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GEM《ジェム》  作者: 武村 華音
67/130

白状(舞華&信也)


ライブです。

出来はどうだったんでしょう?

そりゃ愚問ですね・・・すみません。

機嫌が悪かったのが嘘のようにGEMは完璧に近い演奏を披露した。

「つまらんな」

結城さんが私の隣で呟いた。

「つまらないって・・・」

「面白くないね、酷評して凹ましてやろうと思ったのに」

結城さんって実は凄く意地悪なんじゃ・・・?

「どうだ結城!文句あるか?!」

静がステージを降りて来て結城さんに勝ち誇ったような笑みを向けた。

「明日のレコーディングでもその位できりゃいいんだけどな。ブースに入ると大人しくなる輩が多いし・・・ま、君を見てると無駄な心配かもしれないけど」

何でそんな言い方をするんだろう。

素直に褒めてあげればいいのに・・・。

「し・・・静、タオル」

私は二人の間に割り込んで静にタオルを手渡した。

静は私の手首を掴んで引き寄せた。

「しっ・・・静?!」

静の腕の中にすっぽりと埋まってしまった私は、あまりの恥ずかしさにその腕から逃げ出そうと必死に抵抗したが無駄な事だった。

「もう帰ってもいいぜ、舞華は俺が連れて帰るんだし」

静は私を抱きしめる腕に力を込める。

「そうはいかない、美佐子に任されてるからな」

「じゃあ俺も一緒に送って行けよ、あんたの車四人乗りだっただろ?」

静の考えている事は分からないけど・・・口を挟まない方がいいらしい。

「よく見てるな」

「あんな嫌味な車乗っててよく言うぜ」

静は吐き捨てるように言ってわたしの肩に手を回して結城さんに背を向けた。

顔を上げるとGEMメンバーが呆れるように静を見ていた。

「何だよ!」

怒鳴る静とは対照的に、メンバーは落ち着いた口調で返す。

「面白いくらい余裕ないんだね」

若林さん、余裕って何のですか?

そう思っても聞ける雰囲気ではないので言葉には出来ない。

「今更だろ」

「見てるほうが恥ずかしいぜ」

信也さんと金森さんが苦笑していた。

いえ・・・私も充分恥ずかしいです・・・。

信也さんの隣に麗ちゃんの姿はなかった。

麗ちゃんは綾香さんと少し離れた所に立っていた。

静を刺激しないようになのかもしれないけど・・・。

「結城さん、麗ちゃん達と・・・」

私が口を開いた瞬間、結城さんは人差し指を口元に当てて小さく頷いた。

結城さんが最後尾を歩きながら私達は控え室に向かった。

「麗華、今日は大人しく帰るからな」

控え室に着くなり信也さんが振り返って麗ちゃんに告げた。

「え〜っ打ち上げ出ようよぉ」

麗ちゃんの言葉に控え室の空気が固まる。

気付いていないのは麗ちゃんだけらしい。

信也さんの服を摘んで甘えた声でお願いしている。

そして隣で今にも怒鳴りそうな顔をしている人物が・・・。

「し・・・静、ジュース買いに行こう。ね?」

私は静の腕を引っ張って控え室を出た。

自動販売機の前までやって来ると静が私の手を振り払った。

「お前も聞いただろ今の麗華の発言?!あれでいいのか?あいつにはきちんと話して理解させた方がいいに決まってるだろ!」

静の言う事は尤もだと思う。

「でも・・・麗ちゃんのお腹には赤ちゃんがいるし、心配させたくな・・・」

「それでお前まで危ない目に遭うんだぞ?!それを黙って見てろってのか?!」

「危険な目なんて・・・」

「ふざけんな!」

静がベンチを蹴飛ばした。

真剣に怒っている静を見たのは今日が初めてかもしれない。

「僕も静斗の意見に賛成かな」

若林さんの声がした。

振り返ると若林さんが苦笑しながら近付いてきた。

「今日の麗ちゃんを見てると黙ってるのはどうかなって思ったよ。さすがに僕も苛々した」

温厚な若林さんが・・・?

