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GEM《ジェム》  作者: 武村 華音
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述懐(信也&静斗)

その夜、信也の部屋にGEMメンバーが居ました。

「……で?」

 俺はビールを口に運びながら問い返した。

「で? って……それだけだよ」

 目の前に座る静斗は不機嫌だ。

「らしくもない、大人しく帰って来たのか?」

「警備員が来たら助けないとか言われてみろ、粘れるか?」

「チキン野郎」

 何でこうも舞華が絡むと弱気になるんだ?

「信也……」

 涼が苦笑しながら皿に盛られたビーフジャーキーに手を伸ばす。

「舞華がいつも聖ルチアに通ってるんだろ? そこまで行ったなら何で訊いて来なかったんだよ?」

 英二も同じ意見らしい。

「訊けなかったんだよ、舞華が知られるのを嫌がってるって言われたら……訊けなかった」

 舞華の事になると俺様な静斗はその辺のつまらない男に成り下がる。

 でも、その気持ちは分からなくもない。

 俺だって、麗華に逃げられたくなくて他の男の所に行くのを止められなかった。

 だから今……麗華は眠っている。

 舞華が聖ルチアに通っているなら母さんが知ってるかもしれない。

「俺も訊いてみる」

 空き缶を握り潰して俺は溜め息を吐いた。

 舞華が何をしに行ってるのか俺も気になる。

「訊いてみるって?」

「俺の母親どこの誰か知ってるだろ?」

 皆忘れているようだが、俺の母親は聖ルチアの理事だ。

 卒業生とはいえ頻繁に出入りしている舞華の噂を知らない訳がない。

 三人が思い出したように表情を明るくさせた。

「今日はもう無理だぞ」

 既に深夜だ。

 さすがに親相手とはいえ電話できない。

「時間のある時に確認しとく。期待はするなよ」

 もしかしたら既に口止めされてるかもしれない。

「で? 飲もうって言ったんだからそっちこそ何かあったんじゃないの?」

 涼が俺の顔を見ながら微笑んだ。

「麗華が……笑ったらしい」

 らしいというのは綾香以外に見た人物が居ないからだ。

 綾香を疑ってる訳じゃない。

 でも、俺は確認できなかった。

「何で? 何の話をして?」

 涼は興味深げに尋ねてくる。

 嬉しい話になるとこうして人の気持ちを盛り上げるのだ。

「綾香が舞華に貰ったバングルの説明をしたらしい。その時に口元が笑ったって言ってた」

「綾香ちゃん、いっつも麗ちゃんに話し掛けてるもんね。愚痴とかも言ってるのかな」

「間違いなく言ってる」

 答えたのは英二だ。

「くだらねぇ話聞かせてるみたいだぞ」

 何を話してるのか聞いているのかもしれない。

「目を覚ました麗華が妙に情報通だったら間違いなく綾香のせいだ」

 その言葉に俺達は噴き出した。

 しかし、静斗だけは話を聞いていないらしく窓の外を眺めながらビールを飲んでいた。


 信也の部屋で飲んで騒いだ俺達は、マネージャーの羽田さんの電話で起こされた。

『皆どこに居る?』

「信也の部屋」

 俺は欠伸をしながら答え、英二と信也を蹴飛ばした。

 涼は既に起きていたらしく、勝手に信也の部屋のシャワーを使ってさっぱりした顔で珈琲を飲んでいた。

「おはよう」

 おはよう、じゃねぇだろ。

 のそのそと起き上がる俺達に涼が珈琲を運んできた。

「あと一時間半で時間だよ。目を覚まさなきゃね」

「だったら先に起こせ」

 俺は珈琲を受け取りながら涼を睨んだ。

「気持ち良さそうに寝てたから起こしにくくてさ」

 涼は苦笑した。

 俺があまり眠れないと言った事を覚えていたのかもしれない。

「俺自分の部屋でシャワー浴びてくるわ」

 英二が立ち上がった。

「珈琲淹れたのに」

「分かった、飲んでく……」

 英二は涼に弱い。

 何か弱みを握られているんだろう。

 涼はおそらく全員の弱みを握っている。

「今日も缶詰か?」

 英二が信也に尋ねる。

「だろうな、結城さんが居るから簡単には終わらんだろ」

 あの野郎はいつも難癖つけてレコーディングを長引かせる。

 俺的にはいいと思っても却下。

 俺がキレると舞華を巻き込む。

 性格が悪いったらない。

 俺は珈琲を口に運びながら溜め息を吐いた。

 ……予想通りだ。

 既に夕方。

 朝一から始まったレコーディングはたった二曲だというのに終わらない。

 そして舞華の姿はいつの間にかなくなっている。

 俺達に気付かれないように出て行ったんだろう。

「結城さんリミットです、すみません。今日は終わりにしていただけますか?」

 羽田さんが再度録ろうとする結城に声を掛けた。

「まったく……たった二曲だぞ? こんなのに何日掛ける気だ」

 誰のせいだよ?

「信也、ゴメン。社長に呼ばれてて今日は送っていけないんだ」

 羽田さんはいつも麗華の病院に信也を送っていく。

 デビュー当時からずっとだ。

 何も言わないが美佐子さんから話を聞いているんだと思う。

「信也、送ってく」

 俺は上着を取って扉の方に向かった。

「悪いな」

「何言ってんだよ、気味悪い」

 恥ずかしい事言うな。

「気味悪いってあんまりだな、素直に礼を言ってるのに」

「大人しく付いて来りゃいいだろ」

 背後でクスクスと笑っている涼の声が聞こえる。

 クソッ……。

 車に乗り込んだ俺達は何の会話も事なく病院に辿り着いた。

「悪かったな」

「別に? ついでだろ。帰りは知らねぇけど」

 信也は車を降りると小さく手を上げて病院の中に消えて行った。

 俺は駐車場に車を停めて喫煙所に向かった。

 車の中では吸いたくなかった。

 まだ乗せたことはないが、いつか舞華を乗せたいと思っていた。

 もともとあまり煙草を好きではない舞華を(ヤニ)臭い車には乗せたくなかった。

 だから俺の車は現在まで禁煙車だ。

 乗せてやれる日が来るかどうかも分からないのにな……。

 俺は誰も居ない喫煙所の中で一人煙草を銜え火を点けた。

 ライターの着火音が妙に大きく感じた。


ご覧頂きありがとうございます。


これからお話が展開していくのに、すっごく言い難いんですが……。


めちゃくちゃ私事なのですが、暫く執筆と投稿が困難な状態に陥ります。

申し訳ございませんが少しの間お休みさせていただきます。

申し訳ございません。

必ず四月になったら再開しますので……。


本当にごめんなさい。


☆次回更新4月2日、または4月9日になります☆

ご迷惑をお掛けしてすみません……。

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