女の色気
「おたくは沖田はんでっしゃろ…?芹沢先生も沖田はんには一目置いてはるんどすえ。」
お梅はなつから総司へと視線を移し、まるで誘っているかのような目をした。
そのお梅の目に完璧にやられてしまった総司。なつが横にいるにも関わらず、デレデレとした表情になった。
何?総司もお梅さんみたいな色気のある人が好きなんだ…。
疑念の表情のなつに全く気付かない総司。お梅はそんななつを見て怪しい笑みを浮かべた。
「沖田はん…ちょっと…」
お梅は総司に手招きし、なつの聞こえない所へ総司を来させた。
「おなつはんが、妬きもちやいてはるえ…?」
総司に耳打ちするお梅。なつから見ると、それはお梅が総司の頬に口付けをしているようだった。
お梅は妖艶な甘い香りを残し、芹沢の部屋へ帰って行った。残されたなつと総司。なつは腕を組み、眉間に皺を寄せて考え事をしてる。総司にはその姿が怒っているようにしか見えなかった。
「あ…あの…なつ…?」
「総司!!」
「は…はい…」
「あたし頑張るから!!」
なつはそう言い残し、足早に総司の元からいなくなってしまった。何を頑張るのかも分からず、総司も腕を組み、考えだしていた。
「ひーじかーたさーーん!!」
障子を力いっぱい開け、部屋の主の許可も得ず、いきなり飛び込んできたなつ。土方は額に青筋を浮かべる。
「てめぇは常識を知らんのかっ!!!!」
殴りかかりそうな土方。しかしなつはそんなことでは怯まない。
「土方さんっ!あたしに女の色気を教えてください!」
「………………」
拳を振り上げたまま固まる土方。なつの言っている事を直ぐに理解することが出来なかった。
「何言ってんだ?お前…。」
「総司、お梅さんに惚れちゃったんです。取り返したくて!」
なつの目には、総司はお梅に惚れたと映ったらしい。
「総司がそんな直ぐに乗り換えたりしないだろ…それに誰だよ、お梅って。」
どうやらお梅の存在はまだ知られていないようだ。
「芹沢さんの女の人です。芹沢さんの部屋にいますよ。」
「あの野郎、もう女を囲ってやがるのか!!」
土方はそっちの方に怒りが込み上げてきた。
「土方さん!そんなことどうでも良いんです!あたしに女の色気を教えて下さい!!」
とにかく必死ななつ。土方にもいつもと違うなつの気迫が伝わったのか、真面目に聞く体制になった。
「女の色気っていって何で俺に聞くんだ?」
「男の人が求める女の色気を知るには土方さんが一番手っ取り早いかと思って。」
「まぁ間違ってねぇな。」
納得する土方。
「お前、総司とどこまでした?」
「は?」
「どこまでしたかって聞いてんだよ。」
「だから何を?」
全く分かっていないなつを見て、土方はこれ以上聞く事を諦めた。
「お前に分かるかどうか知らねぇが、俺が女の色気を感じる時は、その女に触れたいって思っ た時だよ。」
土方にそう言われ、考え込んだなつ。そして出た答えは、
「土方さんはあたしに触れたいと思った事ありますか?」
ものすごく真面目に聞いているなつ。土方は少し考え、
「お前には無い。」
はっきりとそう言った。なつは口を引きつらせ、何も言わずに土方の部屋を後にした。