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君と歩くビフレスト  作者: 三池ゆず
2.ユウルを探して
18/29

閑話2:カーラと白猫

 白猫は欠伸をした。


 ベッドに座っているカーラの膝の上で、毛繕いをしている時だった。膝はベッドのようにふかふかしていない上に狭い。けれど、暖かみがあって白猫は大好きだった。


 白猫にとって活動時間が長いのはつらい。しかし、この姿を彼に見せたくなかった。彼の気が自分に向いているのかどうかは分からない。けれど、この姿に彼が慣れてしまったら自分に全く気が向かなくなることは明白だ。


「いい加減、告白でもしたら?」

「うっうるさい!」


 白猫はカーラの膝から飛び降りる。そして、カーラが座っていないベッドの上に飛び乗る。


「それよりも、そうよ。あんた、本当に渡すわけ?」


 カーラが立ち上がる。伸びをして窓に目をやる。白猫はカーラの背中をじっと見つめてみる。ぴくりとも動かない。


「ねえ、あれは。未来の彼に渡してって言われたものじゃない!」

「未来の彼はいないよ?」

「…………でも」


 白猫にも彼がもうきちんとした生の中にいないことは分かっていた。けれど、目の前で浄化していった赤毛の女が頭に浮かぶ。

 彼女が言ったことが本当かどうかは分からない。彼なら普通に願いが叶ったら彼女と同じように次の生へと旅立っていけるのではないかと白猫は思う。

 けれど、彼女の願いを守りたい。この思いを捨てることがどうしてもできなかった。


「らーやんね、あの子がこんなことになるなんて思ってなかったんだよ。だけど、状況は変わった。今の彼に渡して問題にはならないし、それにきっとあれを渡さなくたって」


 彼は絶対、答えにたどり着く。


 それは白猫にも分かりきったことであった。


「そう、よね」

「ねえ、何がそんなに心配なの?」

「な、何がって!」

「だって、あの子も私もこれから願いを叶えて、浄化されるだけでしょ?」

「そ、そうだけど……!」


 白猫は言葉を詰まらせた。

 過去が頭の中でぐるぐるとまわる。白猫はその青い瞳でたくさんのものを見てきた。その中でも彼のやらんとしていることは嫌なものを思い出させる。


「大丈夫。まだ渡さないよ!」

「そうよね。あんただって行きたいんだもんね。というより、帰りたい、か」

「まあね! 弟とかお祖母さまとか元気にしているか気になるから。それに、あの子にきちんとあれを見せないといけないから、ね」


 知らないのは彼だけ。一緒に旅をした白猫はもちろん、師匠も知っている。けれど、誰もが何も言わなかった。言えなかった。


「そうよね。あの性格だと見ないと信じなさそうだし」

「だから、安心して?」

「え、何で?」

「しばらくは大好きなりっくんと過ごせるよ、エリー?」

「ちょっと! 何なのよ!」


 尻尾をぴんと立てる。少しだけ牙を見せてみる。しかし、カーラには通用しない。抱き上げられて撫でられる。暴れようとしてみたが、カーラの力が強すぎて体が動かない。さらに抵抗しようと爪を立てる。

 さすがにカーラの力が弱まる。その隙をついて白猫はドアに向かって走る。


「あれ、その姿を見られていいの?」

「人の姿に戻るわよ!」

「それだと真っ裸だよ?」

「う、うるさい!」

「あ、こんなの着てみる?」


 そう言ってカーラは鞄から服を取り出す。白いワンピースだ。ヒラヒラと何層にも重なったスカート部分。そして、背中にあしらわれているフリフリで大きなリボン。白猫は目を丸くする。


「絶対着ないわよ!」

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