64.閑話 ぼくとおやすみまえのホットミルク
ぼくの だいすきな もの。おいしい ごはんに、ふかふかの おふとん。おともだちに、ふわふわの いぬや ねこ。おやすみまえの ホットミルク。でも やっぱり、いちばん すきなのは ママと ははうえ。おひさまみたいに あったかい ママと おつきさまみたいに やさしい ははうえ。ぼくは どちらも おんなじくらい だいすきだから、どちらも いちばん。
パパと ちちうえの ことなんて しらないや。だって、ママと ははうえの こどもが ぼくなんだもん。かみさまが きめたから、ぼくは ママの おなかから うまれたんだって。だいすきな ママと ははうえの こどもで、ぼくは とっても うれしいんだ。だから、ママと ははうえにも、にこにこ わらっていて ほしい。
おやすみまえの おやくそく。ママに だいすきな おはなしを よんでもらうこと。いちばん すきなのは、べにばらの おはなし。かなしい おはなしだけど、いつも にこにこ わらっている べにばらが、ぼくは だいすきなんだ。そういうと、おともだちは ぼくのことを おんなのこみたいって わらうけど、ママは ちがうよ。べにばらが すきなんて ママと おんなじだね、なかよしだねって、ほっぺたを くっつけて わらってくれる。だいすきな ひとの ために がんばれるのは、とっても すごいことなんだよって、ぼくに おしえて くれたんだ。
ママは ぼくと おんなじくらい、ははうえの ことが すきなんだよね。ふたりは トクベツって ぼくは しってるよ。ママは ははうえのために、べにばらに なったんだよね。
ねむれない よるは、ママが ホットミルクを つくってくれる。おまじないが かかった ホットミルクをのむと、とっても いい ゆめが みれるんだ。ちいさな おなべで、ことこと ゆっくり ミルクを あたためる ママは、まるで まほうつかいみたい。そこに おひさまを とかしたみたいな、とろりとした はちみつを いれたら、さあできあがり。ふうふうしながら のむと、あまくって あったかくって、ぼくは すぐに ねむたくなってしまう。ぼくの となりで たまに ママが ないているのに、まぶたが おもくって おきられない。ほんとうに ごめんなさい。
おひさまみたいな ママが たいすき。ママの ては とっても あったかいから、そのてで なでられると、ぼくは すぐに きもちよくなって ねむっちゃう。ひだまりで ねむる ねこも、きっと おんなじ きもちかな。はちみつみたいに あまい おやすみの キスも だいすき。ずっと ずっと そばに いて。
ははうえは、いつも こまったような かおで ぼくをみる。おやつの プリンを たべたいのに、むりして ガマンしている みたいな、そんな かおを して ぼくを みる。ツンっとして、プリンなんか だいきらいって いうんだ。でも、あっちへ いっちゃえって いいながら、ないちゃいそうな かおを しないで。だいすきな ものを ガマンするのは、からだに よくないんだよ。それに プリンだって ないちゃうかも しれないでしょ。
あさ おきたら、ママが いなくて、かわりに ははうえが いたんだ。どうしてかは わからないけど……。でもね、ぼくには すぐに ははうえだって わかったよ。だって ははうえは、ママが いってたとおり、おつきさまみたいに キレイで やさしかったもん。ママとの おやくそく、ぼくは ちゃんと おぼえてる。ははうえは、ぼくが ちゃんと まもるよ。
おつきさまみたいに やさしい、ははうえが だいすき。ははうえの てのひらは、とっても ひんやり しているから、そのてで なでられると、ぼくは すぐに きもちよくなって ねむたくなって しまう。おねつが でても、こわい ゆめを みてないても、いつも こっそり ぼくの ほっぺを なでて くれるから、ぼくは いつでも げんきに なれる。ぼくが めを つぶったあとに、ないしょで してくれる おやすみの キスも だいすき。ねたふり してるんだって バレたら、おこられちゃうかな。
いじっぱりな ははうえが、ぼくの ことを だいすきな こと、ぼくは ちゃんと しってるよ。だから、はやく おおきく なりたいの。まほうつかいに なって、いつでも えがおに なれる まほうを、ははうえに かけて あげたいんだ。
ははうえは、ぼくと おなじくらい ママの ことが すきなんだよね。ふたりは トクベツって ぼくは しってるよ。ははうえが つくるホットミルク、ママのと おんなじ あじが する。いつのまにか おへやに とどく ホットミルク、あまくって やさしくって あったかい。ふわふわ、ふわふわ ねむくなる。
ほんとはね、ちょっとだけ こわかったの。ママは ははうえが だいすきで、ははうえは ママが だいすきだから、ぼくは いらないのかなって。だから びっくりしたの。ははうえが ぼくに くれたのは、あの べにばらの しずくだったんだね。こんなに だいじなものを かして くれたんだもの、ぼくの こと、きらいなわけ ないよね。もっと たくさん、おはなし できたらいいのに。まだ こどもな ぼくは、うまく おはなしが できない。
「だいすき」って、なんかい いったら、ははうえは わらって くれるんだろう。だいじょうぶだよ、ははうえ。ぼくは ずっと ずっと そばに いる。だから、すこしだけ まっててね。すぐに おうちに かえるから。そのときは どうか おねがい、ちゃんと だきしめて。おかえりって いって、わらってね。