クリスマスイヴ(舞華&静斗)
クリスマスイヴ。
二人のクリスマスイヴはどうなんでしょう?
クリスマスイヴ。
既に学校は冬休みに入って自宅に帰って来ていた。
お父さんもお母さんも忙しくて居ないんだけど。
昼間はクリスマスミサがあったので学園に行ったけど、その後は麗ちゃんに誘われて再びライブハウスにやって来た。
静を驚かそうと今回来る事は内緒。
常連さんらしき男の人達が麗に近付いてくる。
正直恐い・・・。
「舞」
静の声に私は振り返った。
「これ、おれの連れだから、手出すなよ」
彼の言葉に周囲の空気が凍りつく。
「あ・・・あのっ・・・!」
彼に腕を掴まれて私はステージ裏に連れて来られた。
確かにここは安全なんだけど・・・。
麗ちゃんはどうしたんだろう?
「舞華!お前ここで何してんだ?!」
信也さんの怒った声が聞こえた。
「信也、連れて来たのは麗華だ。あいつ客に絡まれてるぞ」
彼が親指で客席を指すと信也さんは走って出て行った。
何で静は麗ちゃんを助けてくれなかったんだろう?
「お前、来るって何で教えてくれなかったんだよ?」
静は不機嫌そうな顔で言った。
「俺が気が付かなかったらお前、あの連中に連れ去られて手込めにされたかもしれないんだぞ?!」
何で?
私にはさっぱり分からなかった。
「麗華はここでは有名な尻軽女だ、あいつと一緒に居ればお前も同類に見られる可能性があるって言ってんの!」
彼は髪を掻き乱した。
心配してくれたんだ・・・。
「ごめんね、心配してくれてありがと」
私は彼の胸に顔を埋めた。
眼を見ては恥ずかしくて言えないから。
「舞」
不意に呼ばれて顔を上げると唇が重なった。
「お〜い、静斗、ここで盛るなよぉ!」
周囲の冷やかしと笑い声が聞こえる。
恥ずかしい・・・!
「静斗!」
麗ちゃんの声に振り返った。
信也さんと一緒にステージ裏にやって来た麗ちゃんは凄く怒ってる。
「何で舞ちゃんだけ助けるのよ!私の事はどうでもいいわけ?!」
「でかい声出すなよ、お前の場合助けていいのか分からんから放っておいただけだろ」
静は平然とそう言った。
「GEM次だからスタンバイしてね」
「おう」
そして私の頭を軽く叩いてその場を立ち去った。
「舞ちゃん、気をつけなきゃ駄目だよ。静斗は手が早いんだから」
麗ちゃんの言葉に私は首を傾げる。
手が早い・・・?
キス以上の事をしようとしないのに?
私は微笑んだ。
「大丈夫だよ麗ちゃん。彼は意外に紳士だよ」
麗ちゃんが凄く不愉快そうな顔をした。
私にはその理由が全く分からなかった。
ライブの後、彼に連れられて打ち上げに顔を出し、すぐに控え室に戻ってきた。
「舞、これやる」
静が私に長細いラッピングされた箱を差し出した。
一目でプレゼントだと分かる。
「私に・・・?」
「他に誰がいんだよ?」
彼は私の掌にそれを押し付けた。
「あ・・・ありがとう。静が用意してるなんて思わなかった・・・」
そんなイベントに興味があるとは思えなかった。
勿論勝手な思い込みなんだけど・・・。
「開けてみろよ」
彼に促され私はラッピングを解いて箱を開けた。
ピンクサファイアの付いたネックレスだった。
「綺麗・・・」
本当に私が貰ってしまっていいの?
彼はそのネックレスを手にとって首に付けてくれた。
私は嬉しさと恥ずかしさで真っ赤な顔で彼に抱きついた。
「ありがとう静・・・私もね、実は静にプレゼント持ってきたの」
実は彼に用意してたの。
渡したくて今日内緒で来た。
小さなバッグから小さな箱を取り出し彼に差し出した。
芸能人が付けている事でも有名なA○Pのロザリオネックレスだった。
「静に似合いそうだなって思ったの。ブレスレットはギター弾くのに邪魔そうだったし、これなら・・・」
絶対に静に似合うって思ったの。
そう言おうとしたけど彼のキスで言葉は遮られた。
最近すごく思う・・・私、静が好き・・・らしい。
静と同じ空間に居たり、話したり、こうして触れられたり・・・すごく幸せ。
でも本人には言わない。
笑われるし、からかわれるから。
メリークリスマス静。
クリスマスイヴ。
客の入り様を見にステージ裏から観客席を覗いて俺は驚いた。
ぎっしりと客が居る。
クリスマスイヴのデート場所にこのライブハウスを選ぶ馬鹿な奴が多い事に驚いた。
その証拠に大体はカップルだ。
そんな中で俺の眼があいつを見つけた。
今日来るなんて聞いてない。
麗華と楽しそうに話すあいつを、いやらしい眼で見てる男達がいる。
俺の身体は勝手にあいつの許に向っていた。
「これ、おれの連れだから、手出すなよ」
あいつの腕を掴んで俺はステージ裏まで帰って来た。
あのまま放っておいたらあの男達に連れて行かれると思った。
連れて行かれれば間違いなく犯される。
そんなの耐えられない。
「舞華!お前ここで何してんだ?!」
信也の声に俺は振り返った。
当然ながら怒っている。
「信也、連れて来たのは麗華だ。あいつ客に絡まれてるぞ」
麗華を助けるのは俺の役目じゃない。
信也は麗華の許に走って行った。
「俺が気が付かなかったらお前、あの連中に連れ去られて手込めにされたかもしれないんだぞ?!麗華はここでは有名な尻軽女だ、あいつと一緒に居ればお前も同類に見られる可能性があるって言ってんの!」
俺は暢気なあいつを怒鳴りつけた。
少しは危機感を持って欲しい・・・。
「ごめんね、心配してくれてありがと」
あいつは俺の胸に頭を押し付けてそう言った。
ライブ前に俺の理性をぶっ飛ばす気か・・・?!
