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GEM《ジェム》  作者: 武村 華音
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再び(静斗&舞華)


お久しぶりです。

ようやく再始動です。

 信也を病院に送って、病院の喫煙所で一服した俺は大きく伸びをして立ち上がった。

 この後、特に予定なんかない。

 あれから二年だ……。

 俺と舞華を繋ぐのは“GEMとプロデューサー”……そして“麗華”。

 俺は外に出て麗華の病室を見上げた。

 風で纏わり付く髪を後ろに払って、麗華の病室に向かって語り掛ける。

「俺達はお前の夢に辿り着いただろ。次はお前の番じゃないのか?」

 帰って来い、麗華……。

 舞華の声と共に帰って来い。

 ジーンズのポケットで携帯が鳴った。

 信也からだ。

 携帯を開き、メールを読んだ俺はその場から動く事が出来なかった。

 舞華が……今日もここに居るのか?

 先月も同じ内容のメールを信也からもらった。

 あの時は既に車を運転中で引き返す事もしなかった。

 俺達はここ二年間、二人きりになった事はない。

 舞華が意識的に避けているからだ。

 出会った頃のようなもどかしい感情と避けられるかもしれないという不安が俺の中で渦巻く。

 俺はこのままここであいつを待ってていいのか?

 あいつは俺を避けているってのに……。

 俺の頭とは裏腹に身体が動く事を拒否していた。

 暫くして、舞華と司と綾香が病院から出て来た。

 司は俺の姿を見つけると小さく手を上げて舞華の背中を押した。

「珍しいな。こんなトコで会うなんて」

 司の言葉に俺は苦笑した。

「信也を送ってきただけだ。一服したし帰るトコ」

「じゃ、舞華を送ってやってくれ」

 昨日の事なんか覚えていないような口調で司は言った。

「……おう」

 困惑する舞華を置いて、綾香はタクシー乗り場に停まっていたタクシーに乗り込んでさっさとその場から姿を消した。

 司は車で来ていたらしく、病院の裏側に向かって歩いて行く。

 残されたのは俺と舞華。

「……久しぶり、だな」

 舞華は俯いたまま俺の顔を見ようとはしない。

 お前の声……もう二年も聞いてないんだな。

 俺は歩み寄って舞華を抱きしめた。

 この二年間、触れる事も出来なかった。

「家まで送る。場所、教えてくれ」

 舞華は手を振って拒否の姿勢を崩さない。

 今現在、実家に住んでいないことは分かっている。

 だが、コイツが住んでいる場所を俺は知らない。

 美佐子さんも堅い口を開こうとはしない。

 舞華と美佐子さんの気持ちは分からなくもない。

『独りで帰るから』

 舞華の手話も随分読めるようになった。

「女の独り歩きは危険だぞ。大人しく送られろ」

 俺は舞華の腕を掴んで駐車場に向かい助手席に押し込んだ。

 素早く運転席に乗り込んだ俺は逃げられる前にさっさとエンジンをかけて車を発進させた。

「家の場所だけ教えてくれればそこで下ろして帰るだけだから警戒すんな」

 俺は困惑する舞華に苦笑するしかなかった。

 もう俺に対して恋愛感情などないのかもしれない。

 ただ麗華のためだけに俺達の傍に居るのかもしれない。

 そんな気さえしていた。

『同じ所』

 信号で停まった時、舞華の手が動いた。

「同じ所って……何が?」

 舞華が驚いたように俺を見た。

 手話が分からないと思ってたらしい。

「お前が声を失くしてから勉強した。お前と話せればと思ったんだけど……お前が俺を避けるから必要もなかったのかもしれないけどな……」

 自分で言ってて泣きそうになった。

『同じ……マンション』

 舞華の手を見て俺は驚きを隠せなかった。

 現在、俺達はM・Kが用意してくれたマンションに住んでいる。

 まさか舞華も同じマンションに住んでいるとは……。

 そんな近くに居るなんて考えもしなかった。

「了解」

 俺は短く答えて自分の住むマンションに車を走らせた。


 病院を出ると、正面に静が立っていた。

「珍しいな。こんなトコで会うなんて」

 司が私の背中を押しながら微笑んだ。

 最近二人が一緒に居るのをよく見掛ける。

 もしかして二人は付き合ってるんじゃないかって思うくらい。

 その姿を見る度に私の胸が痛んだ。

「信也を送ってきただけだ。一服したし帰るトコ」

「じゃ、舞華を送ってやってくれ」

「……おう」

 司は自分を送ってくれとは言わなかった。

 困惑する私を置いて、綾香さんはタクシー乗り場に停まっていたタクシーに乗って行ってしまった。

 司は裏側の駐車場に向かったんだろう。

「……久しぶり、だな」

 静と二人きりになるのは久しぶりだった。

 麗ちゃんが目を覚ますまで距離を置こうと思ってたから……。