「舞ちゃんの気持ちも分かるけど、麗ちゃんにはきちんと話して状況を理解してもらった方がいいよ」

若林さんは私の頭を優しく撫でて自動販売機に硬貨を投入した。

でも、私は心配だった。

知ってしまった麗ちゃんがどんな行動に出るのか、もしかしたら自分で探そうとするんじゃないかって・・・。

「舞ちゃんは何が不安なの?」

振り返った若林さんは私に尋ねてきた。

「え?」

「凄く不安そうだから」

缶コーヒーを三本抱えた若林さんはその一本を私に差し出した。

「もしかしたら・・・麗ちゃんが自分で探そうとするんじゃないかって・・・危ない事しちゃうんじゃないかって・・・」

麗ちゃんの性格だもの、人に迷惑を掛けたって分かったらそうやって解決させようとするんじゃないかって・・・。

「麗ちゃんってそういうトコあるよね・・・」

若林さんは困ったように額を擦った。

「ちゃんと約束させりゃいいじゃねぇか。あいつだって身重なの位自覚してんだろうし」

静はそう言うと、若林さんの持っている缶コーヒーを一本奪ってプルトップを引いた。

私はそれでも素直に頷く事は出来なかった。


控え室に残された俺達の周りには重々しい空気が流れていた。

「ねぇ、打ち上げ行こうよぉ」

麗華は相変わらず俺の服を握りながら上目遣いでお願いしている。

さすがに俺も苛々してきた。

「いい加減にしろ!帰ると言ったら帰るんだ、さっさと支度しろ!」

麗華の手を振り払って俺は麗華を睨み付けた。

「何でそんなに怒るのよ!それなら頼まないわよ!私一人で出るからいいもんね!」

背を向けた麗華の肩を掴んで、俺は麗華の頬を引っ叩いた。

「信也!」

綾香が俺の腕を掴んだ。

「何で叩かれなきゃならない訳?!」

麗華は頬を押さえながら俺を睨み上げる。

「麗華ちゃん、最近自宅周辺に変なのがうろついてて麗華ちゃんを探してるんですって。皆貴女が心配なの、分かって?」

綾香が白状した。

そうするしかなかったのかもしれない。

「どう言う事よ?何で私を探してるって分かるの?誰がそれを聞いたの?」

麗華はこういう時だけ勘がいい。

頬の痛みを忘れたように麗華は両手で俺の服を握り締めた。

「舞ちゃんじゃないわよね?お母さん?」

舞華であって欲しくないというのは分かる。

だが・・・。

「・・・舞華だ」

まっすぐに見つめられた俺は嘘を吐けなかった。

「何で黙ってんのよ!」

麗華が手を振り上げて俺の頬を叩いた。

「麗華、落ち着け」

黙っていた英二が麗華の手を掴んで俺と麗華の間に立った。

「舞華がお前に言うなって言ってたから黙ってた」

「皆は知ってた訳?!」

麗華は俺達を睨みつける。

「・・・すまん」

「信じらんない!何で黙ってたのよ!」

「舞華は静斗のところに避難してるし、ここに来る時も結城さんが連れて来たし心配は要らない」

「そういう問題じゃないでしょ!」

麗華は英二の襟首を掴んだ。

「落ち着け妊婦」

英二は麗華の手をギュッと握ってから優しく叩き、麗華の手を襟首からそっと引き離した。

「黙ってた事は悪かった。でも、舞華の気持ちも分かってやれ。あいつもお前と腹の子の事を心配して話さなかったんだ」

英二の言葉に麗華は俯いて拳を握り締めた。

「頼むから無茶すんなよ」

麗華のリストバンドに視線を移した英二が真剣な眼で言った。

「無茶って何よ?」

「犯人探しをやろうなんて考えるなって事だ」

その時微かに麗華の肩が震えたのを俺は見逃さなかった。

「とにかく一人の身体じゃないんだ、無茶はやめてくれ。俺達のためにもさ」

英二は優しく麗華の頭を撫でると控え室を出て行った。

「麗華、頼むから犯人探しなんかすんなよ」

俺の声に再び麗華の肩が震える。

「大人しくしてろって?そんなの・・・」

「君は腹の子の事考えてりゃいい、M・Kで何とかする。GEMも契約した以上うちの商品だ」

傍観していた結城さんが口を挟んだ。

「美佐子が心配してる、GEMにも舞華にもM・Kにもこれ以上要らん心配は掛けるな。申し訳ないと思うなら俺達の話を聞け、一人で動き回るな、犯人探しなんて馬鹿な真似はするな、その三つは守れ」

結城さんはテーブルの上に乗っていた英二の煙草に手を伸ばすと、そこから一本拝借して火を点けた。

「偉そうに・・・社長でもないくせに」

「これでもGEMのディレクターだ。売り出す前に商品が傷物になると困るんだよ。足を引っ張るような真似はするな。君の勝手な行動がGEMにもM・Kにも舞華にも大きな損害を与える事になる。しっかり頭に叩き込んどけ」

素直じゃない人だ。

確かに今の言葉に嘘はないんだろうが、さっきの男を追い掛けた時の結城さんを見れば本当に心配してるのは分かる。

自分と腹の子の事だけを考えろと言っても無駄だと思ったんだろう。

会ったばかりだというのに凄い洞察力だと思う。

結城さんと視線がぶつかると、彼は俺にウィンクした。

任せろと言う事なんだろうか?

俺は取り敢えず軽く会釈して返した。


ご覧頂きありがとうございます。


とうとう麗華に話してしまいました。

麗華はキレました。

さてさてどうなる事やら・・・。


舞華の“完璧に近い演奏”ってのが微妙ですよね。

何か引っ掛かったのかもしれませんが、絶対音感の耳は妥協しないと言う事なのでしょうか。

やっぱり音楽に厳しい舞華です・・・。



☆次回更新12月6日です☆


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