「舞」
俺は見上げてきたあいつにキスをした。
九ヶ月もキスだけで付き合える女なんかいないだろう。
こいつじゃなきゃ、ヤらせない女なんかさっさと捨ててると思う。
自分でも不思議なくらい俺はこいつに惚れてる。
「お〜い、静斗、ここで盛るなよぉ!」
周りの奴らの冷やかしの声と笑い声が聞こえる。
俺からキスをしたのはこいつが初めてだって言っても信じないだろうな。
いつもは女からされてたし。
「静斗!」
ヒステリックな麗華の声に俺はうんざりした顔を向けた。
「何で舞ちゃんだけ助けるのよ!私の事はどうでもいいわけ?!」
「でかい声出すなよ、お前の場合助けていいのか分からんから放っておいただけだろ」
俺がお前を助ける訳がないだろ。
敢えてその辺は言わないでおこう。
「GEM次だからスタンバイしてね」
「おう」
スタッフの声が俺を助けてくれた。
俺はあいつの頭を軽く叩いてギターを取りに行く。
「静斗」
信也に呼び止められた。
「何?」
「こういう場所で舞華に手を出すな。どこから学校にバレるか分からない」
「麗華に言えよ。連れて来たのはあいつだ。今回来るなんて俺も知らなかったし」
知らなかったのは本当だ。
だからライブが終わったらあいつの家にプレゼントを届けに行こうとか考えてたし・・・。
「今日は麗華と帰らせるからな」
「おう」
さすがに嫌だとは言えなかった。
こういう特別な日に一緒に居れば関係を深めると心配しているのが分かったからだ。
俺だって自信ないし。ライブが終了し、打ち上げが始まった。
今日は異様に女が多い。
多分出演者の彼女とかじゃないかと思う。
興味なんてないけどさ。
俺は舞華を連れて控え室に戻った。
「舞、これやる」
俺はラッピングされた長細い箱をあいつに差し出した。
正直、女にプレゼントを買ったのは初めてだ。
今までの女は何かくれなんて言おうものならすぐに別れた。
面倒くさい。
それだけの理由だ。
代わりの女なんかたくさんいるし、どうでもよかった。
そんな俺がプレゼントを用意したなんて・・・誰にも知られたくなかった。
恥ずかし過ぎる・・・。
「私に・・・?」
「他に誰がいんだよ?」
なかなか受け取らないあいつの掌に俺は箱を押し付けた。
「あ・・・ありがとう。静が用意してるなんて思わなかった・・・」
正直、小学校時代に母親に肩叩き券をあげて以来のプレゼントだ。
「開けてみろよ」
あいつは小さく頷いて丁寧に包装紙を外した。
「綺麗・・・」
箱に入っていたのはネックレス。
ピンクの石が付いたプラチナのネックレスだった。
石の名前なんて知らないけど店で見た瞬間、コレだって思った。
存在感を主張する事もないが決して目立たないわけじゃない。
このネックレスを見た時、舞華と似てるって思った。
俺はそのネックレスを手にとってあいつの首に付けてやった。
あいつは真っ赤な顔で俺に抱きついた。
「ありがとう静・・・私もね、実は静にプレゼント持ってきたの」
意外にもあいつは俺にプレゼントを用意してくれていたらしい。
小さなバッグから小さな箱を取り出し俺に差し出した。
箱には芸能人が付けている事でも有名なA○Pのロザリオネックレスだった。
「静に似合いそうだなって思ったの。ブレスレットはギター弾くのに邪魔そうだったし、これなら・・・」
俺はあいつの言葉を遮ってキスをした。
俺達は再び打ち上げに顔を出した。
暫くして信也が麗華とあいつを連れて帰って行った。
ちょっと・・・っていうか、かなり信也が羨ましかった。
俺も送って行きたかったなぁ・・・。
メリークリスマス、舞華。
俺にとっては今までで最高のクリスマスだ。
イヴだけど。
ご覧頂きありがとうございます。
お互いに渡したい物があったんだけど、それぞれの気持ちが何となく微妙にすれ違うなんて事ありますよね。
結果的にはいいクリスマスだったんだと思います。