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GEM《ジェム》  作者: 武村 華音
74/130

激変(舞華&信也)


何だか今日は控え室の空気が違います。

2人から発せられている幸せオーラ。

結城と静斗の間にも穏やかな空気が流れています。

ライブハウスの控え室に到着した私達は上機嫌な麗ちゃんを見て驚いた。

信也さんにぴったりとくっ付いて満面の笑顔を見せている。

一体何があったのだろう?

「麗華」

司が声を掛けた。

「司、舞ちゃん」

振り返った麗ちゃんは凄く幸せそうに見えた。

「何か良い事あったの?」

私は麗ちゃんに尋ねた。

麗ちゃんはふふふっと笑うだけで答えてくれない。

「会ってからずっとこの調子だ」

静が呆れながら私の許にやって来た。

「信也も幸せオーラ出しまくってるしね」

若林さんが苦笑した。

・・・私にはいつも通りの信也さんに見えるんだけど・・・。

二人にとって良い事があったのは喜ばしい事だと思う。

信也さんは結城さんとスケジュールの調整をしている。

麗ちゃんは私達の許にやって来ると、私と司の腕を掴んで耳元でそっと告げた。

「昨日婚姻届書いたの。都合つけて出しに行こうって♪」

麗ちゃんが「ひゃあっ」と言いながら恥ずかしそうに両手で顔を覆った。

「そうか・・・よかったな」

司は麗ちゃんの頭を優しく撫でながら微笑んだ。

「うん」

その時の麗ちゃんの顔は今までで一番綺麗だと思った。

「おめでと」

幸せそうな麗ちゃんに私は微笑んだ。

こんな幸せそうな麗ちゃんを見たのは初めてだった。

私まで幸せな気持ちになった。

久しぶりに控え室の中が和やかな空気に包まれていた。

皆も笑顔だ。

「英二遅いね」

若林さんの言葉で私は彼が居ない事に気が付いた。

綾香さんもいない。

「遅くなった、悪い」

金森さんと綾香さんが遅れてやって来た。

「遅かったな、どうした?」

「人身事故で電車が停まってたから、タクシーで来た」

どこか出掛けていたらしい。

私達が乗ってきた電車は動いてたから。

綾香さんと金森さんが控え室の和やかな様子に気付き私の許にやって来た。

「舞華、今日何か空気が違わないか?」

確かに静と結城さんが同じ室内に居ても緊迫した様子はないけど・・・。

「たまには和やかなのもいいんじゃないですか?」

私は「ねっ」と司を見上げて微笑んだ。

司も微笑みで返してくれた。

こんな時間がこれからずっと続いてくれれば良いと思った。

「GEMちょっといいか?今日の演奏なんだけど」

結城さんの声にメンバーが振り返り結城さんの許に向かう。

私達女性陣はその打ち合わせの様子をただ見つめていた。


ライブはいつも以上に盛り上がっていた。

伯母さんはGEMのプロモーション活動に余念がない。

ライブハウスの入口にあるモニターでGEMのABELでのライブ映像を流し、周囲にその存在を知らせていた。

当日券はあっという間に売り切れたらしい。

曲目の変更はどうやらその映像の曲を入れるためらしい。

「じゃ、張り切っていきますか」

涼が立ち上がって身体を伸ばした。

俺達は拳をぶつけ合ってから控え室を出た。

俺達の後ろから麗華達が付いて来る。

明日、少しだけ集合時間を遅らせてもらった。

朝一に出しに行こう。

俺はそう考えていた。

麗華は昨日から笑顔の大安売り状態だ。

振り返ると笑顔の麗華と視線がぶつかった。

思わず微笑み返す。

「何やってんだよ、今日の信也鼻の下伸び過ぎ」

静斗に珍しくツッコミを入れられた。

それでも俺は真顔に戻す事など出来なかった。

「勘弁してくれよ。その顔でタイコ叩くなよ」

静斗の言葉に涼と英二が笑った。

「そんなヘマはしない」

「どうだか・・・」

ステージ裏で小さな掛け声と共に再度拳をぶつけ、俺達はステージに上がった。

たくさんの歓声が俺達を迎えた。

この緊張感が俺は好きだ。

ここではローディがセッティングを済ませてくれる。

静斗と英二が軽く音を出して確認すると、俺達のステージが始まった。

六曲の予定だったが、アンコールが掛かって更にもう一曲演奏した。

「調子良かったんじゃないか?」

ステージを降りた俺達に結城さんが手を叩きながら微笑んだ。

この人の言葉だと最大級の褒め言葉なのだろう。

俺達は上機嫌で控え室に戻った。

自分達でも今日のライブの出来は最高だったと思う。

メンバーで盛り上がっていると急に舞華が控え室を飛び出した。

「舞華?」

静斗が顔を顰めた。

「麗華がいない・・・!」

静斗の言葉に部屋の空気が一瞬にして凍りついた。

控え室には一緒に入って来た。

そこまでは俺も確認している。

いつの間に出て行ったのか全く気付かなかった。

俺達は一斉に立ち上がった。

「手分けして探すぞ」

英二が緊張した面持ちで告げた。

「全員携帯持って行けよ!」

静斗はそう言い残して控え室から出て行った。

舞華を追ったのだろう。

まだ、他のバンドのライブが行われている中、俺達は麗華を探すために施設内を走り回っていた。

俺達は安心し過ぎていたのかもしれない。

ABELではないから、と・・・。

麗華が大人しくしているから、と・・・。



ご覧頂きありがとうございます。


ほんわかムードが一変しました。

事態が急変します。


79話で終わるはずが・・・キリよく80話になっちゃいました。

取り敢えず前編はあと6話。

後編は・・・少し時間ください。


☆次回更新12月20日です☆

気の重いクリスマスにさせてしまいそうです。

先に謝っときます。

すみません、ごめんなさい。


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