脱走(舞華&静斗)
司と共に寮を抜け出した舞華。
舞華を預かると決めた静斗。
二人は・・・?
私は彼の背中に抱きつくように掴まって静の家までやって来た。
逃げて来ちゃった・・・。
司は覚悟をしろと言った。
それはいい子である事を放棄する事。
私は・・・叔母様に反旗を翻してしまった。
恐くないといえば大嘘になる。
バイクから降りた私は、その場から動けなかった。
「舞華?」
私のバッグを持って、少し前を歩く静が私に振り返った。
「何でもない」
私は笑顔で返したけど、きちんと笑えてたかな?
私は静の服の裾に軽く掴まって階段を上がる。
静が居てくれる・・・。
静が鍵を開けて私を促す。
久しぶりにやって来た静の部屋・・・。
緊張が少しだけ和らいだ。
「綺麗なままなんだね」
「綺麗に保つのも結構慣れた」
静は玄関の扉を閉めて鍵を掛けた。
「今、珈琲淹れるね」
私はいつもみたいにキッチンに向った。
静と一緒の時間を大事にしたかった。
どうせ、見つかったら強制的に連れ戻されて軟禁状態になるんだもの。
今を楽しみたい。
ここに来れなくなってもう四ヶ月になる。
久しぶりなのに、とても心地いい。
キッチンに入ると真新しい珈琲メーカーがあった。
「この間・・・安かったから買った」
静が私を後ろから抱きしめた。
「静・・・?」
「会いたかった・・・」
静の言葉に私の胸がキュンとなった。
「・・・私も・・・会いたかった・・・」
静の腕にそっと触れて、彼が傍に居るんだと改めて実感した。
「馬鹿な事考えんなよ。辛かったら俺の所にこうやって逃げてくればいい。俺はお前が帰りたくないなら帰す気ないし」
馬鹿な事・・・?
司は詳しい説明なんてしてない・・・。
未遂って言った気がする・・・。
でも、それは・・・内輪の人しか知らない事のはず・・・。
「静・・・まさか麗ちゃんの傷の事・・・?」
知るわけがないのに・・・。
「信也から聞いてる。だから心配だった。杉浦って子から電話貰ったときは寿命が縮んだ」
信也さんから・・・?
どうして・・・?
双子だから同じ事するんじゃないかって思ったの・・・?
心配、してくれてたの・・・?
「・・・声を聞いたら会いたくなるし、お前を困らせると思ったら電話も出来なかった。でも、したほうがよかったのかもしれないな・・・ごめん・・・」
そう・・・私も同じ。
きっと会いたくなっちゃうと思った。
逃げ出すなんて考えていなかったし、どうしたらいいのか分らなかった。
行動を起こして初めて、こんなに簡単な事だったんだって思った。
「静・・・私、帰りたくない・・・」
静の手の力が抜けた。
私は振り返って静の顔を見上げた。
「帰れば卒業まで会えなくなっちゃう・・・そんなの・・・」
静の唇が私の言葉を遮った。
触れるだけのキスが深いものに変わり、私は静の服を握り締めた。
杉浦という奴から舞華を任された俺は、舞華と荷物を積んでさっさとその場を離れた。
見つかると厄介だからだ。
早ければ今日中、遅くても明日の朝には舞華が居ない事は知られてしまう。
舞華を外に出すことは出来ないだろう。
舞華には窮屈な生活かもしれない。
それでも俺は舞華と一緒に居たいと思った。
マンションに着いてバイクのエンジンを止め、舞華の荷物を持って部屋に向った。
振り返ると舞華はバイクの前で俯いている。
不安なんだろう。
今までいい子を演じていた舞華にとって、今回の事は相当な覚悟があったんじゃないかと思う。
「舞華?」
俺が声を掛けると、舞華は微笑んだが・・・その笑顔は無理に作ったものだと分るほどにぎこちなかった。
俺の服の裾を掴みながら階段を上る。
階段を上り終えて俺は部屋の鍵を開け、舞華を促した。
「綺麗なままなんだね」
「綺麗に保つのも結構慣れた」
英二や涼も遊びに来ると気を遣ってきちんと片付けをしてくれるようになった。
最初は苦労したが最近はこの状態を保つのも苦ではなくなっていた。
綺麗な状態を保っていると舞華を感じるからだ。
舞華が掃除をしてくれた日を鮮明に思い出し、笑みが漏れた。
「今、珈琲淹れるね」
舞華はいつものようにキッチンに向った。
その様子にほっとする。
舞華を眼で追っているとキッチンに足を踏み入れて立ち止まった。
真新しい珈琲メーカーに気付いたんだろう。
「この間・・・安かったから買った」
俺は後ろから舞華を抱きしめた。
「静・・・?」
「会いたかった・・・」
久しぶりの舞華の馨りが俺の全神経を刺激する。
「・・・私も・・・会いたかった・・・」
俺の腕にそっと触れて舞華が呟いた。
危険信号が点る。
