表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
GEM《ジェム》  作者: 武村 華音
82/130

祈念(静斗&司)


怪しい行動している涼と静斗。

その背後に……。

 スタジオの傍に車を停めて、俺と涼はスタジオから出てくる人物や車に目を凝らしていた。

「もうそろそろいつもの休憩時間だよ」

 涼の言葉に俺は小さく頷いた。

 涼の推測が正しければ舞華は何処かに出掛けるはずだ。

 どこに何をしに出掛けてるのか?

 俺はそれが知りたかった。

「あ」

 涼の声に俺はハッとしてスタジオに目を向けた。

 結城の車のハザードランプが点滅した。

「結城さんと出掛けるみたいだね」

 司がいつも使っている車は停まっていない。

 美佐子さんのお遣いで出掛けているのかもしれない。

「シートベルトして」

 涼は結城の車から目を離さずにギアをドライブに入れ、サイドブレーキを解除した。

 ゆっくりと結城の車が動き出し、涼もその後ろから距離を保ちながら追い掛ける。

「これでラブホとか行かれたら俺立ち直れな……」

「静斗、冗談でも怒るよ? 舞ちゃんはそんな子じゃないって静斗が一番分かってるんじゃないの?」

 結城の車から目を離す事無く涼が俺の言葉を遮った。

「結城さんとはそんな関係じゃないよ」

 何故か言い切る涼に俺は顔を顰めた。

「何か知ってんのかよ?」

「何も? でも、舞ちゃんはそんな子じゃない、それだけは確かだよ。だから静斗でもそんな事言うのは許さないよ」

 時々涼は舞華が好きなんじゃないかって思うことがある。

「涼は舞華が好きなのか?」

「好きだよ。麗ちゃんも綾香ちゃんも司ちゃんも皆好きだよ」

 返ってくる言葉はいつも同じだ。

「いつも訊くね、何で?」

 珍しく涼が突っ込んで訊いてくる。

「舞華の事妙に気にしてるからそうなのかと思って訊いてるだけだ」

 涼は二台前の結城の車から目を逸らさずに苦笑した。

「恋愛感情じゃないよ。静斗を好きなのと同じ部類の感情」

 一瞬ドキッとした。

 (ヤロー)に好きだと言われる事なんかない。

 なのに涼だけは平気でそういう言葉を返してくる。

「舞ちゃんが無理してるのは誰の目にも明らかでしょ? 当然気になるよ。静斗だって心配でしょ? いつか倒れるんじゃないかってさ」

 舞華が無理してるのは確かだと思う。

 朝早くから夜遅くまでスタジオに篭って作業をしている。

 以前早朝に練習しようとスタジオに入ったら結城と司と三人でスタジオの隅にあるソファで転寝(うたたね)していて驚いた。

 結城の野郎が最近、舞華に色んな仕事をさせているのも知ってる。

 舞華はGEM以外の仕事は断っていたはずなのに……。

 涼の携帯が鳴り出した。

「静斗出て。多分英二」

 何で見もしないで分かるのかは疑問だが涼の胸のポケットから携帯を取り出して開くと見事に英二からだった。

「もしもし」

『涼の番号に掛けた筈だが間違ったか?』

「あぁ、涼の携帯だ。今涼が運転してるから俺が出た」

 間違えるなんてありえないだろ、特に英二は。

『お前今どこに居る?』

「尾行中」

『何だよそれ?』

「あ、入った」

 涼の声に俺は正面を見た。

 見覚えのある場所だった。

「悪い、着いたみたいだから切るぞ」

 俺が電話を切ると涼が車を停めた。

「聖ルチア?」

 俺の呟きに涼が小さく頷いた。

「この中に入って行ったよ。ちょっと覗いてくるよ」

 涼はハザードランプを点滅させ、車を降りて歩いて行く。

 俺もその後を追おうと車を降りると後ろから肩を叩かれた。

「何をしてる?」

 その声には聞き覚えがある。

 振り返ると司が立っていた。


「美佐子さん、書類受け取りましたよ」

 私は美佐子さんに頼まれて書類を取りに出掛けていた。

 舞華を連れ出さなければならない時間は過ぎていた。

 おそらく結城さんが連れて行ってくれただろうが、もしかしたらと思って電話をした。

『ご苦労様』

「あ、美佐子さん。舞華は?」

『出掛けたわよ、結城君が連れて行ってくれたみたい』

 やっぱり……。

「ありがとうございます。じゃあ舞華を迎えに行って結城さんを戻しますね」

 この忙しい時期に二人が出掛けるのは歓迎できない。

『お願いね』

 携帯を切って助手席に投げ、私は聖ルチアに向かった。

 幸い、聖ルチアまでは五分も掛からない場所だ。

 教会の十字架が数分後に見えてきた。

 曲がり角を曲がると見慣れた車が道の端に停められている。

 ナンバーを見てその車の持ち主を確信した。

 静斗だ。

 私はスピードを落とし、気付かれないように停車させて車を降りた。

 歩き出すと運転席から静斗ではない人物が降りて聖ルチアのほうに向かって歩いて行った。

 あのシルエットからおそらく涼だろう。

 車の中にまだ誰かが居る。

 その人物が助手席の扉を開けて降りた。

 明らかに静斗だ。

 間違えようもない長い金髪。

 私は歩き出す前に静斗を掴まえようとその肩を叩いた。

「何をしてる?」

 振り返った静斗は私を見て驚いたようだ。

「お前こそ何してんだよ?」

「私が先に訊いたんだ、答えろ」

 舞華の後を()けてきたのか?

「舞華を見つけたから追ってきた」

 やっぱり……。

「勝手な事をするな」

「お前に訊いたって答えないだろ」

「舞華が嫌がる事を教える訳がないだろ」

 この事だって知ってるのは私以外、美佐子さんと敦さんと結城さんだけだ。

 あぁ、理事も知ってたな……。

「今すぐに帰れ、二度とここには来るな」

 コイツだって舞華のあんな姿を見たい訳がない。

「司、あいつ何をしに来てるんだ?」

「答えられん。訊きたきゃ舞華に訊け」

 私の口からは言えない。

「司ちゃん?」

 聖ルチアに向かった涼が帰って来た。

「二人共今すぐに帰れ。二度とここには来るなよ、五分後に警備員が来るからな。その時は助けない」

 私はそれだけ言い残して車に戻り、聖ルチアの中に入った。

 結城さんは駐車場の車の中に居た。

 私は運転席の窓ガラスを叩いて結城さんを呼んだ。

 シートを倒して仮眠していたようだがこちらは関係ない。

「お、司。どうした?」

窓を開けて結城さんが微笑んだ。

()けられたぞ」

「誰に?」

 結城さんは気付いていなかったらしい。

「静斗と涼が外に居る」

 結城さんが俯きがちに舌打ちをした。

「舞華は私が連れて帰る、結城さんはスタジオに戻ってくれ」

「分かった」

 倒していたシートを起こすと結城さんは車を発進させた。

 私はそれを見送ってから舞華の居る場所へと向かった。



ご覧頂きありがとうございます。


舞華が出てこない〜。

いいのかコレで??

取り敢えず今のところゆっくりと話は進んでいきます。


☆次回更新3月18日です☆

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