表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
GEM《ジェム》  作者: 武村 華音
56/130

選択(信也&静斗)


麗華が妊娠・・・。

信也はソレを知って何を選択するんでしょうか?

GEMメンバーは・・・?

妊娠・・・?

俺は麗華を見下ろした。

「黙っててごめん・・・今朝検査したら陽性だったの」

麗華は困惑した顔で答えた。

最近あまり顔色が良くなかったのはそういう事だったのか・・・。

「何で朝言わなかった?」

「だから・・・ごめんって」

コイツはもしかしたらとんでもない事考えてたんじゃないのか?

「お前堕ろす気じゃないよな?」

微かに麗華が震えた。

やっぱり・・・。

「産めよ、俺大学辞めて働くから」

「だから嫌なの!来年卒業なのに何でそんな事簡単に言うの?!」

麗華が久しぶりに怒鳴った。

「当然だろ、お前と腹の子を養うためには働かなきゃ・・・」

「そんなだから!・・・そんなだから堕ろそうかなって考えるんだよ!何で分かってくれないかな?!」

伯母さんが麗華の前にしゃがみ込んだ。

「麗ちゃんは信也君に卒業して欲しいのね?」

麗華が小さく頷いた。

「絶対に信也は大学辞めるって言い出すと思ったから・・・だから、赤ちゃんは諦めようかなって・・・」

何言ってんだよ・・・?

「好都合かもね」

伯母さんは麗華の頭を優しく撫でると立ち上がり、俺に振り返った。

「M・Kと契約しない?そうすれば収入は約束できるし、大学も諦めずに済むわ」

伯母さんには驚かされるばかりだ。

「今日は舞ちゃんに誘われてきたのよ。それがどういう意味か分かる?」

俺は首を傾げた。

分からないからだ。

「舞ちゃんがGOサインを出したって事なのよ」

俺は麗華と顔を見合わせた。

「貴方達がサインすればすぐにだって活動を広げることが出来るわ。それなりの収入も見込めるし、悪い話じゃないと思うけど?」

伯母さんの話はありがたい。

でも、俺の一存では決められない。

「伯母さん・・・」

「皆と話し合って一週間以内に返事を頂戴」

伯母さんはそう言って麗華の身体を起こした。

「一緒に来なさい。一度診てもらった方がいいわ」

麗華も大人しく伯母さんに従う。

俺は黙って二人の背中を見送った。

「信也さん・・・」

蚊の鳴くような小さな声がした。

振り返ると舞華が立っていた。

「聞いてたのか?」

「ごめんなさい・・・」

「舞華。心配すんな、俺もちゃんと考えるから。それよりも、俺達の音・・・大丈夫なのか?」

「うん、それは保障する。だから・・・」

舞華は動揺しながらも麗華と俺の心配をしてくれている。

「舞華、俺は麗華が嫌がるような事だけはしない」

舞華の表情が少しだけ明るくなった。

俺は舞華の頭を撫でて控え室に向かった。


信也が控え室に戻って来た。

一人で。

「悪い、麗華は伯母さんに連れて行ってもらった」

体調悪そうだったしな。

信也の様子が明らかにおかしい。

「信也、話したい事あるんじゃないの?」

勘のいい涼が口を開いた。

「今日・・・伯母さんが・・・菊池美佐子が来た理由分かるか?」

俺は敢えて口を開かない。

多分、英二と涼に訊いてるからだ。

「俺達の音の事じゃないのか?」

英二が答える。

「契約しないかって言われた。大学に通いながらの活動で構わないらしい」

予想はしていたが、ここまで反応なく話を聞くバンドもいないかもしれない。

めちゃくちゃ反応薄っ・・・。

「で?」

涼が先を促す。

「お前達の意見を訊きたい」

プロになりたかった筈の信也の顔が冴えないのが気になった。

「俺はお前に従う。リーダーはお前だ」

英二は煙草に火を点けながら答えた。

「僕も英二と同じだよ、静斗は?」

綾香と司も含め五人の視線が俺に向けられた。

「舞華は認めてる。だから今日美佐子さんを呼んだ」

俺は涼の言葉に答えた。

「俺はお前の判断で構わないと思う。相手は大手だし、舞華の母親が経営する会社だ。不安要素はないだろ」

信也は小さく頷いた。

「信也、お前が言いたいのはそれだけか?違うだろ?」

今訊くべき話じゃないのかもしれない、でも話して欲しかった。

「麗華が・・・妊娠した」

「え?」

英二だけが驚いていた。

綾香はさっき麗華と居たから聞いたのかもしれない。

涼は多分野生の勘だろう。

俺も何故か、やっぱりと思う程度だった。

司が俺の肩を叩いて控え室を出て行った。

この話し合いの中、出て行けないのを察してくれたんだろう。

「そのせいもあるのかもしれない・・・すまない」

「前進するのに何謝ってんだよ。ほら、全員一致だ。さっさと電話しろよ」

俺は煙草を取り出し火を点けた。

これ以上意味の分からない謝罪なんか聞きたくない。

信也は部屋の隅で携帯を操作し始めた。

「静斗、何でわざわざこの場で麗ちゃんの事聞きだしたの?」

涼が俺の銜えた煙草を横取りして尋ねた。

「別に・・・」

あいつ一人で悩ませたくなかったからだ。

間違った決断しそうだし。

「優しいね静斗」

「蕁麻疹の出そうな事言うな」

「自分の事は話さなかったくせにね〜」

綾香が俺の頭の上に肘を乗せた。

俺とは事情が違うだろ。

「てめぇ俺は肘掛じゃねぇぞ!」

綾香の肘を払って綾香を睨む。

「ま、放っといたらあいつ大学辞めそうだしな」

英二が呟いた。

それもある。

あいつは麗華のためなら簡単に辞めてしまえる奴だ。

大学も・・・GEMも・・・。

「GEMだって辞めそうだよね。静斗がこの場で話させたの、そう思ったからでしょ?」

まったく・・・涼には敵わない・・・。

「まぁな・・・」

「静斗のくせに頭の回転速いじゃない」

「綾香、てめぇ・・・!」

俺が振り返った瞬間ドアをノックする音が聞こえた。

「静斗、舞華連れて帰ってもいいか?」

司が顔を覗かせた。

「舞華がどうかしたのか?」

「いや、ちょっと動揺しててな」

「司、お前舞華の家泊まれるか?」

「あぁ、構わん」

「じゃ、頼むわ」

「OK〜」

相変わらず自由人だな。

「静斗、あの司って子誰?ってか何?」

綾香が疑わしげに俺の顔を覗き込む。

「舞華の親友でここの常連」

「あれ、女の子なんだ?声もハスキーだし男かと思ったわ」

「綾香・・・」

綾香の言葉に英二が溜め息を吐いた。

さすがに分かるだろ・・・。

その言い方じゃ司が気に入らなかったのか?

「でも、何で仲良しなの?」

涼が尋ねてきた。

「あいつが舞華を逃がしたんだよ。それからの付き合いだ。二回うちにも来たしな」

三人は納得したようだ。

「涼、英二、静斗」

信也が俺達を呼んだ。

「一週間後、M・Kの事務所に行く事になった」

GEMが本格的に動き出した・・・。

もう後戻りは出来ない。

「本当にいいのか?」

「「「今更」」」

俺達は信也の不安げな顔を見て、笑顔で中指を突き立てた。



ご覧頂きありがとうございます。


GEMの絆って強いなぁ・・・。

つくづくそう思います。

この関係が凄く羨ましい。

GEMはこのまま変わらないで欲しいなぁ・・・。

そう願わずにはいられません。


☆次回更新11月14日です☆


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