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GEM《ジェム》  作者: 武村 華音
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感嘆(舞華&静斗)


さぁ、夏休みです。

二人は二度目の夏を迎えました。

高校生活最後の夏休み。

なのに私は学園内で追試を受けていた。

寮から逃げ出している間に期末試験が行われ、私は当然ながら全教科受けていなかった。

「お前が追試を受ける事になるとは思わなかった」

先生方が口を揃えたように同じ言葉を吐く。

私は黙ってその言葉を聞くだけで何も答えなかった。

麗ちゃんは信也さんのところに帰っている。

時々お母さんが様子を見に行き病院に付き合ってるらしい。

「舞華」

背後から掛けられた声に肩が震える。

「はい」

私は振り返って声の主を見た。

そこに居たのは叔母であり、この学園の理事である高井戸 百合だった。

「訊きたい事があるの、ちょっといいかしら?」

叔母様の声には今までの威圧感は感じられない。

「はい」

訊きたい事といえば一つしかない。

叔母様は理事室の扉を開け、入るように促した。

「信也と・・・麗華の事だけど・・・」

やっぱり・・・。

「今・・・三ヶ月だと母から聞いています」

おそらくその一言で充分に理解してくれる。

「そう・・・」

叔母様は大きな溜め息を吐いた。

でも、その顔は哀しそうではあるが笑みを浮かべていた。

「叔母様・・・?」

「舞華・・・私はどうしたらいいのかしらね?」

私は首を傾げた。

「世間体を考えるなら堕ろせと言うべきなんでしょうけど、二人にそんな事は言えない・・・身内に甘いって言われるかしら?」

叔母様は窓の外を眺めながら弱々しく呟いた。

「叔母様・・・」

「初孫なのよ・・・そんなに簡単に切り捨てられないの・・・」

叔母様は世間体を取るか自分の素直な喜びを取るかで悩んでいるように見えた。

「叔母様自身はどうなさりたいんですか・・・?」

「孫に・・・会いたいわ」

人間らしい一言だった。

「それでいいんじゃないでしょうか・・・?」

それじゃ駄目なんですか?

