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ミーシャの朝は早い。

屋敷の庭で剣の素振りや体術の型の稽古をした後、端正込めて育てている薬草畑の水やりや手入れをしてから、シャワーを浴びて朝食とお弁当を作る。

王宮の食堂を利用できるのだが、量が足りないため、勤務三日目から追加で食べられるように毎日自分で作っている。


庶民派の母は、人にかしづかれることや必要以上に世話を焼かれるとを好まない。公爵家でありながら、実家に一人も使用人を置いていなかった。当然、現在ミーシャが住まう王都の家にも使用人はいない。

どんな状況になっても自分の力で生きていけるようにと、母は子供達に家事をはじめ、様々なことを教えていた。

そのお陰で、ミーシャは一人でもなんとか暮らせている。


朝食を終えたら手早く準備をして家を出る。王宮までは徒歩で行く。就職祝いと祖父から馬を贈られていたが、田舎育ちのミーシャにとって自宅から王宮への距離程度なら十分徒歩圏内なため、馬の散歩の為にしか今のところ乗ったことがない。


先輩方にしごかれる1日が今日も始まろうとしていた。






ーーーーーーー



「ミーシャ。医務局に薬を届けてこい。終わったら戻りに薬草園に行ってこれを採って戻ってこい」



現在、新人世話役であるルート先輩にメモと結構な量の出来上がって瓶詰めされた薬を手渡された。



「わかりました。行ってきます」



勤務二日目に薬草園の肥料(推定10キロ2つ)を軽々と片手で担ぎ上げたのを見て以来、ミーシャはすっかり力仕事要員になっていた。仕事をはじめて以来、どうしても鍛練の時間が減っていたので体を動かせるのは寧ろ好都合なのだが、王宮内を大荷物抱えて歩く度に、ぎょっとした目で見られるのには中々慣れない。


ぺーぺーの新人故、当然のことだが、今のミーシャの仕事は使いっぱしりと薬草園の手入れなどの肉体労働が主であった。

公爵家の出で、土の神子の娘であるミーシャを遠慮なく使ってくれることに、世話役のルート先輩をはじめとする薬師局の面々に対して、ミーシャは感謝していた。


普通、神子の子供ということをさっぴいても、公爵家の令嬢が就職して働くなんてことはありえない。仮に働けても公爵家令嬢として腫れ物扱いか、丁寧に扱うもとい体のいい閑職につけられるのが普通だろう。


そうなるかもしれないと半ば予想しながらも、王宮薬師局を受けたのは、どうしても薬師になりたかったからだ。


本当は領地にある薬事研究所に就職したかった。しかし、研究所関連の総責任者である母から、現状として即戦力にならない新米を雇って育てる余裕はない、と言われた為、諦めざるをえなかった。1日でも早く一人前の薬師になれるよう、王宮薬師局で働く決意をした。


働き始めて、そろそろ一月になるが、先輩達とプライベートな会話はしたことがないのが少し寂しい。

仕事の会話は普通にできていると思うが、私的な雑談とか世間話の類いは、まだない。

先輩方に遠慮があるのか、ミーシャの人見知りのせいか、或いは両方か。


(人見知りが憎い……)


せめて誰か一緒に食事とか行けたらなぁ、と遠い目をしてしまう、ミーシャ19歳の春である。






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