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食事だわっしょい(前編)

 俺が転校してきてから、もう一週間が過ぎた。

 一応、今までの経緯を報告しておく事にする。


 待ち合わせの駅について物思いに耽っていた俺は、幼馴染に首輪を付けられ家まで連行される。

 家で待ち構えていたのは、翌日から単身赴任が決まっていたおじさんと、忙しくてほとんど家に帰れないおばさんという、美少女ゲームのような設定だった。

 どうだい?うらやましいだろ。


 今回から読みはじめた人は、既に飽きているころじゃないかな?

 こんなに良くある設定の話なんて、もうおなかいっぱいであることよのう・・・のう?


 だが、前回、前々回を読んでない皆様はここでは置いておこう。

 気になったら読んでくださいませ。


 そこから、俺とサーの共同生活がはじまりました。

 いえ、飼育生活なのでしょうよな。

 僕は時間に遅れるとご飯がもらえません。

 その時間というのも知らされていません。

 食卓に着いたときにしらされるのだごめんなさいごめんなさいごめんなさ



「タケ!タケっ!しっかりしろ!!タケ!!!」


 はっ、と目を覚ますと、教室だった。

 時計をみると、まだ1時間目・・・も始まっていない?


「おー、ホームルームで居眠りとは、朝から元気がいいなぁ」


 担任の先生がにこやかに棒読みセリフを投げかけてくる。


「そう・・・見えます?」

「あぁ、見える見える」

「先生、良い眼力をしてらっしゃる」


「俺の時は腐ってるって言ったくせに!」


 前田が小声で怒鳴ってくる。器用な男だ。


「器用なのはお前だ!ホームルームで瞬間的に寝るな!」


 前田もサー(美山)もどうして地の文に突っ込めるのだろう。エスパーかな?


「転校してから間もない頃は多少見逃していたが・・・次は無いぞ」

「新参者にも優しくていらっしゃる。痛み入ります」

「次は痛みを入れるから覚悟しろ」

「間に合っているので、全力で善処します!」


 こうして、俺の一日は始まった。


 時間は流れて昼休み。

 前田は俺の席で飯を食う決まりだ。俺が決めた。


「いやぁ、お前ほんと瞬間的に寝るのな。タケは凄いよ」

「いやぁ、それほどでも」


 俺は照れて頭を掻いて、はにかんだ。


「いや、褒めてないし」


 あきれながら、前田は端で卵焼きを口に運ぶ。


「あぁ!それ俺の!!」

「俺のだ!!お前のはそっち」

「いや、これも元々はお前のだろう?」


 最近、前田は俺の分の弁当まで持ってきてくれる。

 なんて甲斐甲斐しいヤツなんだ、抱きしめて差し上げたいラヴィンユー。


「元々は俺のだが・・・それがどうしたんだ?」

「じゃ、そのお前が食っている弁当は、誰のだ?」

「誰のって・・・俺のだよ」

「つまり、俺のじゃないか」

「どういう理屈だ!」


「分からないか?数学で習った三段論法を使って」


 スッ、後藤が振り返ってお茶を出してくれた。


「あぁ、ありがと、後藤。

 この匂い・・・狭山?」


 後藤はフッと口元で笑って「菊川」と言うと、自分の机の弁当をガッツきはじめた。


「確かに・・・味のさわやかさが若干ちがう」

「いや、どこだよ菊川って」

「ググるがいい、前田よ。聞いていては勉強にならんよ」


 不満そうな声はスルーして、俺は後藤に声をかけた。


「茶葉持ってたら、くれない?」


 後藤は今度はニヤリと笑い『通だね』のサムズアップと共に、ジップされた茶葉をくれた。


「さんきゅ」

「タケ、茶葉なんかどうするんだ?淹れるのか?」

「いや、非常食として食べる」

「茶葉を!?」

「茶葉を、だ。正確にはポリポリかじる」

「マジか?」

「マジだ」


 未だ疑いの眼差し(腐ってる)を向けてくる前田を尻目に弁当をつつき出すと、教室の扉が開く音がした。

 なにやら室内の空気が変わる。

 みなの視線がいっせいに注がれているのが、頭を上げなくても分かる。


 俺と、扉の向こうに・・・


「タケちゃーん!遅くなってごめん!お弁当持ってきたよ!!」


「サーッ!恐縮でございますっ、サーッ!」


 不動の姿勢で着帽時の敬礼。帽子はかぶっていなくても、敬意が伝わればいいのだ敬意が。

 男子生徒から、ギロリと睨まれる。

 もちろん俺がだ。この後の言葉が、既にみな予想ついているのだ。


「一緒に食べよう。お外、良い天気だよっ」


 ザワ・・・ざわ・・・ざわ・・・


 男子生徒から、殺意が向けられる。


「タケ・・・行くのか」

「あぁ、俺に選択権は無い」

「うらやましいなぁ、今度俺も混ぜてくれよ」

「この食事から、生きて帰ってきたら・・・な」


 「またわけわからない事言ってぇ」とナジる前田を背中に受け、俺は美山へと歩き出した。

 クラス全体に俺が溶け込めてない理由が、これだ。

 前田、後藤、霧島だけが例外。

 その他は、俺を学年のアイドルをさらって行った転校生としか認識していないのだろう。


「タケちゃん、行こ♪」


 羨望と殺意の眼差しが注がれる中ただ一人、後藤だけは立ち上がって柔道の構えを取っていた…

この後、更新・・・日があくかもです。

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