うと、芹沢はお梅の唇に乱暴に自分の唇を押しつけた。
「ちょっと…芹沢はん…?!」
お梅は驚きながらも嫌がる様子は無く、芹沢のされるがままになっている。そして次から次へと来る芹沢の波に身を任せ、時々なつの顔色を伺うのだった。
迫りくる波に、お梅の顔は歪んでいく。しかしそれはとても美しく、普段のお梅よりも遙かに色気のある表情をしていた。
「どうだ…なつ?お前もそのうちこんな事をするんだ。その相手が沖田なのか島原の客なのかは知らねぇがな…。」
芹沢は笑っている。まるで血に飢えた獣のように。
芹沢は必要なまでにお梅の躯を求め、お梅はその度に快楽の渦へ身を投じていた。
なつは動けなかった。芹沢とお梅の激しい求め合い。見たくないという感情とは相反するように、なつの視線は芹沢とお梅から離れなかった。そしてふと気付く。
身体が熱い…。
自分の中に生まれたほてり。これが何なのか分からない。ただ、身体が熱かった。
動かぬ体に鞭を打ち、ようやく芹沢に部屋から脱出したなつ。芹沢の部屋からは遠い縁側に腰を降ろしていた。
まだ冷めやらぬ身体を摩りながら、思い返してしまった芹沢とお梅の成り行き。
芹沢の獲物を見つけたような獣の目。
お梅の淫らな声と快楽に歪む顔。
お梅から放たれる尋常ではない色気。
お梅のあの色気を感じた時に、ようやく分かったことがある。あれが『男に抱かれてでる色気』
なつは思い出すだけでまたほてりを感じるようになっていた。