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GEM《ジェム》  作者: 武村 華音
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距離(綾香&静斗)


お久しぶりです。

後編スタートさせます。

今までと違い、暫く週1回の更新になると思いますがよろしくお願いします。

 私がこの病室に通うようになって二年が経つ。

 麗華ちゃんは相変わらず眠ったままだけど、傷は完治してるし、自分で呼吸も出来る。

 本当に眠ってるだけ。

 でも、先月麗華ちゃんに変化があった。

 GEMの曲を聴いて涙を流したのだ。

 あの日は司と舞華ちゃんがGEMの会員証を持ってこの病室を訪れた。

 その会員証は今は麗華ちゃんの眠るベッド脇の引き出しに保管されている。

 病室のドアがノックされて舞華ちゃんが顔を覗かせた。

「舞華ちゃん?」

 今は忙しい筈じゃ……?

「お疲れさん」

 舞華ちゃんの後ろから顔を出したのは結城さん。

「どうしたんですか?」

 司は大学に行っている時間なんだけど、だからって結城さんに連れて来てもらうほどの用事があったのだろうか?

「今日は麗華の誕生日なんだ」

 私の顔を見て結城さんが苦笑した。

「え?」

 誕生日?

 ってことは……。

「舞華ちゃんも誕生日って事よね?」

 舞華ちゃんは顔を赤らめながら小さく頷いた。

「で、舞華がプレゼントを渡したいって言ったから連れて来た」

 舞華ちゃんは喋れない。

「麗華ちゃん、舞華ちゃんがプレゼント持って来てくれたわよ。今日お誕生日だったんですって?  おめでとう」

 麗華ちゃんの頭を撫でながら私は語り掛けた。

「舞華ちゃんもおめでとう、ゴメンね気付かなくて」

 私の言葉に舞華ちゃんは手を左右に振って苦笑した。

 そして椅子に腰を下ろして持ってきた青緑の紙袋を麗華ちゃんに握らせ、その中から同じ色の箱を取り出した。

 麗華ちゃんの指でリボンを解き、箱の中からそっと取り出したのはシンプルなバングルだった。

 舞華ちゃんは麗華ちゃんの右手首にそのバングルを嵌めて、手を握ったまま麗華ちゃんの顔をじっと見つめる。

 いつも泣きそうな顔をして心の中で語り掛けている。

 何を話しているのかは誰にも分からない。

「舞華が時間を見つけては探し歩いたプレゼントだぞ」

 結城さんが舞華ちゃんの肩に手を乗せて声を掛けた。

 まるで一緒に探し歩いていたような言い方だ。

 舞華ちゃんの考えている事は分からない。

 静斗を避けて仕事に没頭したり、結城さんと一緒に行動したり……。

 舞華ちゃんは何を考えてるんだろう?

「舞華帰るか?」

 え、もう?

 まだ二人は来たばかりだ。

「まだ作業中なんだ。また、時間が出来たら連れて来る」

 結城さんが?

 そう問い返したくなるのを私は我慢して頷いた。

 舞華ちゃんは箱を紙袋に入れ、ベッド脇のテーブルに乗せて立ち上がった。

 さり気なく舞華ちゃんの腰に添えられた結城さんの手が気になる。

 舞華ちゃんも嫌がる素振りを見せない。

 この二人がどういった関係なのかは、以前英二に訊いてみたけど分からなかった。

 暫く窓の外を眺めていたが二人の姿は駐車場に現れない。

「あ、髪を梳かす前に来られちゃったわね」

 私は振り返って引き出しからブラシを取り出し、麗華ちゃんの髪を梳かし始めた。

「舞華ちゃん……何考えてんだろうね?」

 私の言葉に答えてくれる人物は当然居なかった。

 

