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GEM《ジェム》  作者: 武村 華音
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来訪者(舞華&静斗)


舞華が寮から姿を消して四日。

二人はどうしてるんでしょうか?

私が静の部屋に転がり込んで既に四日。

静はアルバイトを終わらせて夜遅くに帰って来る。

アパートの下でバイクが止まる音がした。

静が帰って来た・・・。

暫くして階段を上がってくる足音がして・・・鍵が開く。

「ただいま」

「お帰りなさい」

静が、玄関には出てこないようにって言ったので奥の部屋で彼を待つようにしている。

私に出来るのは夕飯を作って彼の帰りを待つくらい。

「ほら、これ」

バイトの帰り道に、スーパーに寄ってもらって買い物をして来てくれる。

「ありがと」

私はビニールに手を伸ばした。

その腕を掴まれ私は静の腕の中に倒れ込んだ。

「今日も無事に過ごせたな」

静も、私と同じで毎日不安なの?

「静・・・?」

私が顔を上げると静の唇が近付いてきた。

唇が触れる寸前にインターホンが鳴った。

私と静の肩が震える。

「ここに居ろ。大丈夫だから」

静は私に軽くキスをして玄関に向かった。

「お邪魔しまぁす!」

「おい!何しに来たんだよ?!」

姿を現したのは若林さん。

「あれ、舞ちゃん?何で?」

若林さんは不思議そうに静に視線を移した。

「色々と事情があるんだよ。絶対に誰にも言うなよ」

静は髪を掻き上げながら大きな溜め息を吐いた。

「この間から機嫌がいいと思ったら、こういう事ね・・・」

機嫌がいい?

静の・・・?

私は二人の様子を見て首を傾げた。

「久しぶりだね舞ちゃん。元気?」

若林さんが私に微笑んだ。

「はい、お久しぶりです」

私は静以外の人と久しぶりに話をしたように感じた。

「ご飯これからなの?僕もご一緒していい?」

私は若林さんの言葉に頷いた。

「・・・ったく・・・!」

静は溜め息を吐きながらコンポの前に腰を下ろした。

「で?今日は何の用だよ?」

「別に用なんてないけど?」

多分、若林さんは静の様子がおかしい事に気付いたんじゃないかなって思った。

若林さんは人の変化に敏感な人だから・・・。

「どうぞ」

若林さんにご飯を運んで、私は静に視線を移した。

「・・・静、お母さんと司に・・・連絡してもいい?」

バレるんじゃないかって思ったけど、このまま黙ってるのも良くない気がする。

お母さんは多分心配してる。

金曜日自宅に帰らなかったから・・・。

「お前の母親には俺から電話するから、杉浦って子にはお前から電話した方がいいかもな」

お母さんに静が・・・電話するの・・・?

「あ、携帯の電源はすぐ切れよ」

「うん・・・」

静は結構神経質なんだと思う。

私は携帯で司の携帯番号を確認して静の部屋の電話から司に掛けた。

「もしもし・・・司?」

『元気か・・・?』

「うん、迷惑掛けてごめんね・・・」

『こっちもだいぶ落ち着いてきた。でも、お前を探す手は緩めてないから気を付けろよ?』

「うん」

司の声に私は少しだけほっとした。

『そこにあの男は居るのか?』

あの男って・・・静の事だよね・・・?