 静は傍にやって来ると優しく私を抱きしめた。

 懐かしい静の匂い……。

「家まで送る。場所、教えてくれ」

 私は手を振って拒否した。

 決意が揺らいでしまうから。

 そこまで強くなれないから……。

『独りで帰るから』

「女の独り歩きは危険だぞ。大人しく送られろ」

 静は私の腕を掴んで駐車場に向かい助手席に押し込むんだ。

 あの頃と変わらない強引さ……。

 静は素早く運転席に乗り込んで車を発進させた。

「家の場所だけ教えてくれればそこで下ろして帰るだけだから警戒すんな」

 警戒なんかしてない……。

 でも、避けてるからそう思ったのかもしれない。

 私の気持ちはあの頃と変わらない。

 静が好き。

 でも……麗ちゃんが目を覚ますまでは私の気持ちも閉じ込めておこうと思った。

 信号で車が停まった時、私は静に向かって手を動かした。

 理解してもらえるわけがないのに……。

『同じ所だよ』

「同じ所って……何が?」

 え……?

 今の……分かったの?

 弾かれるように私は運転席の静を見上げた。

「お前が声を失くしてから勉強した。お前と話せればと思ったんだけど……お前が俺を避けるから必要もなかったのかもしれないけどな……」

 静は寂しそうに微笑んだ。

 勉強、してくれてたの……?

 私のために?

 私は何もしてないのに……。

 私は……自分勝手なのかもしれない。

 静が勉強してくれてる間、音楽の事だけを……麗ちゃんの事だけを考えていた。

 静は私のためにやれる事をやってくれていたのに、私は避けることしか考えていなかった。

『同じ……マンション』

 私は静にどんな顔を向けていいのか分からなかった。

 恥ずかしかった。

 あまりにも自分勝手で……そんな事に静を付き合わせている自分が許せなかった。

 現在、GEMはM・Kが所有するマンションに住んでいる。

 私も同じマンションの上層階に住んでいる。

 あの家には居たくなかった。

 本来は新人や研修中の人のためのマンションだが空きがあったので入れてもらった。

 そして彼らと鉢合わせしないようにひっそりと暮らしてきた。

 それは、ただ逃げていただけなのかもしれない……。

「……麗華いい方向に向かってるんだろ?」

 静の問いに私は小さく頷いた。

『最近ね、笑うの。口元だけなんだけど……司や綾香さんの話を聞いてちょっとだけなんだけど、微笑んでくれるの』

「少しずつでもあいつなりに頑張ってるんだな……」

 静は正面を見ながら小さく微笑んだ。

 その微笑みに私の胸が高鳴る。

 こんなに好きなんだ、って心が訴えてる。

 二年ぶりの二人の時間は病院からマンションまでの短い時間。

 たったそれだけの事が嬉しくて仕方ない。

 それと同時に、麗ちゃんへの罪悪感が私を襲う。

「なぁ舞華、改めてやり直さないか? 俺達はこの二年ずっと離れてたし、付き合ってたなんて言えなかったと思う。だから……もう一回、俺にチャンスをくれないか?」

 マンションの駐車場に車を停めた静が私の手に手を重ねて真剣な眼で見つめていた。

 考えてもいなかった言葉だった。

 二年間も距離を置いていたし、静にはきっと大切な人ができたと思い込んでいた。

 司や女性スタッフと笑顔で話す静の姿を見かける度に、手を握りしめて……唇を噛み締めて胸の痛みに耐えてきた。

 彼女達は特別な存在ではなかったの?

 静は私と同じ気持ちでいてくれたの?

『本気? 本当に……私でいいの? 私、喋れないよ? 色も分からないままだし……麗ちゃんの事ばっかり考えて二の次になるかもしれないよ? それでもいいの?』

「もう二の次だろ」

 静は苦笑して私を抱きしめた。

 静にとって足枷にしかならないのに……。

 それでもいいの……?

 私なんかでいいの?

「今の……OKって解釈していいんだよな?」

 私は静の腕の中で小さく頷いた。

 涙を堪えるので精一杯だった。

 涙は麗ちゃんが目覚めるまで誰にも見せないって誓ったから泣く事は出来ない。

 麗ちゃん、ごめんね。

 私限界みたい……。

 ……もう一度静とやり直してもいい?

 静の傍に居てもいい……?

 麗ちゃんごめんね、私ズルイよね……。

 でも、もう駄目……私も限界だよ麗ちゃん……ごめんね……。

 私は心の中で何度も麗ちゃんに謝りながら静の背中に手を回した。



ご覧頂きありがとうございます。


私事で読んでくださる皆様にご迷惑をお掛けして申し訳ございませんでした。

再び、UP再開です。


舞華と静斗。

何とか二年前の状態に戻れました。

これからですよっ!


☆次回更新4月9日です☆

昨日はエイプリルフールでしたね、ふふっ♪

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