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GEM《ジェム》  作者: 武村 華音
79/130

眠り姫(舞華&信也)


あの事件から2年。

何か変わったのでしょうか?

事件から二年経っても麗ちゃんは目を覚まさない。

季節は夏から秋に移り、冬に変わろうとしていた。

あれから二年も経っているというのに、まだ麗ちゃんの夢は叶ってない。

私はGEMの音作りに専念していた。

他の依頼は全て断った。

麗ちゃんの夢を叶える事が私の夢だから。

静と二人きりで会う事はなくなっていた。

麗ちゃんの意識が戻るまで私は距離を置こうと思っていた。

きっと傍に居たら頼っちゃう・・・甘えちゃうから。

それに自分達だけが幸せなのはズルイ気がした。

綾香さんは病室でGEMが出演する歌番組を麗ちゃんに見せてあげている。

気が付けば、私達にはそれぞれの役割分担が出来上がっていた。

やっと夢が叶うよ、麗ちゃん。

アルバムのトラックダウンを終えて私はスタジオの隅にある写真立てに微笑んだ。

やっと・・・やっと叶うよ。

気が付けば私も麗ちゃんも、もうすぐ二十歳になる。

大人の仲間入りだ。

麗ちゃんの事だけを考えて我武者羅(がむしゃら)に走り続けていた。

ようやくファンクラブの要望が目標数に達し、今度のライブ会場でファンクラブの設立を報告して、ライブ終了の翌日から受付を開始する事が決まったのだ。

今回のライブはタイアップされた清涼飲料水の企画で三日間だけ行われる小規模なものだが、発売開始二十分で売り切れた。

やっと・・・麗ちゃんの夢を叶えてあげられる・・・。

「舞ちゃん、出来上がったわよ!」

お母さんがレコーディングスタジオにやって来た。

その手に握られているのは・・・会員証。

「美佐子さん、それ・・・麗華の?」

司が尋ねた。

「そうよ、今届けてもらったの」

私はお母さんの手からその会員証を受け取って司と共にスタジオを飛び出した。

事務所の車を司が運転して、麗ちゃんが居る病院に向かった。

病室の扉を開けると綾香さんが麗ちゃんのベッドを少し起こしていた。

「これからGEMが出るのよ」

綾香さんはGEMが出る番組を常に麗ちゃんに見せている。

GEMのメンバーも麗ちゃんのために出れる番組にとにかく出まくっていた。

「麗華、お前の欲しかった会員証持って来たぞ」

司が私の代わりに麗ちゃんに語り掛けた。

私は意識のない麗ちゃんの右手にそっと会員証を握らせた。

久しぶりに見る麗ちゃんの髪は綺麗に切り揃えられていた。

『髪・・・切ってくれたの?』

「麗華の髪・・・綾香が切ったのか?」

司が私の言葉を通訳して伝える。

「そ、かわいくなったでしょう?」

ブリーチやパーマの部分はもうなく真っ黒で真っ直ぐな髪。

「舞華と見分けがつかなくなりそうだな」

司が微笑んだ。

私達は始まった歌番組を麗ちゃんと一緒に観賞した。

「麗華ちゃん・・・?!」

綾香さんの声に私と司は麗ちゃんに視線を移した。

麗ちゃんの目から涙が流れていた。

意識はないのに・・・。

ねぇ、麗ちゃん。

聴こえてるんでしょ?

凄く上手になったでしょ?

麗ちゃんのために皆頑張ってくれてるんだよ。

だから、帰ってきて。

皆待ってるよ。

私は麗ちゃんの涙をそっとハンカチで拭った。


麗華が涙を流したと綾香から電話で聞いた。

俺は仕事を終えて病院に向かった。

静斗が病院まで送ってくれた。

病室には舞華と司と綾香が居た。

そして麗華の手には真新しい、まだ誰も手にしていない会員証が握られていた。

「会員証・・・できたのか?」

俺が舞華に視線を移すと舞華はニッコリと微笑んだ。

「やっと届けてやれたな」

司は舞華の手を見ながら声に変換した。

「あとは麗華ちゃんが目を覚ますだけね」

綾香が麗華の頭を撫でながら呟いた。

「そうだな」

俺達はお前がいつ目を覚ましても恥ずかしくない状態だ。

早く帰って来い。

俺はポケットから先日購入した指輪を麗華の左手に嵌めた。

「信也・・・それって・・・」

「あぁ、結婚指輪だ。本当は麗華と一緒に選びたかったんだけどな」

いつ目を覚ますか分からないから俺の独断で選んだ。

内側には事件翌日の日付が刻まれている。

麗華・・・知ってるか?

俺達結婚して二年経つんだぞ?

「高井戸さん点滴ですよ〜」

看護師が扉を開けて入って来た。

「あら、今日は面会さんが多いんですね。高井戸さんも嬉しいんじゃないかしら?」

看護師は慣れた手つきで点滴を刺して微笑んだ。

「何か・・・未だ慣れないな」

司が呟いた。

「何がだ?」

「麗華が高井戸になってるって事がさ」

俺は苦笑した。

確かに、コイツが高井戸姓になって二年になるが意識がないから俺自身も自覚がない。

正直、俺でさえ違和感を抱いている。

「麗華、お前知ってるのか?高井戸になってもう二年なんだぞ」

司は麗華の頭を撫でながら耳元で告げた。

「・・・あ」

麗華の目から涙が零れた。

「あら、高井戸さんが反応してるわ。先生に報告しなきゃ・・・!」

看護師は慌てて病室を出て行った。

「聞こえてるんだな、麗華」

俺は麗華の涙を拭いながら微笑んだ。

俺達の声に反応してくれた。

意識はないが麗華は確実に俺達の声を聞いている。

「早く帰って来い、皆待ってるぞ」

舞華がよく麗華に掛けていた言葉だ。

声の出ない舞華の代わりに俺は麗華に告げた。

舞華が耳の後ろに手を当てていた。

舞華は泣きそうになると耳の後ろを押さえる。

ここ二年間で見つけた舞華の癖。

俺は静斗にメールを入れた。

舞華がここに居る、と。

二人が・・・いや、舞華が静斗と距離を置いている事には気付いていた。

どうせ、麗華の時間が止まっているからと自分の時間まで止めてしまったんだろう。

その証拠に二人は会っていない。

行き来もない。

俺達はこの二年間、スタジオ以外で舞華の姿を見ていなかった。

もう二年だ。

そろそろ舞華も限界の筈だ。

「舞華・・・麗華の夢、叶えてくれてサンキュ」

舞華は涙を我慢した目で俺に微笑んだ。

舞華の心が壊れてしまう前に・・・早く目を覚ませ。

舞華はお前の夢を叶えてくれた。

次はお前が舞華の夢を叶えてやれ。

目を覚ませ、麗華・・・。

頼む・・・舞華を助けてやってくれ―――――――。



それからも麗華は目覚める事なく眠り続けている。

俺達は麗華の目覚めを待ちながら一歩一歩前に進んでいく。

目を覚ました時に恥ずかしくないように。

涙を流した麗華の目覚めはきっとそう遠くない筈だ・・・。

俺達はそう信じて進んでいくしかなかった―――――――。












                                          ― 前編 完 ―   








ご覧頂きありがとうございます。

前編、本日終了です。

中途半端ですよね〜。

ごめんなさい。

ちょっと長すぎて1度区切ってみました。

後編再開まで少し時間ください。

体調を整えてから再開したいと思います。

勝手を言ってすみません。

忘れられない程度で再開します。

絶対に途中で終わらせたりしません。

約束です。


それでは皆様良いお年を・・・。

― 武村 華音 ―

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