修復(司&麗華)
司と麗華が一緒にライブに行かなくなったのか。
こんな事情があったようです。
「お前、麗華の心配より自分の心配しろ。追試だろ?」
舞華の自宅で寛ぎながら私は舞華の頭を軽く叩いた。
「期末試験受けてないだけの追試だもの、心配ないよ」
舞華は苦笑した。
確かに。
舞華は成績優秀だ。
いつもトップクラス。
ほぼ毎回私と上位を競っている。
気が付いてるのかいないのか・・・。
「麗華は大丈夫だ、美佐子さんに任せておけ」
人生の大先輩で麗華のよき理解者だ。
「ねぇ、司は何で麗ちゃんとライブに行くのをやめたの?」
急にそういう質問を投げるな・・・。
私は困惑した。
麗華とライブに行かなくなったのは・・・。
麗華も私の男だと知らなかったし仕方ないんだが・・・。
「答えにくい質問だな。拒否権発動」
「ズルイ」
「ズルくない」
「今日だって麗ちゃんと話さなかったし」
「話す事がないからだろ」
まったく何なんだ?
「麗華の男癖の悪さから察しろ」
私はそう言って髪を掻き乱した。
舞華は首を傾げた。
お前には難しいか・・・。
私は舞華の理解を諦め、溜め息を吐いた。
「でも、誤解するなよ。私は今でも麗華と友達のつもりだ」
「よかった・・・それだけが気になってたの」
舞華は嬉しそうに微笑んだ。
多分舞華は私が麗華と連まなくなった事が気になっただけで、理由なんかどうでもよかったんだろう。
「ただいまぁ!」
美佐子さんの声がした。
「おかえりなさい、麗ちゃんも一緒なんだね」
舞華は立ち上がり玄関に顔を覗かせた。
「そうよ〜今日は女だけで楽しく過ごしましょ・・・あら、司ちゃんも居たのね♪」
リビングに入って来た美佐子さんは妙にご機嫌だ。
その背後に戸惑う麗華が居る。
私がいるとは思わなかったんだろう。
「お邪魔してます」
「新井君に頼まれたんでしょ?」
「あ、まぁ・・・」
それだけじゃないけど・・・。
この人も麗華と違う意味で理解できない。
・・・というよりも、菊池家の人間は基本的に理解できない。
舞華は顔が正直だから苦労しないけど。
「麗華、大丈夫か?」
「あ・・・うん・・・」
麗華は私と視線を合わせようとしない。
「麗ちゃん、司は麗ちゃんが心配でついて来てくれたんだよ。そういう対応は失礼だと思う」
「誰も・・・!」
「司が興味本位とか同情とかで動かない人だって知ってるでしょ?そういう言い方良くないよ」
舞華が珍しく麗華を睨んだ。
レアな場面だ。
しかし・・・麗華の心配してるのを見破られているとは・・・。
口にした記憶はないんだが・・・。
「舞華、麗華の体の事考えてやれ」
取り敢えず喧嘩はやめてくれ。
相手は妊婦だぞ。
って言うか舞華は理解出来てるんだろうか?
「司・・・ちょっといい?」
麗華がついて来いと言いたげにリビングを出て行った。
「ちょっと行って来る」
「仲直りできるといいね」
「だから、喧嘩したつもりはないと言っただろ」
あの男とは麗華が絡まなくても終わってた。
女癖の悪さは呆れるほどだったからな。
ちゃんと手を切ったのが半年前というだけだ。
気まずさはあったが麗華を恨む事はなかった。
悪いのは女癖の悪いあの男だからな。
そうは言っても麗華に避けられていたのは事実だし、私も話し掛けなくなってたんだが・・・。
これは・・・喧嘩なのか・・・?
家に帰ると話し声が聞こえた。
懐かしい声。
司だ・・・。
「おかえりなさい、麗ちゃんも一緒なの?」
明るい舞ちゃんの声。
「そうよ、今日は女だけで楽しく過ごしましょ・・・あら、司ちゃんも居たのね♪」
お母さんは司がお気に入りだ。
私も司は好きだけど・・・。
司は多分私の事嫌ってる。
「お邪魔してます」
「新井君に頼まれたんでしょ?」
「あ、まぁ・・・」
静斗と仲がいいなんて知らなかった。
付き合いがなくなってから知り合ったのかな・・・?
「麗華、大丈夫か?」
司が私に声を掛けてきた。
「あ・・・うん・・・」
どんな対応をしていいのか分からない。
視線を合わせることも出来ない。
謝らなきゃいけないんだろうけど・・・どうしたらいいんだろう・・・。
目を合わせるのが恐い・・・。
「麗ちゃん、司は麗ちゃんが心配でついて来てくれたんだよ。そういう対応は失礼だと思う」
「誰も・・・!」
「司が興味本位とか同情とかで動かない人だって知ってるでしょ?そういう言い方良くないよ」
舞ちゃんが珍しく怒ってる。
当然か・・・。
舞ちゃんにとっても司は親友だもんね。
「舞華、麗華の体の事考えてやれ」
司が舞ちゃんを諭す。
司も私の妊娠知ってるんだ・・・。
軽蔑されちゃうかな。
誰の子だろう、とか考えてるのかな・・・。
そんな事よりも・・・先ず謝るべきだよね。
私もいつまでもこんな状態でいるのは嫌だ・・・。
「司・・・ちょっといい?」
私は司を呼んで部屋に向かった。
司は私と舞ちゃんの部屋も知ってる。
長い付き合いだから。
泊まりに来た事もあるし。
私は部屋に入ってベッドに腰を下ろした。
「入るぞ?」
司が扉を開けて入って来た。
何から話そう・・・。
あ、取り敢えず謝らなきゃ・・・。
「つか・・・」
「麗華」
私の言いたい事が分かったのか司が言葉を遮った。
「私を侮辱する気がないなら謝ろうなんて思うな」
司は私に近付くと優しく私の頭を撫でた。
「私は今もお前の友達のつもりだ」
嬉しかった。
司からこんな言葉聞けるなんて思ってなかった。
「お前達双子は泣き虫だな」
司が苦笑した。
「泣いてなんか・・・あれ・・・?」
自分で気付かない間に涙が零れていたらしい。
「舞ちゃんの泣き虫が感染っちゃったのかな・・・?」
「そんなもん感染るか、馬鹿」
司の態度はあの頃と同じだ。
「体・・・大事にしろよ。信也の子だろ?」
「・・・うん・・・誰の子?って訊かれるかと思った」
「そんな事訊くか、馬鹿」
「馬鹿に馬鹿馬鹿言わないでよ」
「馬鹿に馬鹿と言わずに誰に馬鹿と言えと言うんだ?」
確かに馬鹿だけどさ。
司は私を見て笑った。
「体調悪いなら仕方ないが、大丈夫なら下で話そう。美佐子さんが居るから徹夜になるだろうけどな」
私の頭をクシャクシャと撫でて背を向けた。
「司・・・ありがと」
「こっちこそサンキュ」
司は背中を向けたまま手を振って部屋を出て行った。
「本当、かっこいいんだから・・・女にしておくの勿体ないなぁ・・・」
私は小さな声で呟いた。
ご覧頂きありがとうございます。
女同士の友情って1回ひびが入ると修復がとても困難。
時間は掛かったけれど二人の関係が修復できて一安心です。
どうやってバレたのかはご想像にお任せします。
司の事だから修羅場という感じではないと思いますケド。
友人を恨まずに男を恨む。
これも司らしいと思いません?
☆次回更新11月16日です☆