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GEM《ジェム》  作者: 武村 華音
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寮へ・・・(静斗&舞華)


高井戸 百合が負けて帰った後。

静斗と舞華の顔は冴えないままでした。

信也の母親が帰った後、俺の部屋は宴会場と化した。

深夜までドンチャン騒ぎで、さぞ近所迷惑だった事だろう。

こういう時、金髪に近いこの髪が役に立つ。

ヤンキーだと思われている俺に苦情が来る事はない。

こういうご時世だ。

見て見ぬふり、我関せずだ。

奴らを見送った後、舞華が俺に言った。

「私・・・帰る、寮に戻る」

舞華は宴会状態の部屋の中でずっと考え込んでいた。

そんな事だろうと薄々は感じていた。

「お前がしたいようにすればいい。俺はお前の意思を尊重する」

美佐子さんは俺に任せると言った。

俺は舞華に任せたいと思う。

舞華が望むようにすればいい。

ここから学校に通わせると、舞華の立場も悪くなるような気もしていた。

「確認してもいいか?」

「何・・・?」

「お前自身は大丈夫なのか?」

「うん。静が居てくれるもの。何かあったらここに来ていいんでしょ?」

なんて可愛いんだ・・・。

俺は舞華を抱きしめた。

「金曜のデート忘れんなよ?」

「うん」

「ライブやる時は来いよ?」

「うん、司も誘って行く」

帰したくないと思う気持ちと舞華の意思を尊重したいという気持ちがごちゃごちゃになっていた。

「時々は・・・泊まりに来いよ」

「うん」

舞華は小さな声で答えた。

正直に言ってしまえば、ずっとここに居て欲しい。

でも、それはあくまで俺個人の意見であって舞華のものではない。

舞華が帰りたいなら帰すしかない。

美佐子さんが脅してたし、そう簡単に舞華が閉じ込められたりする事はないだろう。

「明日・・・デートしようか?」

「明日って・・・練習の日じゃないの?」

舞華が顔を上げた。

「構わない」

「駄目」

舞華は真面目だ。

練習をサボらせるのは嫌なんだろう。

それならば・・・。

「練習・・・見に来るか?」

「うん」

舞華が笑顔になった。

翌日、俺は舞華を連れて貸しスタジオに行った。

入口にはメンバーが立っていた。

どうやら俺が一番遅かったらしい。

「舞ちゃん!見に来てくれたの?」

涼が駆け寄ってきた。

「今日は来ないのかと思った」

「来ないなら連絡するさ」

「だな」

英二は穏やかな顔で微笑んで、舞華の頭をな撫でた。

「ま、ゆっくり見ていけばいい。綾香も麗華もいるんだし、退屈はしないはずだ」

信也が舞華を見据えて薄っすらと微笑む。

「舞華ちゃんは預かるわね」

綾香と麗華が舞華の腕を掴んだ。

俺達はスタジオに入ってセッティングを始めた。

「良かったな」

英二がこそっと俺に言った。

「そうだな、堂々と出掛けられるのは嬉しいな・・・でも、舞華は明日寮に帰る」

信也が驚いたように俺を見ていた。

「舞華がそうしたいって言ったんだ。俺は舞華がしたいようにすればいいと思う。束縛はしたくない」

涼が俺の頭をクシャクシャと掻き乱す。

「悩んだ結果みたいだね、僕は静斗の考えも分かるよ。いいんじゃない?結局は舞ちゃんの問題だもんね。僕達が手伝える事って少ないし、舞ちゃんが助けて欲しいと思った時に助けてあげればいいんじゃないかな?」

