表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
GEM《ジェム》  作者: 武村 華音
53/130

不安(舞華&静斗)

金曜日。

以前のようにCD屋さんの前で待ち合わせ。

でも・・・何か違うんです。

金曜日。

久しぶりに静といつもの場所で待ち合わせ。

「舞華」

静の声が聞こえた。

外で見る静は本当に目立つ。

GEMはライブをやる度にファンを増やしてるし、今も周囲の視線をかなり浴びている。

多分気のせいなんかじゃない。

静が少し遠い人に思えた。

「・・・お待たせ」

複雑な心境のまま言葉を発した瞬間、静が顔を顰めた。

「どうした?」

何でこうも敏感なんだろう・・・。

「静・・・すごく見られてた・・・ううん、見られてる。GEMが有名になってきた証拠かなって思って」

苦笑するしかなかった。

静達の動員数は鰻登り。

それはGEMが自分達の音を持っているからなんだと思う。

先日観に行った練習で私は驚きを隠せなかった。

以前と比べものにならないほどに音が安定していた。

「舞華、俺は俺だぞ。有名でも無名でも関係ないし、お前から離れるなんて考えられない。俺の言葉だけじゃ不安か?」

静は何でこんなに分かってくれるんだろう。

私は静の手をぎゅっと握った。

「ありがと・・・」

私達は久しぶりに二人でCD屋さんに入った。

「舞華ちゃんっ」

綾香さんの声。

「今日デートの日だから気になってたのよ。良かった、来てくれて」

綾香さんも心配してくれていたのかもしれない。

静と笑顔で話す綾香さんを見ていると何だか安心した。

手の届くところに静が居ると思えるから・・・。

「明日のライブは来るんでしょ?」

綾香さんが私に尋ねてきた。

明日・・・?

「あ・・・話してなかった」

一ヶ月間黙ってたからなのかな・・・?

静は私を見て苦笑していた。

「司誘ってみろよ?」

「うん、訊いてみる。あとお母さんにも」

「美佐子さん?」

「うん、観て欲しいから」

GEMの音が変わったから。

もう大丈夫だと思うし・・・。

プロの中でも希少なパーソナルトーンというものをGEMは持ってる。

彼等は絶対に有名になる。

海外でも通用するようなバンドになる・・・。

手の届かない人になるかもしれない。

それでも彼等の夢だから・・・私は応援するしかない。

「うぉっ!舞華、新譜出てるぞ!」

静は嬉しそうにプロエの新譜を手にとって私に見せた。

「聴きたいだろ?買って部屋で聴こうぜ」

「そうだね」

私は静に微笑んだ。

綾香さんは何となく冴えない顔で私を見ていた。


舞華は会った時から何となく様子がおかしかった。

何でなのかは分からない。

「舞華、お前何かおかしいぞ?」

何だか不安そうだ。

信也の母親に何か言われたのか?

「そう?そんな事ないんだけど・・・」

無理に聞き出すのが恐いと思うのは俺が舞華に惚れているからなんだろうな。

「司来るのか?」

「うん、大丈夫みたい。さっきメールがきてた」

舞華は珈琲を淹れて俺に差し出した。

コンポにCDを入れて俺はボタンを押した。

CDが流れ始めると舞華は聴き入っていた。

藤倉ふじくら 叶愛とあの声って本当に綺麗・・・」

舞華はプロエがお気に入りだ。

美佐子さんが連れて行ったライブハウスで舞華の心を奪った歌唱力と完成度の高い音。

美佐子さんの猛烈アピールで勝ち取ったM・K所属のバンドで、デビュー時二十代後半という遅咲きだ。

彼等のプロフィールは公開されていない。

M・Kは訳ありのタレントや歌手が多い事務所でもある。

「この人達も訳あり?」

「うん」

舞華は事務所の幹部役員だから当然知っている。

俺相手でも決して話さない。

当然か・・・。

「舞華、その・・・信也の母親とはどうだ?」

「大丈夫だよ、司や教頭先生が証人になってくれたお蔭で自由に生活出来てる」

証人・・・?

「寮に帰った報告をし司と理事室に行ったの。交際証明や勤務証明の話を司が教頭先生の前で確認してくれた」

司も侮れない女だ・・・。

証人、か・・・。

これであのおばさんも下手に動けない訳だ。

頭のいい女って敵に回したくないよな・・・。

でも、だとすると舞華が悩んでるのは別の話という事になる。

何を悩んでるんだ?

俺には全く分からない。

土日辺りからおかしい気がする。

結局話してくれないまま夜になり、俺は舞華を自宅に送り届けた。

珍しく家の電気が点いている。

美佐子さんが居るのかもしれない。

俺は自宅前で舞華を抱きしめて唇を重ねた。

「あら・・・」

小さな声が聞こえた。

唇を離し顔を上げると美佐子さんが立っていた。

俺は恥ずかしいなんて思わなかったので動揺する事はなかったが、舞華は俺の後ろに隠れた。

今更な気もするんだけど。

「お邪魔しちゃったわね」

「いえ、もう帰りますから」

俺は軽く頭を下げ、舞華を美佐子さんのほうに押して背を向けた。

「お帰り、舞ちゃん」

「ただいま・・・」

二人の声を背に俺が歩き出すと、気になる言葉が聞こえた。

「舞ちゃんが誘うって事は何か変化があったって事なのかしら?」

家の中に向かう美佐子さんの言葉に俺は足を止めた。

「明日・・・聴いたら分かると思う」

舞華は小さな声で答えていた。

明日って事は俺達の事であるのは明らかだ。

舞華が落ち込むほどの変化って何だ・・・?

俺達はいいと思っているが舞華の耳には気になることがあったのかもしれない。

寝不足になるくらい悩んだが結局答えは出なかった。



ご覧頂きありがとうございます。


舞華も静斗も悩んでます。

舞華の頭は複雑に出来てるんですかねぇ?

いっつも何かしら悩んでる気がします。


気温が一気に下がりましたねぇ・・・。

部屋の中は気温調整のために暖房が付けられました。

まだそこまで必要ないんじゃないか?

・・・と思うのは私だけなんですかね?

取り敢えず年内に一部完結目指して頑張ります!!




― 読者様からの質問 ―



>「GEM」って何?


カットして磨かれた宝石や宝玉を意味します。

信也が命名したようですけど・・・やっぱ、麗華を想いながらなんでしょうかねぇ?




☆次回更新11月8日デス☆

カレンダーの残りが気になる今日この頃です。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