 最近、妙に舞華と結城が一緒に居る。

 休憩中も仕事中も何故か離れない。

 それが不思議で、それが不安で、それが不快で……。

 俺は……最高に不機嫌だった。

 そんな中、舞華と麗華は誕生日を迎えた。

 その日はオフで、信也は昼過ぎから麗華の病室に行くと言うので涼や英二と一緒に麗華の居る病院に向かった。

 麗華はまだ目を覚まさない。

 しかし、少しずついい方向に向かっているらしい事は信也から聞いていた。

 俺は病室に入った事はない。

 一度だけ舞華を迎えに行ったが病室の前で会ったので中には入らなかった。

 それ以降は病院の喫煙所以外に足を踏み入れる事もなかった。

 だから勿論、あの事件以降麗華の顔を見ていない。

「あれ? 舞ちゃん……?」

 涼が自動販売機の前に居る舞華を見つけた。

 結城の姿も見えた。

「そっか、舞ちゃん免許もってないもんね」

 涼は納得したように呟いたが、俺は心穏やかじゃない。

 その場から動く事が出来なくなった。

「舞華」

 結城が舞華を傍にある椅子に座らせるとジャケットのポケットから掌サイズの箱を取り出して舞華に差し出した。

 不思議そうに見上げる舞華に結城は絶対に俺達には見せないような優しい顔で微笑んだ。

「今日、誕生日だろ」

『ありがとう』

 舞華の手が礼を言ってその箱を受け取った。

 何で受け取るんだよ……!

 俺は拳を握り締めた。

 しかし、視線を逸らす事なんか出来なかった。

 ゆっくりとリボンを解き、箱を開けた舞華は驚いた後、結城に微笑んだ。

「気に入ったか?」

 結城の言葉に舞華は大きく頷いた。

 何をプレゼントされたのか分からないが、舞華の笑顔を見たのは久しぶりで……なのに、その隣に居るのは俺じゃなくて……その場に居る事に耐えきれなくなった俺は麗華の病室に向かった。

「あら、フルメンバーなんて初めてじゃない?」

 病室のドアを開けると、麗華の髪を梳かしながら綾香が微笑んだ。

「そうだな」

 信也は苦笑しながらベッド脇の椅子に腰を下ろした。

「ん? 何だコレ?」

 信也が麗華の手を見て顔を顰めた。

「あぁ、さっき舞華ちゃんと結城さんが来て麗華ちゃんの腕に着けてったの」

 麗華の手首にはシンプルなバングルが嵌っていた。

「そうか……」

 舞華と聞いて信也は表情を穏やかにした。

「それティ○ァニーのバングルだね」

 涼が微笑んだ。

 何でそんなのを知っているのかは疑問だが、綾香は小さく頷いた。

 舞華らしいシンプルなデザインだけど、存在感があってどんな服にも合わせやすそうなバングルだった。

「……本当麗華ちゃんに似合ってる」

 麗華の髪を梳かし終わり、綾香はブラシを置いた。

 舞華はきっと時間を掛けて選んだに違いない。

 麗華のためにただ頑張るあいつを俺は支える事も出来ない。

 俺は自分がどうしたらいいのか未だ分からずにいた。

「元気ないじゃない?」

 綾香が俺の顔を覗き込んだ。

「何でもねぇよ」

 麗華の手から顔に視線を移して俺は目を見開いた。

 メイクもしていない麗華の顔は、舞華そっくりだった。

 そこで眠っているのが舞華に見えて俺は麗華の顔を見つめ続ける事なんか出来なかった。

「……悪い、俺帰るわ」

 あの時刺されたのは舞華だったのか? そう考えてしまいそうになる。

 脱色していた部分も、パーマをかけていた部分もなくなった真っ黒で真っ直ぐな髪。

 一卵性双生児なんだから似ているのは当然なのかもしれない。

 それでも気分が悪くなった。

「静斗」

 病室を出て壁に寄り掛かっている俺に涼が声を掛けてきた。

「顔色悪いね。車、僕が運転しようか?」

 何か言いたげな顔をしている。

「あぁ……」

 自動販売機の傍を通り過ぎるとそこにはもう舞華の姿はなかった。

 二年だ……。

 俺と舞華を引き裂くには充分な時間だったのかもしれない。

 誰も居なくなった自動販売機の前の椅子を眺めながら俺は小さく嗤った。



ご覧頂きありがとうございます。


妙な空気の中で後編スタートです。

時間は前編から1ヶ月しか経過していません。

ゆっくりとしたペースになりますが進めて行きたいと思います。

よろしくお付き合い下さい。



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