涼の言う通りだ。

そう・・・悩んだ結果だった。

舞華を自由にしてやりたかった。

そのために出来ることなんて僅かだ。

学校に行く事、週一ペースで会う事、ライブに行く事。

舞華はそれ以上の何かなんて望んでない。

そんな気がした。

だから・・・俺は舞華が困った時に助けてやるだけでいいんじゃないかって思った。

舞華も吹っ切れたように笑っている。

俺が見たかったのはこの笑顔だ。

そのためなら我慢も協力も惜しまない。

それが俺の想い方なんだ―――――。


私は日曜日の夕方、ルチア寮の前に立っていた。

「舞華!」

私を見つけた司が駆け寄ってきた。

「ただいま」

私が微笑むと司は苦笑した。

「理事行ったんだろ?何か言われたのか?それとも静斗と喧嘩でもしたか?」

「ううん、何もないよ」

私はかぶりを振った。

「ま、お前の顔見たら理由なんてどうでもいいけどな」

司は深く追求してこなかった。

私の顔・・・?

「元気な顔してる。出て行った時とは雲泥の差だ」

私の手から大きなバッグを奪って司は寮の扉を開けた。

「お〜い、舞華が帰って来たぞ」

入口付近にいた寮生が一斉に私の方を向いた。

「菊池さん、お帰り」

「もう大丈夫なの?」

彼女達は私がいなくなった理由を知ってるのだろうか?

不思議そうに司を見上げたが、彼女は私に微笑むだけ。

出て行く前と何も変わらない部屋に入って私は安堵した。

「お前が居なくなった理由は皆何となく気付いてるが、それについて話す奴は居ない。仮に居たとしたら私がシメてやる」

私は苦笑した。

司は本当に強いから冗談に聞こえない・・・。

柔道と剣道全国大会出てた気がする。

「表向き、お前は体調不良で入院していたことになってる」

入院か・・・。

広い意味で捉えたら間違ってはいない気がする。

「効果的な薬のお蔭でお前も元気になったしな」

効果的な薬・・・?

「静斗」

私の顔が真っ赤になった。

「あの後寝たのか?」

「?毎日寝るのは当然でしょ?私は司みたいに徹夜なんか出来ないもの」

急に徹夜の話なんてどうしたんだろう?

司は苦笑した。

「お前とは直球じゃなきゃ話にならんな」

私にはその言葉の意味が分からなかった。

「で?お前はどうなったんだ?簡単でいい、説明してくれ」

司は急に真面目な顔で私に尋ねた。

「お母さんが勤務証明と交際証明を叔母様に提出したの。色々と約束してもらったから静に会うのも、ライブに行くのも堂々としていいって・・・」

「脅したのか?」

「・・・多分」

聞いてないけど・・・そんな気がする。

「美佐子さんらしいな」

司は大きな声で笑った。

司の笑顔にほっとする自分がいる。

「見たかったな、その時の理事の顔」

「司、悪趣味」

「悪趣味上等じゃないか。この学園の生徒は皆見たかったと思うぞ?」

司は本当に楽しそう・・・。

つられて微笑んでしまう。

帰りたくなかった筈の寮に私は帰って来た。

もう逃げたくなかった。

お母さんが叔母様に約束させてくれただけで充分。

ここまでしてもらったのに静の部屋に残るなんて出来なかった。

学校にも通うなら寮からじゃなきゃおかしいし・・・。

これ以上周囲に迷惑を掛けるなんて出来ない。

信也さんも今回の事で叔母様との関係が壊れてしまったんじゃないかと心配だった。

何かあったら静の所に逃げて行ける。

・・・けど、先ずは自分がしっかりしなきゃ。

ちゃんと自分の足で立たなきゃ・・・。

逃げ出す前の生活に戻るだけ。

叔母様の視線に脅える必要もない。

小さいようで大きな変化。

その事では、ほんの少しだけ心が軽くなっていた。

それよりも、新たな不安の種が芽を出している。

昨日と今日のGEMの練習を見て、不安が私を襲っていた。

私が感じてはいけない事だと分かってるけど・・・その不安は自分ではどうしようもない。

お母さんには話せない。

私はどうしたらいいんだろう・・・。


ご覧頂きありがとうございます。


舞華が寮に帰りました。

何で帰っちゃうかなぁ・・・。

って意見も多い事でしょう。

舞華も色々考えたようです。


☆次回更新11月4日☆

多分夕方〜夜の更新になります。

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