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鴨の噴火

 ここ最近、芹沢は目立った動きをしていなかった。ようやく壬生浪士組として、京の治安を護るべく働いてくれるのだと近藤は思っていた。しかしそれは嵐の前の静けさであった。


 ある日の晩、芹沢らは大和屋に押し入り、借金を申し立てに来ていた。この日、大和屋の主人は外出しており、番台が対応していた。番台が言うには主人が帰って来てからでないと金は出せない。ということだ。

「おい、お前…。我らは会津藩御預壬生浪士組であるぞ。その我らに金が出せないというのなら、御厚誼に楯つくという意味か?もう一度聞く。金を出せ。」

 芹沢は地を這うような声で言った。

「せやからお客はん、今日は出せへんいうことですわ。明日、主人が帰って来ますさかい、今日は勘弁しとおくれやす。」

 番台はすっかり困り果てている。京で恐れられる壬生浪士組が来ている。こんな時に限って主人がいない。

「そうか、分かった。」

 芹沢に言葉に安堵した大和屋の番台。ようやくこの苦しみから解放されるのだと思った。しかし、その番台の想いは大きく違っていた。

「金を出せんというのなら、御厚誼に楯つくものとみなす。お前ら、やっちまえ。」

 芹沢は、平間・平山・野口に言った。彼らは形ある物全てを破壊していく。芹沢と新見はそれを愉快そうに見ていた。

 店の者は逃げ惑い、番台は破壊されていくのをただ茫然と見つめていた。

 部屋の中の物を破壊し終えると、家財道具や帳面を蔵に投げ込んだ。そしてそこに火をつけた。蔵は瞬く間に炎に包まれ、轟音を成して燃えていた。


 大和屋の一件は会津藩からの使いにより、近藤・土方に伝えられた。

「芹沢さん、なんてことをしてくれたんだ…。永倉くん、左乃助、島田を火消しに回してくれ。」

 近藤は早急に指示を出した。


 芹沢の暴挙は止まるところをを知らなかった。次の事件は島原の『角屋』で起きた。

 ひとりの芸妓が芹沢の問いかけを無視した形になってしまったのだ。もちろん故意ではない。周りが騒がしく、聞こえなかっただけなのだ。

 芹沢はそれに腹を立て、愛用の鉄扇で目の前にある器を割っていった。それだけではおさまらず、壺や掛け軸、壁などを破壊した。そして自分に無礼を働いたという理由で角屋に七日間の営業停止を申し出たのであった。

 芹沢を無視したとされる芸妓は女の命ともいえる髪を切られ、芹沢はそれを酒の肴にしたという。


 この事件は会津藩へもすぐに知らせが行った。公用方の広沢より、自分たちの始末は自分たちでしろと半ば諦めのようなお達しがあった。芹沢らの悪行により、壬生浪士組の会津藩からの信頼は皆無に等しくなってきていた。


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