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GEM《ジェム》  作者: 武村 華音
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麗華(静斗&信也)


部屋に帰った二人は何だか・・・変です。


アパートに戻った俺はコンポの前に座って、舞華の浮かない顔を見ながら考えていた。

舞華は何が不安なんだろう?

麗華の何が心配なんだろう?

麗華よりも自分の心配しろよ。

お前の方がずっと弱いだろ。

「静?私の顔・・・何か付いてる?」

ずっと見つめられていた事に気付いた舞華が恥ずかしそうに尋ねた。

「別に・・・見てちゃ悪いか?」

「え、あ・・・そうじゃないんだけど・・・緊張する・・・」

緊張?

「変な奴」

「変って・・・」

舞華は困惑した表情で珈琲の入ったカップを持って来た。

俺は笑いながらCDをコンポに入れて電源を入れた。

俺の隣に腰を下ろした舞華は曲が流れ始めると黙り込んだ。

曲を聴いているわけではない。

何か考え込んでいる。

「舞華・・・お前、何が不安なんだ?」

俺にはよく分からなかった。

確かに家族だし姉妹だし大事なのは分かる。

双子だから余計なのかもしれないけど・・・それでも自分の事以上に気にしてるのはどうしてなのか・・・俺には理解できなかった。

「静は・・・麗ちゃんはどんな子だと思う?」

舞華が持ったカップの中で氷がカランと軽い音を立てた。

「麗華は・・・能天気で学校嫌いでいい加減で男好きで・・・でも甘えん坊で変なトコ真面目で、ひとつの事にのめり込むと周りが見えなくなる」

舞華は俺の言葉を聞いて苦笑した。

「麗ちゃんはね・・・本当は凄く弱いの。私なんかよりもずっとずっと心が脆いの。だから自分を傷付けるの・・・一人が寂しくて、だからたくさんの人と付き合って・・・自分の居場所を探してたんだと思う。麗ちゃんが学校に来なくなったのも不良って言われるようになって仲が良かった友達が離れていって、学校で孤立しちゃったからなの・・・辛かったんだと思う」

舞華の口から麗華の話を聞くのは初めてじゃないだろうか?

麗華が弱い?

俺の目の前に居た麗華は誰よりも我が儘で女王様だった。

そのギャップに俺は素直に頷けなかった。

「信也さんはずっと小さい頃から見てたから本当の麗ちゃんを分かってくれてると思うの。凄く麗ちゃんを大事にしてくれるし、心配してる・・・静は麗ちゃんの耳見た事ある?」

麗華の耳?

「ない・・・な」

意外だな・・・。

「麗ちゃんの両耳・・・穴だらけなの。ルーズリーフみたいにいっぱいリングが付いてて、見てる方まで痛くなるくらい、直視できないくらい・・・穴だらけなの」

想像しやすい例えだな。

「軟骨は確かに痛いらしいな」

俺も聞いたことがある。

「麗ちゃんは優しいから人に当たれなくて、自分を傷付けるの」

「俺には随分喧嘩売ってきたぞ?」

いつだって怒鳴りあってたぞ?

