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GEM《ジェム》  作者: 武村 華音
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恐怖(舞華&拓斗)


夏休みの自宅で寛ぐ舞華。

そこにやって来たのは・・・?


念のため「拓斗」というのは「結城さん」です。


自宅で過ごす夏休み。

私は洗濯物を干して掃除を終えたところで、暫し贅沢な時間を楽しんでいた。

好きな音楽を聴きながらのティータイム。

冷房の効いた部屋の中でアイスアップルティを作ってマドラーで掻き混ぜる。

氷のカラカラという音が心地いい。

コンポのスイッチを入れてお気に入りのアーティストの音楽を流す。

こういうまったりとした時間が凄く好き。

「さすが音の魔術師・・・」

流れてきた音に思わず呟いた。

聴いているアルバムのプロデュースをしていたのは結城さんだった。

GEMのプロデュース・・・か。

やっぱり結城さんがやった方がいいんじゃないのかな。

先日プロデュースの話を聞かされてから溜め息ばかり。

こういう仕事は向いてないと思うんだけどな・・・。

あぁ・・・気が滅入ってきた。

過度の期待が私のストレスになる。

お母さんはそれに気付いてるのかいないのか・・・。

私は冷たいフローリングの上に寝転んだ。

「私なんかがやってもいいのかな・・・?」

どうやら選曲を間違えたらしい。

他の人がプロデュースしたアルバムを聴くべきだったな・・・。

深い溜め息を漏らした時、携帯電話が鳴った。

掛けてきたのは静。

私は身体を起こして携帯を開いた。

「もしもし?」

『舞華か?』

「うん、どうしたの・・・?」

『今日ライブやるから来いよ』

今日?

「え?予定なかったんじゃ・・・?」

『なかったけど美佐子さんが手配したらしい。初めての場所だ』

初めての場所じゃ分からないんだけど・・・。

『美佐子さんが迎えをやるって言ってたぞ』

お母さんが?

でも、迎えって・・・?

「わ・・・分かったけど、迎えって・・・誰?」

『知らない』

「え?」

『移動中だから切るぞ。あとでな』

電話はあっという間に切られた。

「もぅ・・・どうしろって言うの・・・?」

私は困惑していた。

まぁ、お母さんが迎えを手配してくれるなら安心だけど・・・でも、やっぱり静と一緒に行きたかったな・・・。

私は再び溜め息を吐いた。

分かってた事なんだけど・・・。

私はグラスをシンクに置き、出掛ける準備を始めた。

GEMのライブを観れるのは嬉しいのに、どうしても寂しさを感じてしまう。

静はお母さんと一緒なのかな・・・?

羨ましいな・・・。

私は寂しさを弾き飛ばすように頭を振って考えるのをやめた。

出掛ける準備を整えた私は戸締りの確認をしていた。

ふと外を見ると見知らぬ男性が門の前に立ってこちらを窺っていた。

知らない人をお母さんが迎えに遣す訳がないから、お迎えの人ではないと思うけど・・・。

私は玄関を開けて門に向かった。

「あの・・・何か御用でしょうか・・・?」

男性は私の顔を見るとニッコリと微笑んで勝手に門を開けた。

「麗華、やっぱりここに居たんだ?」

麗華・・・?

「あ・・・あの私は・・・!」

男性は私の腕を掴んだ。

「最近お誘いないから来ちゃったよ。髪戻したんだ?」

お誘いって・・・?

「あの・・・!わ・・・私麗ちゃんじゃ・・・!」

この人・・・恐い・・・!

私は俯きながら力いっぱい抗った。

「舞華!」

誰かが私を呼んだ。

「お前、舞華に何の用だ?」

顔を上げるとそこには結城さんが立っていた。

「結城さん・・・!」

私は一瞬緩んだ男性の手を振り解いて結城さんに駆け寄った。

「麗華、その男誰?」

やっぱり麗ちゃんって言ってる・・・。

「お前、自分の惚れた女も見分けられないのか?」

冷ややかな眼で結城さんが男性を見ていた。

「舞華、準備して来い。その間に片付けとくから」

結城さんに背中を押され、私は家の中に逃げ込んだ。

震えが止まらない・・・。

恐かった・・・。

私は玄関の鍵を掛けてその場にしゃがみ込んだ。


「お前、誰だよ?」

「お前に名乗る必要もない。好きな女も見分けられない馬鹿な奴に名乗っても無駄だ」

俺は男から視線を逸らす事無く答えた。

「麗華の新しい男か?」

麗華・・・確か舞華の双子の妹だよな・・・?

何してんだ、麗華って奴は?

「お前が捕まえてたのは麗華じゃない。そんなんでよく付き合えてたな」

双子だからって間違えるか?

そこまでそっくりなのか?

でも、惚れてたら間違うわけないだろ?

「麗華じゃない・・・?」

「あぁ、人違いだ。あれは姉の方、お前の探してる女じゃない」

男は玄関をじっと見つめていた。

危険な男だと直感した。

麗華ってのはもしかすると相当遊んでたな?

面倒臭い男捕まえやがって・・・。

美佐子に報告するべきだろうな。

「他を当たれ。ここに麗華は居ない」

男はそれでも動こうとしない。

俺は男の胸元を掴んだ。

「二度とここに近寄るな。舞華と麗華の区別もつかない奴がこの周辺をうろつくな。次は警察に突き出すからな、覚えとけ!」

乱暴に男から手を放すと男は地面に転がって俺を見上げた。

案外気の弱い奴らしい。

眼が脅えている。

「まだ何か言いたいことでもあるのか?」

俺が男に再び手を伸ばすと、男は俺の手を振り払って逃げて行った。

俺は男が見えなくなるまで睨みつけてから玄関に向かった。

「舞華、俺だ結城だ。開けてくれ」

俺は玄関の扉を叩いた。

「舞華、大丈夫だから。とにかくここから離れるぞ」

カチッという音が聞こえた。

俺は玄関のノブに手を掛け扉を開いた。

足元に真っ青な顔でしゃがみ込んでいる舞華がいた。

「舞華、荷物はどこだ?」

「・・・リ・・・」

カチカチと舞華の歯がぶつかる音がする。

「リビングか?」

俺は舞華を玄関に座らせてリビングに向かい、ソファの上にあるバッグとカーディガンを持ってすぐに舞華の許に戻った。

「舞華立てるか?」

脅える舞華を支えながら玄関の鍵を掛けて、車の助手席に座らせた。

さっきのは充分なほどの恐怖体験だったに違いない。

舞華は自分の身体を抱きしめるようにして震えている。

俺はさっさと運転席に乗り込みその場を離れた。

何だか嫌な予感がしていた。



ご覧頂きありがとうございます。


舞華と麗華を間違えた男・・・。

誰なんでしょう?


「髪、戻したんだ?」


麗華は現在、茶髪のグラデーション ローレイヤーにパーマ掛けてます。

結構頻繁に髪型を変える。

飽きっぽいのかな・・・?

舞華は黒髪のストレート。


男の台詞から麗華にもそんな頃があったという事が分かりますね。


☆次回更新11月24日です☆

もう11月も後半か・・・。

今年も残り少なくなったなぁ・・・。

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