告白
部屋にはなつ、平助、土方。そして障子の陰には総司がいた。総司の存在を、なつは知らない。
「平助さん…貴方の気持ちはすごく嬉しい。」
「…え?じゃあっ!!」
顔がパァっと明るくなる平助。
「でも、あたし好きな人がいるんだ。」
なつの『でも』で自分では無いと確信した平助。一気に顔がどんよりとする。なつの言葉に一喜一憂する平助はまるで百面相だ。
「今まで、近くに居すぎて気付かなかった。その人はいつもあたしの傍にいてくれて、いつも 一緒に笑ってて…誰よりも大切な存在だってようやく気付けた。ありがとう、平助さん。貴 方のお陰かな。」
好きな相手にこんな事で感謝されても喜べないなと思う土方であった。
「おなつちゃんの好きな人って…沖田さん…?」
聞かずにはいられなかったのだろう。傷つくのを分かっていながら聞いてしまった平助。聞いた事を後悔する。
「………うん……。」
顔を赤く染めて頷いたなつ。
「………………だってよ…総司。」
土方は障子の陰に向ってそう言った。
「……えぇ…?!?!」
なつはこれでもかという程、目を見開き、障子の陰から現れる姿を凝視した。そこに現れたのは、こちらも顔を赤くした総司だった。
自分の告白を自分の好きな相手に聞かれてしまったなつ。どうしてよいのか分からず、あたふたとし出した。
「な、な、な、何でそ、総司が…///////」
動揺しているのは誰の目から見ても分かる。
「総司がなつと平助が二人で部屋に入っていくのを見て、左ノ助を殺しそうになったから よ…」
ちょっと間違った伝え方をしてしまった土方。なつの混乱はさらに酷くなる。
「は?!何で左ノ助さんが殺されそうになるの?!」
「……まぁ左ノ助はどうでも良いんだ。」
殺されかけた左ノ助。どうでも良いらしい。哀れ、左ノ助…。
「…っとにかくだな、お前らが煮え切らないから手助けをしてやったんだよ!」
人のために何かをするというのが似合わない土方。自分でも分かっているのか照れてしまう。
「でも…土方さんもなつに惚れてるんじゃ…」
総司は勘違いしたままだったのだ。
「それは、お前に『嫉妬』を教えるための方便だよ…。だいたい自分の気持ちにも気付かない こんな餓鬼を好きになるはずないだろうが。」
なつを指差し、土方は怒り口調で言った。
「俺はもっと大人の色気のある女が好きなんだ。例えば「その話はいらないです。」
土方の話そうとする言葉を遮り、総司が言った。少しイラっとした土方。
「とにかくだな、お前らを自覚させるためについた嘘なんだよ!」
これが土方なりの優しさだった。直球では勝負しない、不器用な優しさ。そんな優しさに総司となつは心が温かくなった。
「お前ら、最近ろくに話もしてないだろ。お互いの気持ちも知ったんだし、ゆっくり話せ よ。」
土方は、仮病の平助を連れて出て行った。
いや、今はもう仮病ではないかもしれない。心に傷を負った平助、彼の心を癒してくれるのは誰なのか…。