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GEM《ジェム》  作者: 武村 華音
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宿題(舞華&静斗)

宿題の提出期限になりました。

舞華は静斗を何と呼ぶのでしょう?

いつものCD屋さんの前で彼が私を待っていた。

彼はいつもと変わらない。

先週の宿題の事を忘れてるのかもしれない。

私は少しだけ期待していた。

約一週間悩んだ。

彼をどう呼ぶか・・・。

どんなに考えても「静斗」「静斗さん」なんて呼べない。

男の人を名前で呼ぶなんて恥ずかしい。

信也さんは小さい頃からそう呼んでいたので抵抗はないんだけど・・・。

「舞華?」

彼が私の顔を覗き込んだ。

「は・・・はいっ!」

緊張した私の顔を見て彼が笑っていた。

「何考えてんの?」

「な・・・何でもないですっ」

ここがCD屋さんでよかった。

私の緊張した声が音楽に誤魔化されている。

「何かありました?」

「今日はないな」

彼はそう言って私に手を差し出した。

「行こうか」

彼の目を見ると私は逆らえない。

どうしてなのかは分からないけど。

差し出された手を私は掴んだ。

心臓が通常の倍以上のスピードで脈打つ。

彼に聞こえてしまうのではないかと思うほど大きな音を立てているようで、私は思わず胸を押さえた。

「舞華、具合悪いのか?」

彼が心配そうに私の顔を見る。

「大丈夫ですっ・・・!」

彼は怪訝そうな顔をしながらCD屋さんを出た。

「人に酔ったのか?今日人多かったし・・・」

彼は私が具合が悪いと勘違いしたようだった。

「だ・・・大丈夫です」

「お前、無理してないか?具合悪いなら無理に俺に付き合わなくてもいいぞ?」

彼の言葉に私はショックを受けた。

何でこんなにショックなのかは分からない。

「無理なんて・・・してません!」

そう言った瞬間、私の目から涙が零れた。

「ま・・・舞華?!」

彼が動揺した。

私も動揺していた。

自分の涙の意味が分からない。

「舞・・・お前おかしいぞ?どうした?」

彼は店の前にも拘らず私を抱きしめた。

その腕は優しくて私は彼の背中に手を回した。

離れたくなかった。

たくさんの人が行き交う中で私達は周囲にどう見られているんだろう?

微かにそう思ったけど私は彼の腕の中で少しの間泣いた。

「落ち着いたか?」

暫くして彼は私の頭を撫でながら顔を覗き込んできた。

「すみません・・・」

「今日は帰るか?」

「や・・・嫌です・・・!」

私は彼の服を握り締めた。

彼も驚いていたけど私自身も自分の言葉に驚いた。

彼は苦笑しながら私の肩に手を回し、家に向って歩き出した。

彼の家に着くと私はいつものように珈琲を淹れた。

「舞華、今日お前おかしいよ?どうした?」

彼はコンポの前に腰を下ろしCDを入れ替えながら私に言った。

私自身も今日の自分がおかしいことは分かってる。

でも、自分でどうしてなのか分からない以上説明なんて出来ない。

珈琲の入ったカップをテーブルに置くと、彼は私の腕を引っ張った。

私は彼の腕の中に倒れ込んだ。

「舞華、宿題覚えてるか?」

彼が私の耳元で囁いた。

私は小さく頷いた。

「私・・・男の人の名前で呼ぶの・・・恥ずかしくて出来ません」

彼は何も言わない。

「でも・・・新井さんのお名前・・・静かっていう字ですよね?」

「うん」

彼は私を抱きしめたまま頷いた。

「だから・・・シズカって呼んでもいいですか?」

悩んで悩んだ結果だった。

女の子みたいな呼び方なら恥ずかしくないと思った。

彼はクスクスと笑った。

「舞華が呼びやすいならそれでいい」

私を抱きしめる腕に力が込められた。

私が彼を見上げると彼の顔が近付いてきた。

「舞華、サンキュ」

そう言って彼の唇が私の唇に重なった。


宿題の期限である今日も俺はいつもの場所であいつを待っていた。

そして、いつもの会話の後いつものようにCD屋の中に入った。

今日のあいつは少しおかしい。

何故なのかは分からない。

「舞華?」

俺はあいつの顔を覗き込んだ。

「は・・・はいっ!」

緊張したあいつの顔を見て笑ってしまった。

「何考えてんの?」

「な・・・何でもないですっ」

明らかにおかしい。

「何かありました?」

「今日はないな」

俺はそう言ってあいつに手を差し出した。

「行こうか」

差し出された手にあいつが掴まると俺は出口に向って歩き出した。

ふと、気になって振り返るとあいつが胸を押さえている。

「舞華、具合悪いのか?」

心配になって尋ねた。

「大丈夫ですっ・・・!」

納得できないけどとりあえず店を出ることにした。

「人に酔ったのか?今日人多かったし・・・」

人気アイドルのCD発売日だったらしく店内はいつもよりも混んでいた。

「だ・・・大丈夫です」

「お前、無理してないか?具合悪いなら無理に俺に付き合わなくてもいいぞ?」

本音ではないけど、あいつの身体の方が心配でそう言った。

「無理なんて・・・してません!」

あいつがそう言った瞬間に目から涙が零れた。

「ま・・・舞華?!」

女が泣いても気にしないはずの俺が動揺してしまった。

「舞・・・お前おかしいぞ?どうした?」

俺は店の前にも拘らず舞華を抱きしめた。

その辺の奴らに舞華の泣き顔を見せるのが嫌だったからだ。

もしかしたら信也が居るかもしれないとは思ったけどその瞬間は忘れていた。

「落ち着いたか?」

暫くしてあいつの頭を撫でながら顔を覗き込んだ。

「すみません・・・」

「今日は帰るか?」

「や・・・嫌です・・・!」

俺はあいつの言葉に驚いたけどあいつ自身も自分の言葉に驚いたようだ。

俺はあいつの肩に手を回し、家に向って歩き出した。

家に着くとあいつはいつものように珈琲を淹れた。

「舞華、今日お前おかしいぞ?どうした?」

珈琲の入ったカップをテーブルに置いたのを確認して俺はあいつの腕を引っ張った。

あいつが俺の腕の中に倒れ込んだ。

「舞華、宿題覚えてるか?」

あいつの耳元で囁いた。

「私・・・男の人の名前で呼ぶの・・・恥ずかしくて出来ません」

却下されたのか・・・?

俺はちょっとショックだった。

「でも・・・新井さんのお名前・・・静かっていう字ですよね?」

「うん」

俺はあいつを抱きしめたまま頷いた。

「だから・・・シズカって呼んでもいいですか?」

俺は初めて女みたいな字を付けた親に感謝した。

「舞華が呼びやすいならそれでいい」

あいつを抱きしめる腕に力を込めた。

俺を見上げるあいつの顔が可愛くて俺は吸い寄せられた。

「舞華、サンキュ」

あいつにキスをした。

その日初めて深いキスをしてしまった。

そんな事で喜ぶ俺って中学生か・・・?

情けない・・・。

でも、ちょっと進歩。

ご覧頂きありがとうございます。


舞華も考えましたね。

女の子みたいな呼び方なら確かに呼びやすい。

そして「好き」という感情になんとなく気付いて落ち着かないみたい・・・。

今まで静斗をどんな目で見てたんだろう?

キス魔の友人?

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