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GEM《ジェム》  作者: 武村 華音
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月夜(舞華&麗華)


あの呼び出しから約一ヶ月。

二人は同じ月を見上げていました。

何もする気にならない。

教科書を開いたけど見る気にもならない。

予習も復習もやりたくない。

あの日から寮と学校を往復するだけでどこにも出掛けていない。

学校から出ると刺すような視線を感じる。

叔母様の視線。

だから出掛けようなんて気にもならない。

自宅にも帰らなかった。

恐かったし、意味がないから。

あの呼び出しから一ヶ月になろうとしている。

覚悟はしていたけど・・・辛い。

麗ちゃんはあの後から姿を消して帰って来ない。

学校にも来ていない。

多分信也さんのところに居るんだろうな。

信也さんが居れば安心だよね。

静は・・・?

静は今・・・何してる?

私は窓から空を見上げた。

静も見てるのかな・・・?

空には雲ひとつなく、暗い空には星が輝いている。

何でそんなに穏やかなの?

見ていると哀しくなる。

静に会いたい・・・。

「舞華、ちょっといいか?」

空を見上げていた私の部屋の扉を新寮長がノックした。

「どうぞ・・・」

扉を開けた彼女は私の顔を見て溜め息を吐いた。

杉浦すぎうら つかさ

彼女との付き合いは長い。

「何だその顔は?葬式みたいだな・・・」

葬式・・・か。

「理事長から呼び出されていたのは知っていたが、相当参ってるな。外では空元気か?」

私は苦笑した。

「麗華はまだ帰らないのか?」

私は小さく頷いた。

「お前は大変だな」

司とは初等部から一緒だ。

麗ちゃんの事件も知っている。

「私はお前まで何かしでかすんじゃないかって心配だよ」

司は閉めた扉に凭れて私を見ていた。

「・・・そんな勇気・・・私には、ない」

出来たらどんなに楽になるだろう?

「馬鹿な事を考えるんじゃないぞ。この状況を打破したいと思うなら頭を使え。自分を傷付けることなく周りを動かせばいい」

周りって・・・?

「・・・どうしたらいいのか分からないよ・・・」

私はカーテンを握り締めた。

「私はお前が何を悩んでいるのか分からないし勝手な事は言えない・・・でも、お前が間違っていないと思うならお前は自分を信じても良いんじゃないか?」

校則違反は悪い事。

そんな事分かってるの。

自分が間違ってるって・・・。

「理事長は厳しい。お前に対してはハンパない厳しさだ。誰もが知ってるし、ここ最近お前の様子がおかしい事も分かってる。先生方も心配してたぞ」

確かに・・・ここ最近は授業も聞いてないし、質問にも行ってない。

「舞華、取り敢えず理事長を怒らせないように勉強だけはやれ。私が見てやる」

司は机の上の教科書を見て溜め息を吐いた。

「本当に暫く何も聞いてなかったんだな」

珍しく真っ白な私の教科書は何もしていない事を物語っていた。

司はポケットからビールを取り出してプルタブを摘んで開けた。

「司・・・お酒は法律違反だよ」

校則違反よりも性質が悪い。

「こんな事やってる奴はたくさん居る。お前は真面目過ぎるんだ」

たくさんいるからってやっていい事じゃない。

「多少の法律違反や校則違反なんて破ってる奴はたくさん居るんだって事さ」

司はビールを飲みながら微笑んだ。

「実はな、お前が親御さんとライブハウスに入っていくのを見掛けた事があるんだ。楽しそうな顔をしてると思った」

私の肩が微かに震えていた。

「私はお前の両親の仕事も、お前が役員であることも知ってる。役員が仕事に出て文句を言われるのはおかしいだろ?親と一緒に仕事だと言って堂々と行けばいいじゃないか。使えるものは親でも使えって言うだろ?」

