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午前9時。

ミーシャ達を含めた、四大神子率いる四大国巡りの旅ご一行はサンガレア領にいた。


土の国二日目は、博物館を見学に行ったり、読書家で重度の活字中毒者なマーサが本屋で本を買い漁ったり、土の国内領地の特産品の布地を買ったり、その他買い物を楽しんでいたら、あっという間に終わっていた。


そして三日目の今日からはサンガレア領で過ごすことになる。


旧土の国は現在まるっとサンガレア領となっている。

マーサが神子になったばかりの頃は、夫のリチャード・サンガレアだけでなく、いくつかに領地を分けて、それぞれ領主を置いていたらしい。

しかし、他ならぬ土の国貴族の手引きで火の国が大規模な軍を率いて攻め込んできたことがあった。

あまり詳しい話は聞いていないがマーサ達は攻め込んできた火の民達を退け、裏切り者の領主は勿論、民を盾に我先にと逃げ出した領主はマーサ自ら罰し、その後、旧土の国はサンガレア領として、まとめてリチャード公爵と土の神子マーサの二人で治めることになったそうだ。








ーーーーーー


ミーシャ達は、父のリチャードや祖父達、お留守番していた下の兄弟二人と合流した後、ここでもまず先に服屋に来ていた。

王都に比べ、気温も湿度も高いため、王都で買った服を着ていたら、暑くて最悪、熱中症になってしまう。


そのため、土の神子を戴く聖地神殿という一大観光スポットがあるに関わらず、夏場は観光客に来領を自粛するよう通達を出しているくらいである。


サンガレア領の男性陣は夏場は甚平という服を着ている者が多い。元はマーサの故郷の民族衣装らしいが、麻や木綿で作られたそれは、涼しく楽であるということで、売り出されてからすぐに領地内に普及した。

今では官公庁の夏場の制服さえ甚平である。


そんな訳で、皆で甚平を買いに来ていた。


ミーシャ達女性陣は店のものを選ぶのではなく、マーサ達が予め注文しておいた女性用の甚平と、これまたマーサの故郷の民族衣装である浴衣を受けとるだけでよかった。


そのため、マーサに着付けをしてもらってからは暇なので、男性陣の甚平などを一緒に選んでいた。

ふっ、と何気無く目をやった先にフィリップ将軍に合いそうな色のものを見つけて、とりあえず手に取ってみた。すると、祖父の一人のクラークが近くに来た。顎髭をはやした50歳手前のナイスミドルである。

近づくとふわりと微かな煙草の香りがした。



「ミーシャ」


「おじいちゃん」


「久しぶりだな。元気そうで良かったよ」


「元気よ。おじいちゃん達も元気そうね」


「お陰さまでな。仕事はどうだ?」


「だいぶ慣れてきたけど、本当毎日が勉強って感じで、割と大変かなぁ」



肩をすくめながら、そう言うと、クックッと喉で笑った。



「今の時期はまだそうだろうな。多分一人前になるまでは、ずっとその状態が続くだろうよ」


「だと思うわ」


「ところで彼氏はできたか?」


「恋人どころか友達もできてないわよ」


「おや、それは残念」



ミーシャのため息まじりの返答に面白そうに片眉を上げた。



「恋人は今のところ、そういうの興味ないからいらないけど、友達は欲しい。勿論領地には友達いるけど、帰ったときしか会えないし、そもそも滅多に帰れないもの」


「まぁなぁ。なに、そのうち仲がいい人ができるさ」



ミーシャを慰めるように肩をポンポン叩いた。



「今ミーシャが手に持ってるのはフィリップ用のだろう?渡してやるといい。あいつに似合いそうだ」


「うん」



クラークに促されてフィリップ将軍の元へ向かう。

向かう先のフィリップ将軍は旧知の仲である父にからかわれて遊ばれているようだ。


フィリップ将軍に助け船を出すつもりで、大人げなく騒いでいる彼等に話しかけていった。







ーーーーーー


この世界では、男女の比率が平等ではない。


6:4で男性の方が多い。


そのため、必ず溢れる者が出てくるわけだが、一妻多夫や男性同士の同性愛といった形でおさめている。

各宗主国は男性同士の婚姻を法のもとで認めているが、民間では実はそんなに認められてはいない。

およそ100年程前に、医療技術の発展している水の国にて男性同士でも子供を作れる技術が開発され、各宗主国全てに普及したが、その技術を用いて子供を作るには施設等に多額の金銭が必要になるため、あまり一般的ではなく、土の国の場合、施設自体が王都とサンガレア領にしかないため、子を成せぬ男同士の婚姻は地方にいくほど受け入れられていないのである。


ミーシャ達の祖父らは男同士で結婚していた。平民あがりであるにも関わらず、剣聖と呼ばれるほどの剣の腕をもって将軍まで勤めたスティーブンとその副将軍だったクラーク。

彼らは父のリチャードと母のマーサの結婚の時に、同時に結婚したらしい。


戦の時に負った怪我が原因で何年も寝たきりになってしまったスティーブンをクラークは献身的に介護したそうだ。スティーブンは今では、小学校で剣を教えられるくらいには回復しており、クラークもサンガレア領高等学校で教鞭をとっている。


クラークは少々口うるさいところもあるが、優しく愛情深い懐の深い人物である。

スティーブンも口数は少ないが家族のことをとても大切に思ってくれている。


二人ともミーシャ達兄弟の自慢の祖父である。


服をそれぞれ選んだ後、祖父二人と父と四男ターニャ(5歳)と四女サーシャ(2歳)、それから王都から一緒に着いてきていた叔父二人と従兄弟の王太子殿下を含めた大所帯のご一行はぞろぞろと食事をとるための店を目指して歩いていた。


土の神子のお膝元では護衛は不要と、護衛という名目で随行している将軍らはサンガレア領地にいる間は休暇扱いにするらしく、剣は所持していてもどこか緊張が和らいでいるようにみえる。


今回の旅行で彼らと仲良くなった子供達を中心に、生まれ育った場所を誇らしい気持ちで彼らを案内した。






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