4話:ユウル
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「大丈夫ですか? 旅人さん」
ここは、どこだ。おれは森の中にいたはずだ。
辺りを見回してみる。木造の小屋の中らしい。ベッドの感じも部屋の中の様子もおれの家とあまり変わらない、粗末な作りだ。まあ、おれの家は石でできているが。ここはどこだ。
「ここは……?」
「あー! きがついたあ! ここはね、ユウルだよお!」
幼い少女がにこにこしながら教えてくれる。その横にいる数歳上かと思われる少女は隣で焦っている。二人とも金髪だが、目が紅い。誰か、はまあいい。
「ちょっと! ユウルって言っちゃだめっていつも言われてるじゃん!」
「ええ。このひと、めえあかいよ」
「それでもだめ!」
それより、やっとたどり着いたのか。フィスからこの村まで本当に遠かった。食料は尽きるし、大きな猪に襲われるしで本当大変だったのだが。
「あの、帽子を被った女の子を見ませんでしたか?」
「おはかだよ! サナつれてってあげる」
はやくはやく。と言いながらおれの手を引っ張るサナちゃん。後ろであたふたしている、おそらく彼女の姉。
「そうだね、行こうか」
部屋を出る。あたふたしているサナのお姉さんも後ろからくっついてくる。周りを見渡すと、紅い瞳に赤毛の人がたくさんいる。ルエ族の隠れ里。母さんが書いていた日記の通りだ。
村から少し森に入っていく。するとたくさんの木で作られた十字架が整然と並んでいた。村人より十字架の数の方が多いのではないかと思うぐらいだ。
その奥にエリサはいた。できたばかりの十字架の前で手を合わせている。
「エリサ?」
エリサは泣いていた。誰の墓の前かと思ったらカーラさんの墓の前だ。
もう二ヶ月前ぐらいになる。カーラさんはおれに姉さんと母さんの日記を届けてくれた。カーラさんはパテカトルの従軍医師だったから、しばらく疎遠になっていたが、突然訪ねてきてこれをくれたのだ。
その数日後、国家反逆罪で民衆の前で殺された。確か、パテカトルで任務遂行中の大佐がカーラさんによって殺されたということが大義名分だったはずだ。
そのカーラさんをなぜエリサが知っているのだろう。カーラさんが処刑されたのはエリサと出会う前のはずだったのだが。
「あんたはなんでけろっとしてられんのよ!」
「え、だって。カーラさんが亡くなったのって二ヶ月近く前のことだし」
一瞬エリサの目が大きくなった気がする。随分と驚いたみたいだ。どうかしたのだろうか。
「……そうよね。その、悪かったわ」
エリサが謝った。驚いたが気にするな。そこではない。不自然だ。エリサがカーラさんを知っていることも、そもそも二ヶ月も前のことに対してエリサがこんなにめそめそすることも。どうしてだ。
腹が鳴った。この雰囲気の中で。サナは大笑いする。そのお姉さんも笑う。まずい、エリサが怒るぞ、と思ったがエリサも声を上げて笑っていた。我ながら恥ずかしい。