「居るけど・・・?」

『代わってくれ』

私は首を傾げながら静に視線を移した。

「どうした?」

「司が静と話したいみたい・・・」

静は黙って立ち上がり受話器を握った。

私と若林さんは顔を見合わせて首を傾げた。

「もしもし新井です。先日はどうも・・・あ、はい・・・分りました・・・え?あ、そりゃバレなきゃ構いませんけど?」

「舞ちゃん座りなよ。先にご飯食べちゃおう」

若林さんは無理に聞き出そうとはしない。

そんな優しさが私をほっとさせる。

「青梗菜美味しい!」

「涼!お前先に食うなよ!」

電話を切った静が私の隣に腰を下ろし箸を握った。

私達は食事をしながら、久しぶりに音楽論議を楽しんだ。


舞華がやって来たからといって俺は生活リズムを変える気はなかった。

変えるとバレる様な気がしたからだ。

大学の講義を終えた俺はバイトに向かい、それが終わってから舞華に連絡を入れる。

「もしもし?今スーパーに着いた。何買ってけばいい?」

『今日の安売りって何?』

舞華は安い物を買って来いと言う。

しっかりした高校生だと思う。

俺は舞華の指示に従い、安売りの食材を購入しアパートに帰る。

「ただいま」

玄関の扉を閉めてから舞華に声を掛ける。

「お帰りなさい」

舞華は部屋の奥から返事をする。

玄関に出て来て誰かに見られたら大変だからだ。

窮屈な生活で申し訳ないと思うが、舞華が連れ戻される事を望まない以上、俺は細心の注意を払う。

帰って来て舞華の顔を見ると俺は安堵する。

今日も無事に過ごせた。

悪い事をして追われている訳ではないが、心境は指名手配の容疑者と同じかもしれない。

「ほら、これ」

俺は買い物袋を舞華に差し出した。

「ありがと」

舞華がビニールに手を伸ばした瞬間、その腕を掴み舞華を抱き寄せた。

「今日も無事に過ごせたな」

一日、二日ならこんなに不安にはならないだろう。

だが、土日を挟んで不安が大きくなってくる。

見つかるのは時間の問題だという事は分ってる。

それでも俺は出来る限り舞華を守りたいと思う。

「静・・・?」

舞華の唇に触れる寸前にインターホンが鳴った。

大きく肩が震える。

「ここに居ろ。大丈夫だから」

そう言って舞華にキスをして俺は玄関に向かった。

覗き穴は英二に悪戯されて油性ペンで真っ黒に塗られている為役には立たない。

玄関の鍵を開けた瞬間、扉が外部の人物に開けられた。

「お邪魔しまぁす!」

「おい!何しに来たんだよ?!」

姿を見せたのは涼。

驚きながらもほっと胸を撫で下ろす。

「あれ、舞ちゃん?何で?」

涼が不思議そうに俺に視線を移した。

「色々と事情があるんだよ。絶対に誰にも言うなよ」

俺は髪を掻き上げながら大きな溜め息を吐いた。

バレたのが涼でよかったのかもしれない。

「この間から機嫌がいいと思ったら、こういう事ね・・・」

英二にバレたら恰好のネタになってしまう。

涼は舞華に向き直り微笑んだ。

「久しぶりだね舞ちゃん。元気?」

「はい、お久しぶりです」

舞華も笑顔で答える。

俺以外と話をする事がなかった舞華にもいい気分転換になるかもしれない。

「ご飯これからなの?僕もご一緒していい?」

図々しい奴・・・。

「・・・ったく・・・!」

俺は溜め息混じりにそう言ってコンポの前に腰を下ろした。

「で?今日は何の用だよ?」

「別に用なんてないけど?」

本当にタイミングよくやって来る奴・・・。

「どうぞ」

涼に飯を運んで、舞華が俺に視線を移した。

「・・・静、お母さんと司に・・・連絡してもいい?」

さすがに気になってるようだ。

「お前の母親には俺から電話するから、杉浦って子にはお前から電話した方がいいかもな」

舞華の母親には俺から連絡をしなければいけない気がしていた。

明日にでも連絡して事情を説明しなきゃマズイかもしれない。

「あ、携帯の電源はすぐ切れよ」

「うん・・・」

舞華は困惑した様子で杉浦に電話を掛けた。

「もしもし・・・司?・・・うん、迷惑掛けてごめんね・・・うん・・・居るけど・・・?」

舞華が首を傾げながら俺を見た。

「どうした?」

「司が静と話したいみたい・・・」

丁度いい。

俺も聞きたい事がある。

「もしもし新井です。先日はどうも」

『こんばんわ杉浦です。用件だけですみませんが、舞華の両親の営む事務所の場所ご存知ですか?』

「あ、はい・・・」

何で事務所?

って言うか両親に話したのか?

『木曜日の夕方五時にお待ちしてます』

「分りました」

そう言うしかない。

『あ、それと私がそちらに伺ってもよろしいですか?やっぱり心配なんで』

「え?あ、そりゃバレなきゃ構いませんけど?」

舞華の友人だし心配だろうとは思うが・・・。

正直、断りたい。

でも、舞華を助けてくれた人物にそんな事は言えない。

『ありがとうございます。貴方には感謝してます』

俺は、ただ舞華を守りたいだけだ。

『今後ともよろしくお願いします』

「こちらこそ。落ち着いたら、またライブ来て下さい」

電話の向こうでクスッと笑う声が聞こえた。

「舞ちゃん座りなよ。先にご飯食べちゃおう」

涼が気を利かせたのか舞華を座らせて箸を握った。

俺よりも先に食うなぁ!!!

「それじゃ、また」

「青梗菜美味しい!」

涼が夕飯を食べながら大きな声で叫んだ。

『何だか楽しそうですね。貴方を信用してますが、あまり派手な行動は避けて下さいね』

涼の声が聞こえたようだ。

ま、会った時に釈明しよう・・・。

「分ってます。じゃ、失礼します」

電話を切って俺は振り返った。

「涼!お前先に食うなよ!」

久しぶりに舞華と音楽論議をした。

涼は深夜一時過ぎまでうちで寛いで帰って行った。

舞華がどうしてここに居るのか、あいつは訊かなかった。

ただ音楽論議を楽しんで舞華の心を和ませてくれた。

やっぱりあいつには頭が上がらない。

ご覧頂きありがとうございます。


涼ってやっぱり読めない人間ですね。

突然やって来ても嫌がられない、それどころか安心させてしまうのは彼だからなのかもしれません。

人徳ってヤツでしょうか。


“自分らしい書き方”を模索中の武村、現在「有名人な彼」連続投稿中です。

社会人の恋愛は初です。

完結後読みたい方は10/10以降にどうぞ♪


☆次回更新10月6日☆

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