5話:夢なしのリク
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「パンサーってピンクもいるよね」
唐突だった。エリサがすかさず、は、何言ってるの、こいつと言っていたが、たまにいる。あまりに希少すぎる為、お目にかかったことはないが。
「レザリア動植物園に行かなかったの?」
「じじいと行ってきたけど、そんな気持ち悪い動物いなかった」
「まあ、最近亡くなったみたいだからなあ、ピンクのパンサー」
「え、一回みたかったのに」
思わず声に出てしまう。面白そうだなとずっと思っていたというのに。また動植物園で生まれないだろうか。
「ええ。りっくんもないのか」
「実物は。図鑑ならありますけど」
「実物いいよお。結構可愛かったなあ。オスだっていうのが難点だったけど」
「ええ? オスがピンク? 気持ち悪い」
オスがピンクの方が確率高かった気がするが。そのようなことを言ったらきっと、意味わかんない。あんた、頭いいのアピールしたい訳? とか言われてしまいそうだ。
「あんた気持ち悪いとも思わない訳? って、あんた何か腹立つ顔」
「腹立つ顔って?」
「何でも見透かしていそうな優等生顔。なんか馬鹿にされているみたいで腹立つ」
なんだそれ。特に表情のある顔をしていたわけではないのに。それならば普段からどんな顔をしていればいいのだろう。
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野宿三日目にしてついに眠りたくなくなった。理由は特にない。たきぎを継ぎ足しながら、ぼうっと眺める星空はいつになく綺麗に感じる。
「リクが勉強していないでぼさっとしているところ、初めて見た」
隣にはエリサ。え。エリサ。いつからいたのだろう。この真夜中だ。一日中歩いているのだから普通に寝ていると思っていた。
「エリサ、寝なくていいのか?」
「あんたと違って眠らなくてもいいからね」
「いつもは一番良く寝てる気がするけど」
「ぐっ。言うわね」
顔をエリサに向けられない。どうしてだ。さっきまでは何も気にせずに一緒に笑っていられたというのに。月明かりと弱くなったたきぎのせいか。変な気分だ。
「で、寝なくていいの?」
「いいの。何したって寿命は百年って決まってんだから。そりゃあ、疲れたりするから寝るけど」
ふうん。と言ってみたが、この後どうしたらいいのか分からない。この時間に勉強しようと思っても暗くてよく見えないからできない。することもないからエリサに見張り番をしてもらって寝ようと思っても、完全に冴えてしまった目はきっとすぐには閉じない。どうしてだ。なんとなく逃げてしまいたい。
「あ、流れ星」
エリサがそう言ったから空を見上げる。すると、流れ星が一つ、二つと光ってはすぐに消えていく。横でエリサは目をつむったままぶつぶつと呟いている。
「……何やってんの?」
「願い事してるの。ほら、流れ星が消える前に願い事を三回言えば叶うって言うじゃない」
「それで願い事が叶うなら誰も苦労しないと思うけど」
「ほんと夢ないよね」
「まあ」
「ねえ、リクの願い事って何?」
何だ。おれの願い事って。今まで勉強で知識が増えることが好きで、軍人になって暮らしていくことに精一杯で。この先何がしたいだなど考えてこなかった。おれの願い事。分からない。何もない、のか。さみしいな。
「って、あんたは死んだ理由を知りたいのか」
そうだった。