「いいのかしら・・・?」

私は鞄から携帯を取り出した。

「舞華、学園内にそういうものは持ち込んではいけないと言ったはずよ?」

叔母様が急に理事の顔になった。

「学園内では電源を切っています。それに私では叔母様を安心させてあげられませんから」

私はお母さんに電話を掛けた。

『もしもし、舞ちゃん?』

「今、大丈夫・・・?」

お母さんは驚いているようだった。

『どうしたの?何かあったの?』

「叔母様の相談に乗ってあげて欲しいの」

私にはどう答えていいのか分からないから。

私は携帯を叔母様に差し出した。

「舞華・・・?」

「お母さんです、どうぞ」

私は叔母様に携帯を握らせて、部屋の隅にある電気ポットの方に向かった。

叔母様とお母さんの話を聞く事もない。

お母さんの言う事は分かってるし、叔母様がどうしたいのかも分かったから聞く必要もない。

私はお茶を淹れながら二人の会話が終わるのを待った。

「舞華」

叔母様が私に歩み寄り、携帯を返してきた。

その顔は驚くくらい穏やかだった。

「麗華は退学処分にするわ」

自主退学ではない。

「そうですか」

お母さんと話した結果なのだろう。

私は叔母様にお茶を差し出し鞄を持って扉に向かった。

「貴女だけは・・・卒業して頂戴」

「はい」

私は叔母様にお辞儀をして理事室を出た。

不快指数の高い外気に触れながら寮に向かう私の足は軽かった。

叔母様が麗ちゃんを責めるような言葉を吐かなかったのは初めてだった。

たったそれだけの事が私には嬉しかった。


舞華が追試を受けるせいで午前中から会うことは出来なかった。

今日は午後二時に待ち合わせだ。

いつもの場所に着いた俺は周囲の音を遮るように音楽を聴いていた。

イヤホンから聞こえてくる音楽に、足が無意識にリズムを刻む。

何気なく見ていたテレビで見つけたバンドの曲だ。

聴き入ってると舞華の顔が急に現れた。

「うわっ・・・!」

俺は慌ててイヤホンを片方外した。

「何聴いてたの?」

舞華は気にする事なく俺の外したイヤホンを自分の耳に当てた。

「あ・・・ドルチェだ」

舞華が知っているとは思わなかった。

「知ってるのか?」

「うん、全部持ってる」

舞華がどんなCDを持っているのか俺は知らない。

「このアルバムもいいけど、デビューアルバムの方が音がいいと思う」

舞華はそう言ってイヤホンを俺に返してきた。

気のせいか舞華は機嫌がいいように思えた。

「舞華、何かいい事あったのか?」

音楽を止め、イヤホンを外して舞華に尋ねた。

「今日ね・・・叔母様に会ったの」

何であのばばぁに会って機嫌がいいんだよ?

「叔母様・・・麗ちゃんの妊娠知って困ってたの」

素直に喜べないところがあのばばぁらしいというか何と言うか・・・。

でも、だから何で舞華が機嫌よくなるんだ?

分からない・・・。

「叔母様の初孫になるの。叔母様も産んで欲しいみたい」

ほぉ・・・人間らしい考えも出来るんだな。

「麗ちゃん学園を退学させられる事になったの」

ま、当然だろうけどな。

っていうか今まで退学にならなかった事がスゴイと思う。

「喜ぶお前が俺には分からないんだけど?」

「だって、産んでもいいって事なんだよ?世間体を気にする叔母様がいいって言ったんだよ?」

そう言う事か・・・。

俺は舞華の頭を抱き寄せて微笑んだ。

「静?」

「お前らしいな」

「それにね、麗ちゃんを罵る事もなかったの。それが一番嬉しいの」

舞華はそう言って微笑んだ。

その顔がとても綺麗で俺はキスをしたい衝動に駆られた。

「はいはいお客さん、ここでイチャつかないでねぇ。注目の的になってるわよ〜」

箒で俺の背中を突くのは間違いなく綾香だ・・・。

「てめぇ・・」

「あんたねぇ、少しは周囲を気にしたら?見て御覧なさいよ、あんた達すごい注目を浴びてるわよ?」

周囲を見渡すと、確かに見られてた。

「だから?」

俺には関係ない。

「羞恥心てものない訳?」

「あったらバンドなんかやってらんねぇよ」

「英二はあるんだけどねぇ。あんたが欠如してるだけでしょうが」

俺が髪を掻き上げながら綾香を見ると、綾香は腕を組みながら俺を睨んでいた。

「舞華ちゃん、コイツやっぱりやめたほうがいいと思うわ」

舞華に視線を移すと真っ赤な顔で俯いていた。

「あんたがよくても舞華ちゃんは相当恥ずかしいのよ?惚れてるならそれくらい配慮してあげたらどうなの?」

返す言葉もない。

「だから俺様だって言われるのよ。人の事なんか全く気にしてないし自分が良ければそれでいいんでしょ?」

好き勝手に言いやがって・・・!

「綾香さん・・・それは・・・違うと思います・・・」

舞華が綾香の袖を掴んだ。

「・・・あ、ごめん。舞華ちゃんの好きな男を貶し過ぎたわね」

「静は・・・ちゃんと人の事考えてます・・・みんなの事・・・ちゃんと大切に思ってるんです・・・」

真っ赤な顔で俺を庇ってくれる舞華がとても愛おしかった。

「舞華、部屋行こうか?俺お前の事・・・うっ!」

俺の言葉を遮るように綾香の拳が鳩尾に入った。

「てめっ・・・!」

「いい加減にしなさいっ、公衆の面前で何を言うつもりだったのよ?」

綾香の顔が怒りなのか俺の言葉を予測してなのか真っ赤になっていた。

舞華は意味が分からなかったらしく一人オドオドしていた。

その様子も可愛らしかった。

しかし・・・綾香に止めてもらわなきゃとんでもない言葉を口走っていた事は確かだ。

俺は少し考えてから発言する方法を身に付けた方がいいらしい・・・。



ご覧頂きありがとうございます。


叔母様大人しくなっちゃいましたねぇ・・・。

自分で書いていて何ですがそれ以外のコメントがし辛いです・・・。

しんどいなぁ・・・色々な意味で・・・。


☆次回更新11月18日です☆

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