「GEMの皆に我が儘なのには私も驚いたけど・・・きっと甘えてるんだと思う」

あまり好ましくない甘え方だな・・・。

「・・・で?お前は何が不安なんだ?」

舞華はまだ答えてない。

「麗ちゃん・・・自分であの男の人を探すかもしれない」

信也も英二も結城の野郎も言った筈だ。

「結城の野郎が釘刺したって言ってたじゃねぇか」

舞華は俯いたままカップの中の珈琲を見つめていた。

小刻みに珈琲が揺れている。

「あの時・・・私が外に出なければこんな事にはならなかったのに・・・結城さんが来るまで家の中に居たら・・・」

小さく吐き出された言葉で俺は初めて気が付いた。

舞華は自分を責めている。

舞華のせいなんかじゃないのに・・・。

俺は舞華の頭をそっと抱き寄せた。

我慢していた涙が舞華の目から溢れ、俺のTシャツに染みを作った。


マンションに帰った俺達はシャワ−で汗を洗い流した後、クーラーから噴き出してくる冷風の前で涼んでいた。

麗華はずっと何かを考えている。

どうせろくな事じゃない。

「麗華・・・お前おかしな事考えてないよな?」

俺は確認するように麗華に尋ねた。

「おかしな事って何?言ってみなさいよ?」

こうやって聞き返す時点で何か考えてるのは確かだ。

「・・・なぁ麗華、俺がドラム叩き始めたのいつからだか覚えてるか?」

俺は話を変えた。

どうせ素直に話してくれる訳がないからだ。

「いつだっけ?叔父さんにドラムセット買って貰ったんだよね・・・あ、中一だ!違う?」

麗華が思い出したように答えた。

「正解、中一のクリスマス。何でそんなもん買って貰ったと思う?」

理由なんて単純なんだけどな・・・。

「え?やりたかったからじゃないの?」

・・・麗華は覚えてないらしい。

「はずれ」

「えぇ〜?何?何で何で?」

麗華は俺の服を引っ張りながら駄々っ子のように地団駄を踏んでいる。

「お前がカッコいいって言ったから。あの頃のお前はWhoってバンドのドラムに惚れ込んでただろ?」

俺は麗華を見下ろしながら微笑んだ。

「そうなんだぁ・・・信也はその頃から私が好きだったんだ?」

麗華は俺に抱きつきながらクスクスと笑った。

「あぁ、俺はずっとお前だけを見てた」

嘘じゃない。

ずっとお前だけを見てきた。

「そのわりにいろんな女と付き合ってたみたいだけど?」

痛いトコを突くな・・・。

「そりゃ・・・小学生のお前を抱けるわけないだろ」

「誰でも良かったの?」

「あの頃は学習期間だ。お前初めての時辛くなかったろ?」

違う意味で辛かったとは思うけど。

「まぁね・・・」

麗華を初めて抱いたのは俺だった。

麗華がどんな気持ちで俺に抱かれたのかは分からない。

「あの頃、お前がカッコいいなんて言わなかったら俺はドラムなんか叩いてない。興味もなかっただろうな」

今の俺が居るのも、あいつらと知り合えたのも、M・Kと契約できたのも全部麗華のお蔭なんだ。

俺は麗華を抱きしめながらそっと耳に唇を滑らせた。

最近は増えてない・・・。

高等部に上がった直後に舞華から話を聞いて、無意識に確認する癖がついた。

ピアスホールが増えた事に気付いた時は出来るだけ麗華の傍に居るようにしていた。

他の男の許にも行かせなかった。

麗華はいつも何があったのか話そうとはしない。

だから俺は気付かないふりをしながら傍に居る事しか出来なかった。

「お前が居なきゃ俺は廃人だ」

「大袈裟だよ」

「お前は俺のガソリンだからな。お前が居なくなったら俺は動けなくなる」

だから無茶な事すんな。

危ない事しようとすんな。

俺は麗華の腹に手を当てながら唇を重ねた。

四ヶ月になろうとする麗華の腹はまだ膨らみも分からない程度だ。

「不思議だね」

「ん?」

「お腹の中に赤ちゃんが居るって・・・不思議」

麗華は俺の手にそっと触れながら微笑んだ。

「後半年もすれば会える」

「そうだね。楽しみだなぁ・・・」

汗の引いた俺達はリビングのソファに腰を下ろしながらまだ見ぬ赤ん坊の話に花を咲かせた。

麗華と赤ん坊の話をしたのはこの日が初めてだった。




ご覧頂きありがとうございます。


徐々に双子の暗い過去が明らかになっていきます。

舞華は自分を責めています。

麗華も自分を責めています。

お互いを思う気持ちが空回りしてる気がしなくもないんですが・・・。


☆次回更新12月12日です☆

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