関係(信也&麗華)
信也と麗華の関係。
ちょっと普通のカップルじゃないらしい。
俺がバンドを始めたのは大学に入ってからだった。
音楽の趣味の合う奴らとなんとなく始めたバンドだった。
最初はコピーだったけど徐々にオリジナル曲を作りライブハウスでお披露目するようになった。
人付き合いの下手な四人組だったが、ライブハウスのオーナーに言われて打ち上げにも参加するようになってだいぶ交友関係も広くなったと思う。
しかし・・・そこには問題児が居る。
麗華だ。
あいつは中等部の頃から俺について来てライブを見るようになった。
遅くなると俺のアパートに泊まっていく。
当然男女の関係になるのも早かった。
だけど、あいつとって俺は彼氏ではないらしい。
あいつは他のバンドの男達とも関係を持つようになった。
俺じゃなくてもいいのか・・・。
俺はあいつに惚れていた。
だから何も言えなかった。
言えば俺のところに戻って来てくれないと思ったからだ。
情けない・・・。
あいつが高二に上がってすぐだったと思う。
麗華が舞華をライブに連れて来た。
舞華は俺に色々な音楽を聴かせてくれた女だ。
そして麗華の双子の姉。
内気で恥ずかしがり屋で赤面症で真面目で頭が良くて・・・。
考えれば考えるほど麗華と正反対・・・。
あいつは男の免疫は全くない。
交流があるのは家族親戚だけだ。
俺が知ってるのは祖父二人と菊池のおじさんと俺の親父と俺・・・くらいじゃないかと思う。
それなのに静斗が打ち上げに連れて来たらしい。
俺は麗華を追いかけていてそれどころじゃなかった。
そして気が付けば二人の姿はなかった。
あの静斗が舞華を連れて出て行ったと分かった瞬間、俺は舞華の身を案じた。
翌日聞いた話では何もせずに送っただけだと言われた。
念のために釘をさしておいたのに・・・。
あのライブの日からどの位経ってからかは覚えていない。
俺が友達と行きつけのコーヒーショップで音楽論議をしていると友達が俺を呼んだ。
「信也、あれお前の彼女じゃねぇ?」
俺が向けた視線の先には笑顔の舞華が居た。
舞と麗は双子だし一卵性。
麗がパーマをかけるまではそっくりだった。
外見は麗華の目の下の黒子で見分けていたようなもんだ。
舞華の隣で笑うの男は・・・静斗。
警戒心の無さから何度も会っている事が分かる。
今日、静斗が慌てて帰ったのは舞華に会う為だったのか・・・?
意外な反面納得も出来た。
あいつの周りに舞華みたいな女はいないんだろう。
「あいつは麗の姉貴だ」
「隣の男ってお前のバンドのギターだろ?」
「あぁ、この間ライブを見に来たからそれからの付き合いじゃないか?男女の関係じゃなさそうだけどな」
俺は友達の話を軽く受け流した。
手を繋ぐこともなく歩く二人を見れば身体の関係がないだろう事は簡単に推測できる。
だからと言ってそのまま放置する事は出来なかった。
日曜日麗華を家に帰した後、静斗の家に向った。
麗華には話せないからだ。
あいつは静斗に惚れている。
電気も点いていないし居ないようだ。
俺が携帯を取り出しあいつの携帯を鳴らそうとした時階段を上がる音がした。
「信也どうした?」
バイト帰りらしい静斗は俺を見て若干驚いた様子だった。
それでも俺を追い返すことなく玄関を開けて俺を家に招いた。
家の中は綺麗に掃除されている。
綺麗好きな女がこの家にやって来ているのは間違いない。
「・・・随分綺麗にしてるんだな」
舞華以外の女をここに招いているのか?
俺の口調は自分で分かるほどに厭味な言い方だった。
「あぁ」
あいつは肯定したものの語る気はないらしい。
「片付けてくれる奴が居るのか?」
「あぁ」
どうしても語る気はないらしい。
そう思った瞬間に脳裏に舞華が浮かんだ。
「お前・・・まさか・・・」
舞華を連れ込んでるのか・・・?!
「誤解すんな。舞華とは首から上の関係だ」
妙に慌てながらあいつが振り返った。
ここに来て掃除してるのは舞華らしい。
首から上の関係って・・・静斗が?!