そんな言葉・・・聞いたことない。

「お前の両親にも協力を請えばいいって事さ」

そんな簡単にはいかないと思うけど・・・。

司が励ましてくれていることは分かる。

私は司に微笑んだ。

笑ったのは久しぶりな気がした。

どうやらまだ私は正気らしい。


私は信也の部屋でダラダラと過ごしていた。

あの日、私は早退して信也の部屋にやって来た。

その後は寮にも学校にも行っていない。

ライブに行けない舞ちゃんの傍に居るのは舞ちゃんを苦しめるように思えた。

舞ちゃんはライブに行くようになって変わった。

明るくなったし、自分から話すようにもなった。

そんな舞ちゃんに連絡も出来ないでいた。

GEMメンバーにも信也が話したらしく、重々しい空気が漂っている。

舞ちゃんが来ないことが皆にもショックだったんだと思う。

会話も少ないし、何故か音が荒れている。

悪循環だ。

私は携帯を開いた。

こんな時に頼れるのは一人しかいない。

「もしもし麗華・・・叔母さんから連絡ってきた?」

私はお母さんに訊いてみた。

『こないけど・・・何かあったの?』

お母さんは何も知らなかった。

私はお母さんに素直に話した。

ライブの帰りにクラスメイトに会った事、叔母さんの耳に入って呼び出された事。

私がその後寮にも学校にも行っていない事や、舞ちゃんと連絡を取っていない事。

GEMに亀裂が生じている事・・・。

『そう・・・舞ちゃんの事は任せて。明日にでも様子見に行ってみるわ』

お母さんの言葉に私はほっとした。

お母さんなら何とかしてくれると思ったからだ。

『GEMの方は貴女に任せるわ。何かあったら連絡頂戴』

「分かった」

私はそう答えて電話を切った。

いい方向に向ってくれるといいんだけど・・・。

舞ちゃん、今何してる?

私は窓の外を眺めていた。

雲ひとつない空は見ていて辛かった。

玄関の鍵が開けられ信也が帰って来た。

「お帰り」

「ただいま」

私と信也の間にも小さな亀裂が入っているように感じる。

「・・・お母さんには何の連絡もなかったみたい」

私は視線を合わせることなく信也に言った。

「そ・・・」

「信也・・・冷たいね」

思ったことがそのまま言葉になって飛び出した。

「俺にどうしろって?」

信也はキッチンでお茶を飲みながら私を見ていた。

「皆と違って信也だけは妙に冷静じゃない。何でそんなに冷静で居られるの?」

苛々する。

私がベッド脇の鞄を持って歩き出すと信也に腕を掴まれた。

「どこに行く気だ?」

「どこだっていいじゃない」

信也は私の腕を放そうとしない。

「放してよ」

「嫌だ」

私は信也に抱きしめられた。

「どこにも行かせない」

分かってる・・・。

信也が私の事でトラウマを抱えてるって。

舞ちゃんが同じ事をするんじゃないかって不安な事も。

・・・この傷は私が自由を得るための代償。

このお蔭で自由を手に入れた。

叔母さんの監視からも、異常な束縛からも解き放たれた。

叔母さんのプライドも傷つけた。

でも、この傷のせいで舞ちゃんは今まで以上に叔母さんを恐れるようになった。

逆らえなくなった。

そんな事分かってる・・・。

だから今、自分が苦しんでるんだって事も。

信也は私の左手首のケロイド状になった傷跡にキスをした。

そしてベッドに倒れ込んで信也は荒々しく私を求めた。

私も縋るようにそれに応じた。

ご覧頂きありがとうございます。


何故か凹んでいる時に月を見上げると一層凹む気がします。

何ででしょうね????


不良新寮長・・・ってことで・・・。


―― 杉浦すぎうら つかさの紹介 ――


聖ルチア学園高等部三年(スタート時は二年だった筈)

舞華&麗華の同級生で初等部からの付き合い。

二人のよき理解者。

ルチア寮の寮長。

寮長になってなかなかライブを見に行けないが、それまでは麗華としょっちゅう行っていた。

舞華に手話を教えた人物。

特徴的な話し方。

陸上部に所属するが幽霊部員。

ショートカットでパッと見は男か女か微妙。

身長:170cm

血液型:O型

趣味:筋トレ、音楽鑑賞、酒(注意:お酒は二十歳になってからにしましょう)

特技:長距離走、化粧、変装

苦手なこと(もの):大人


☆次回更新9月24日です☆

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