翌日の話わっしょい
短め?
視界が定まらない。
視点じゃない、視界がだ。
妙にワックスの効いたツヤツヤした床。
段差・・・段差か。階段なんだな。
右に左に学生が避けていく。
なんでいるんだ?コイツら。
手すり…冷たくて気持ちがいい。
壁に体を預ける。
「…ッ!」
首に激痛。
しかし、火照った体の熱を、コンクリにペンキを塗っただけの壁が奪っていく。
そのままズズッと壁に背を預け座り込んだ。
視界が回転する。
あぁ、体が痛い。
そういえば階段だったっけ。
一番下まで落ちたのだろう、廊下の天井が見える。
キャーとかワーとか、何か声がする。
あれ?昨日も倒れてた気がする…
あの時助けてくれた娘は…トイレにおいてきてしまったけど、あの後大丈夫だったのだろうか…
体の痛みはもう感じなくなっていた。
あぁ、死ぬのかな…なんでこう、毎日こんな思いをするのかな…俺が悪いんだっけ?
急に目の前が翳った。
ふわりと黒い布を顔の上にかけられたかと思ったが、そうではないらしい。
「タケ、あんたどうしたの?」
あー、白パンツ。
霧島、オーソドックスなの履いてるなー…
「首…これ何?なんで怪我してるの?」
答えられない。口が動かない。
しゃがみこんだ霧島から、いい匂いがした。
「とりあえず、救急車…よりは保健室だね。先生呼んでくる」
走り去った後も、霧島の残り香が鼻をくすぐる。
人間、死ぬ間際になると本能的に性への執着が強くなるらしい。
全年齢対称だけど、この性の字は間違ってないぞ。
具体例を挙げないだけ健全だ。
俺は、駆けつけてきた体育教師の盛り上がった筋肉に包まれて、保健室へと向かった。
続きます。