俺は笑い出した。
手を出すなとは言ったがそれを守ってるとは思わなかった。
「お前がよく我慢できるな」
「拷問だぞ」
こいつは女に不自由していない。
しょっちゅう女を取り替えていた。
だから舞華をそういう対象で見て欲しくなかった。
「舞華の事本気なのか・・・?」
他の女の影はないようだが確認しておきたかった。
「あぁ、でなきゃこんな生殺し状態でいる訳ないだろ」
「だよな」
あいつは悩むことなく即答した。
「舞華は泊まるのか?」
「泊まってたら首から上の関係で済む訳ないだろ」
それもそうだ。
俺はクスクスと笑った。
静斗が一人の女に固執するのは初めてだ。
俺はもう何も言う事は無いと思った。
お互いの意思で会って、こういう付き合いをしていると思ったからだ。
でも、麗華にはこのまま話さないでおこうと思う。
静斗は麗華の気持ちに気が付いているのだろうか?
気になってもそれだけは訊けない。
分かったことは麗華の想いは決して実らないという事だけだ。
出来るだけ目立たない付き合いをするように忠告だけして帰ろうと考えたが、結局はあいつと舞華の話と音楽の話で飲み明かして酒の残った頭で大学に向うことになった。
その日の講義が頭に入らなかった事は言うまでもない。
舞ちゃんって真面目すぎると思う。
いっつも叔母さんの顔色を窺いながらビクビクと生活してるって言うか・・・。
可哀相だと思うけど、馬鹿じゃないかとも思う。
自分の人生楽しまなきゃ損だ。
だから私は好きなことを好きなだけやって生きていこうと思うの。
舞ちゃんは音楽が大好きなのにライブとか行った事がない。
理由は簡単。
校則違反になるから。
私は友達にドタキャンされたチケットを眺めながら舞ちゃんを誘ってみようと思った。
意外にも舞ちゃんは行くって言ってくれた。
舞ちゃんの耳は確かだと思う。
父さんも母さんも舞ちゃんの耳を信用してる。
だから悩んでるインディーズのCDを舞ちゃんに聴かせてプロデビューさせるかどうかの決断をする。
私は舞ちゃんにGEMの音を聞いて欲しいと思っていたし、いいチャンスだった。
舞ちゃんは隅の方で訊いていた。
あまりにも退屈そうで申し訳ないと思うほどに音楽を聴いていない。
救いようがないほどに下手らしい。
私でも上手いとは思えなかったし、仕方ないのかもしれない。
GEMの出番は最後だった。
演奏が始まると舞ちゃんの目が変わった。
グラスを握る指がリズムをとっている。
脈ありかも・・・!
私は嬉しくなった。
ライブが終わって舞ちゃんと控え室に向う。
ここに通い始めてもう二年以上経つ。
慣れたものでほとんどが顔見知りだし、肌を重ねたことのある男ばかり。
でも一番は信也だと思う。
信也との身体の相性は最高だ。
信也は二番目に好きな男。
一番好きな男は私を見ようともしない。
それでも構わない。
あいつの傍に居られるなら私はそれでいいと思う。
自分の気持ちを言ってもあいつといい関係になれるわけがないから。
舞ちゃんはあいつの裸を見て悲鳴を上げて腰を抜かした。
当然だ。
舞ちゃんは男の人に接する機会がないので当然話す事もなければも恋愛経験もない。
学校に居る貴重な男性教師も舞ちゃんのクラスの担当ではない。
そんな舞ちゃんにあいつが謝った時は驚いた。
まさかあいつが謝るなんて思わなかった。
私はその後打ち上げに顔を出して男を物色。
舞ちゃんの事を忘れていたんだけど・・・あいつと二人で出て行ったと聞いた時には舞ちゃんに嫉妬した。
月曜日に学校で訊いたら送ってもらっただけだと言うので安心した。
舞ちゃんは嘘を吐く子じゃないから。
舞ちゃんと静斗、似合わないよね。
私はそう思いながら今日も信也の腕の中に居た。
ここは私が一番落ち着く場所。
身体も心も満たされる。
他の男では得られない感覚。
あいつの事を考えなければ最高の場所だ。
ご覧頂きありがとうございます。
信也と麗華の視点からのお話でした。
遅れ馳せながら登場するバンド名は架空のものです。
あしからず・・・。
次の作品とかに登場する可能性はありますけどね☆