「馬鹿な事考えんなよ。辛かったら俺の所にこうやって逃げてくればいい。俺はお前が帰りたくないなら帰す気ないし」
麗華みたいに自分を傷付けるんじゃないかって心配だった。
未遂で済んだのは多分さっきの杉浦という子のお蔭だろう。
「静・・・麗ちゃんの傷の事・・・?」
「信也から聞いてる。だから心配だった。杉浦って子から電話貰ったときは寿命が縮んだ・・・声を聞いたら会いたくなるし、お前を困らせると思ったら電話も出来なかった。でも、したほうがよかったのかもしれないな・・・ごめん・・・」
何でこうなる前に連絡をしなかったんだろう・・・。
俺は自分に腹が立った。
「静・・・私、帰りたくない・・・」
舞華が呟いた。
俺は抱きしめる腕の力を抜いた。
振り返った舞華は潤んだ眼で俺を見上げた。
「帰れば卒業まで会えなくなっちゃう・・・そんなの・・・」
俺は舞華の唇を塞いだ。
これ以上、舞華の悲しむ姿は見たくなかったから・・・。
舞華の両親だって俺と舞華が付き合ってる事は知ってる。
最悪、舞華の両親も巻き込んでしまおうなんて事を俺は平気で考えていた。
舞華を守るためには使えるものは何だって使う。
長いキスから唇を開放し、俺は舞華を抱きしめた。
それから深夜まで他愛無い話をして・・・。
「舞華、先に風呂入って来いよ。寝る準備しとくから」
取り敢えず寝床は別の方がいいだろうと思った。
同じ部屋で寝るなんて出来ない。
舞華はベッド脇に置いたバッグから着替えを取り出し風呂場に向った。
俺は、作曲をする時に使うもう一つの部屋に布団を敷いた。
舞華がベッドを使えばいい。
俺はここに篭って曲を作るとかしながら夜を明かせばいいだろう。
俺は邪心を振り払うようにキーボードにヘッドホンを差込み曲作りを始めた。
新曲の詞が出来ている訳ではない。
ただ、ベースを作っておけばいくらでもアレンジは出来る。
ヘッドホンのお蔭で外の音は全く聞こえない。
シャワーの音も舞華が部屋を歩き回る音も。
俺は曲作りに夢中になっていた。
暫くして・・・部屋の中にいい馨りが漂ってきた。
振り返ると舞華が立っていた。
淡いピンクのパジャマを纏い、濡れた髪からは俺のシャンプーの馨りが漂う。
「・・・何、してんの?」
舞華の口が動くが何を言っているのか分らない。
ヘッドホンのせいだ。
俺はヘッドホンを外して再度問い掛けた。
「どうした?」
舞華は俯いたまま少し離れた場所に腰を下ろした。
曲作りの続行は不可能だ。
俺は立ち上がり舞華の腕を掴んだ。
「電気消すから出て」
「・・・私・・・邪魔?」
急に何を言い出すんだ?
「んな訳ないだろ」
「私の事・・・避けてる、よね?」
・・・それは否めない。
「邪魔だったら私・・・出て行くから・・・」
行く宛てもないくせに何でそんな事言うんだ?
俺はベッド脇のタンスから着替えを取り出して振り返った。
「確かに避けてたかもしれない。でも、それは俺個人の心の問題だからお前は気にする事ない」
「心の問題・・・?」
あまり深く追求しないで欲しい・・・。
「そ、だから気にせず寝ろ。ここのベッド使っていいから。俺も風呂行ってくる。絶対に出て行くなよ」
風呂に入ってる間に出て行かれたら困るので念を押してから風呂に向った。
女と違い、風呂に長時間費やすなんて事はない。
俺が風呂から出ると舞華はベッドに座って本を読んでいた。
寝ててくれた方がよかったのに・・・。
俺はタオルで髪を拭きながらキッチンに向った。
冷蔵庫からビールを取り出して一気に体内に流し込む。
「あんまり夜更かしすんなよ」
舞華に歩み寄って頭を軽く叩く。
「静・・・ここに居て・・・?」
本を閉じた舞華は縋るような目で俺を見上げた。
俺は髪を掻き乱して動揺した。
当然だろう。
「恐いの・・・」
舞華の声は震えていた。
それもまた当然の事だと思う。
俺は舞華の隣に腰を下ろし肩を抱き寄せた。
「静・・・傍に居て・・・?」
舞華の言葉を聞いた瞬間、俺の中から理性という物が消失した。
俺は舞華をベッドに押し倒し、初めて・・・舞華を抱いた・・・。
ご覧頂きありがとうございます。
とうとう静と舞華が・・・。
お預け終了・・・?
当然の流れっちゃそうなんですけどね・・・。
他の手を考えねば・・・フフフッ。
暫くシリアスが続いちゃいます。
臥せっていた時のお話では、キーボードを前にしても手が動かないので書き直しを大量にしていますが・・・あんまり明るい話じゃないなぁ・・・。
すみません・・・。
投薬の種類が増やされて最近は頭が回転せず、執筆も一日1000字程度しか進まない状況です。
まぁストックもあるし、今のところ偶数更新に問題はありません。
ご安心下さい♪
☆次回更新9月30日☆