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GEM《ジェム》  作者: 武村 華音
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喪失(静斗&司)


胸を引き裂かれそうな舞華の声が響いたライブハウス。

二人は・・・。

俺は奴が意識を飛ばすまで殴り続けた。

許せなかった。

「静斗、もういい。やめろ!」

英二が俺の腕を掴んだ。

「それ以上やったら死んじゃうよ。静斗を人殺しにはしたくない。コイツを生かしとくのは不本意だけどね」

涼も感情のない声で言った。

この場に居る誰もがこの男を殺したいと思っただろう。

この男は前に麗華に声を掛けていた角という男だった。

ABELで二ヶ月に一度位顔を合わせていた気がする。

まさか、こんな身近な人間だとは思わなかった。

麗華はすぐに救急車で病院に運ばれた。

信也は一緒に救急車に乗り込んだ。

当然だ。

舞華もショックで倒れ、病院に運ばれた。

司が一緒に付いて行った。

俺は事情聴取とかってヤツで付いて行く事が出来なかった。

警察の事情聴取が終わった俺は、待っていた英二や涼と一緒に二人の運ばれた病院に向かった。

「信也!」

手術室の前の長椅子に座っている信也を見つけた。

「麗華は?!」

信也は黙って首を振った。

祈るように両手を絡めて額に押し付けていた。

俺達も両手を合わせて手術室の前で祈った。

麗華の命だけでも助けてくれ、と・・・。

どの位そうしていたのか分からない。

数分だったのか何時間だったのかその感覚も麻痺していた。

ただとてつもなく長く感じた。

手術中の明かりが消え扉が開く音がした。

顔を上げると、医者が立っていた。

「麗華は・・・?!」

信也が医者の緑色の手術着を握り締めた。

「お腹の赤ちゃんは残念ですが・・・奥様は一命を取り留めました。心臓は動いています」

そう答える医者の顔は冴えない。

何よりも医者の言葉が引っ掛かる。

「しかし、意識が戻るまでは何とも言えません・・・」

医者の言葉に俺達は愕然とした。

「信也!」

見覚えのあるばばぁがすごい剣幕でやって来た。

「麗華は・・・?!」

「命は取り留めたらしい・・・」

力なく答える信也の頬をばばぁは思いっきり引っ叩いた。

「ごめん・・・」

信也は母親が何を言いたいのか分かっていたように謝った。

「何で・・・何でこんな事になったの?!」

ばばぁは振り返って俺達を睨み付けた。

その眼は俺達を無言で責めていた。

「静斗!」

司の声がした。

振り返った俺の目に飛び込んできたのは真っ青な顔をした司と美佐子さんだった。

「麗華は?!」

「手術自体は成功らしいけど・・・目を覚まさないと何とも言えないってさ・・・」

美佐子さんは俺の腕を掴んだ。

「舞ちゃんをお願い・・・司ちゃん、連れて行ってあげてくれる?」

額に手を当てて俯く美佐子さんの目からは涙が零れていた。

「舞華は?」

俺の言葉に司は答えようとしなかった。

嫌な予感がした。

まさか舞華にまで何かあったんじゃないかと思った。

双子は不思議な絆で繋がってると聞いていたからだ。

どうか俺の思い過ごしであってくれ・・・。

俺はそう願わずにはいられなかった。


救急車に乗せられた麗華を見送った直後、舞華が倒れた。

再び呼ばれた救急車に乗せられ、麗華と同じ病院に搬送された。

私は舞華に付き添うと言って救急車に乗り込んだ。

静斗が付いて行くと言ったが警察がそれを許してはくれなかった。

麗華のあんな姿を見れば誰だってショックだ。

特に舞華にとっては半身だ。

私の耳に舞華の悲痛な声がこびり付いていた。

あんなに大きな声を出せたのかという驚きと、聞いている人間までもが胸を引き裂かれるような感覚に陥ったあの声・・・。

舞華はなかなか目を覚まさなかった。

病室の扉がノックされて美佐子さんが顔を出した。

「舞ちゃんはどう?」

「まだ目を覚ましません。相当ショックだったんでしょうね」

私は小さく呟いた。

「麗ちゃんは?」

「今、手術中です。多分赤ん坊は・・・」

麗華の腹に刺さってたナイフを思い出して私は拳を握り締めた。

「・・・そう・・・」

美佐子さんは死んだような目をしていた。

当然だ。

この人にとって二人は大事な子供だ。

「舞ちゃん・・・目を覚まして・・・」

舞華が目を覚ませば麗華も目を覚ますかもしれないと思ったのだろうか?

美佐子さんは舞華の顔を撫でながら何度も呟いた。

「舞ちゃん・・・お願い、目を覚まして・・・」

舞華の顔を美佐子さんの涙が濡らす。

私は黙ってその場に居る事しか出来なかった。

暫くして舞華の手が小さく動いた。

「舞華?」

私の声に舞華が目を開けた。

その目はどこを見ているのか分からない。

ただ生気のない目で天井を彷徨っていた。

美佐子さんは慌てて涙を拭った。

「舞華、私が分かるか?」

舞華の視線が私とぶつかった。

「舞華・・・大丈夫か?」

舞華が口を動かしたが声は出てこない。

「舞華・・・?」

何度も口を動かしながら舞華の顔は次第に青ざめていった。

「舞華・・・お前声が・・・?」

私の耳の中で舞華のあの叫び声が反響していた。

舞華自身パニクってるようだ。

「舞華、落ち着け!手話だ、声にならないなら手で話せ」

私は舞華の手を握り締めた。

『目の前が真っ赤で・・・色が分からない。声も出ないの』

「司ちゃん?」

美佐子さんが不安そうに私を見ていた。

「目の前が・・・真っ赤で色が分からないと言ってます・・・声も・・・出ないって・・・」

ショックだった。

あの悲痛な舞華の声だけが私の脳裏で反響していた。

美佐子さんは舞華を抱きしめた。

『麗ちゃんは・・・?』

「今・・・手術中だ」

詳しい状況は訊きに行かなきゃ分からない。

「訊いてくるからここに居ろ、いいな?」

私は立ち上がって病室の扉を開けた。

「待って、私も行くわ。舞ちゃんここで待っててね?」

美佐子さんの言葉に舞華は小さく頷いた。

「静斗!」

手術室の前に派手な集団が居た。

一目でGEMのメンバーだと分かる。

その中に憔悴しきった理事の姿もあったが、この緊急事態に細かい事は構ってられない。

手術中の赤いランプは既に消えていた。

「麗華は?!」

「手術自体は成功らしいけど・・・目を覚まさないと何とも言えないってさ・・・」

美佐子さんが静斗の腕を掴んだ。

「舞ちゃんをお願い・・・司ちゃん、連れて行ってあげてくれる?」

額に手を当てて俯く美佐子さんの目からは再び涙が零れていた。

舞華の前では涙を堪えていたのかもしれない。

「舞華は?」

病室に向かう途中、静斗が訊いてきた。

しかし、私には答えることが出来なかった。



ご覧頂きありがとうございます。


舞華にまで異変が・・・。

精神的なものでこういった状態になることはよく聞きます。

双子というのは姉妹とか家族とかよりも、もっともっと深く繋がってる気がします。


☆次回更新12月24日です☆

イヴなのに内容、全然明るくないです。

すみません。

ごめんなさい。

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