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今現在、この世界には4人の神子が存在する。
風の神子フェリ
水の神子マルク
土の神子マーサ
火の神子リー
彼らは異なる世界より、それぞれの神々の導きによってこの世界の地上へと降り立った。
神子とは、パッと見では人間と大差ないようであるが、実際には大きくかけ離れた存在である。人よりも遥かに大きな魔力を有していることは勿論、神子は皆両性であり、子を孕ますことも産むこともできる。実際に、風の神子フェリと水の神子マルクは元男であるが、其々子供を産んでいる。
基本的に神子は、人には物理的にかすり傷一つ、つけられないほど頑丈な肉体を持っている。そして寿命も長く、何事もなければ1000年の時を生きる。
寿命が常人と異なるのは神子だけではなく、神々の寵愛を受けし王族らもおよそ500年の時を生きる。長き時を生きる王に仕えられるよう、宗主国の臣下達もまた長き時を生きられるよう選択することができる。
また、神子の血を引く子も多少その恩恵を受けている。ろくな病気もせず、怪我をしても異様に治りの早い頑丈な肉体を持ち、常人離れした魔力を持ち合わせている。そして、神々の寵愛する王族と同じ位の年数を生きることになる。
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夕食の支度は、今度の旅行の話で盛り上がりながら、皆でやった。
神子は同時期に全員が揃う訳ではない。
寧ろ、母曰く四大神子が全員揃うことの方が希だそうだ。風の神子フェリは今から約200年位前に神子になったそうだ。
母と水の神子マルクは大体同時期でおよそ50年前、当代火の神子のリーは昨年の春、火の神子としてこの世界に顕れた。
母曰く、神子は顕れたその時から神子として完成している訳ではないらしい。
見かけはそれなりに成長していても、人の子の成長と同じように時間をかけて内面も肉体も神子として成長させるのだそうだ。
火の神子リーはミーシャより1歳、歳上の21歳だが、神子としてはまだ2歳にもならない。
今回の旅行は神子として成長するために必要な勉強の一つなのだろう。
リーと何度か会って、サッカーなる遊びを教えてもらったことがある双子は、何処に行って、何を教えてあげようか、とまだ先の話なのにおおはしゃぎだ。
「姉様!やっぱり市場は行っときたいよね!あそこ、うちの領地にないもの、いっぱいあるし!」
「博物館も捨てがたいわよ!変なものとか色々あるじゃない!」
「市場もいいけど、西の軍部近くのケーキ屋行こうぜ。あそこはガチで旨い。高いけど」
「あー、確かに美味しいわねぇ。高いけど」
「七の月半ばなら、運が良ければパルモの実を使ったケーキが食べられるかもね」
「「パルモの実って何?」」
「王都より北の地域で採れる果物だよ。足がはやいから、うちの領地じゃ、まずお目にかかれない」
「マジでか」
「美味しいの?」
「美味しいよ。少なくとも俺は好き」
「「食べたーい!」」
「じゃあ、何処に行くか決まる前に手紙なり陛下達に直接言うなりして、提案しといたら?」
「そうするー。あそこ俺達の懐具合じゃいけないもんな」
「母様という名の財布がいないと無理だよねぇ」
しみじみと頷いている弟の様子に笑みがこぼれた。(実際には表情筋動いていないが)