神の悪戯(舞華&静斗)
ゴールデンウィークのライブの後。
事件発生!
綾香さんと一緒にライブを観たのは初めて。
そしてライブ後、綾香さんは初めて打ち上げにも顔を出していた。
「僕も彼女欲しくなっちゃうな」
若林さんが小さく呟いた。
「何だよ突然?」
金森さんが若林さんに微笑んだ。
今日の金森さんはご機嫌だ。
綾香さんが一緒だからなのかもしれない。
「皆ペアじゃない?僕も誰か一緒に居てくれる子が欲しいなぁって思ってさ」
「若林さんならすぐに見つかりますよ」
私は素直にそう言った。
「じゃ、舞ちゃん静斗やめて僕と付き合わない?」
冗談だと分かるけど恥ずかしい。
「お前、静斗の目の前でよく言えるな」
金森さんが微笑んだ。
「本人の前だから言うんだよ。隠れて言ったらマズイでしょ?」
若林さんは笑った。
綾香さんを含め三人は楽しそうに静をからかっている。
静も分かっているからなのか顔を赤らめたまま黙っていた。
でも、彼女が欲しいっていうのは強ち嘘じゃないと思う。
「おい、静斗。時間大丈夫か?」
金森さんの言葉に静と私は店の掛け時計に視線を移した。
「ヤバイな。麗と信也連れてくる」
静は楽しそうに話す麗ちゃんを無理やり引っ張ってきた。
「信也、頼むな」
静に見送られながら帰るこの瞬間が凄く寂しい。
私は麗ちゃんと信也さんの会話に入ることも出来ずにただ一緒に居るだけ。
ここに静が居てくれたらって・・・我が儘だよね。
「舞ちゃん、コンビニに寄ってもいい?」
麗ちゃんが私に振り返った。
「うん」
私達三人がコンビニエンスストアに足を踏み込むと声を掛けられた。
「菊池さん?」
クラスメイトだった。
「あ、こんばんわ」
彼女は私達をじっと見つめていた。
麗ちゃんは我関せずとばかりに信也さんと奥に向ってしまった。
ふとお酒の匂いがした。
信也さんが飲んでいたのかもしれない。
「あの、菊池さん・・・あの男の人は・・・?」
当然の質問だ・・・。
「従兄弟の・・・高井戸信也さんです」
彼女は首を傾げた。
名前だけではピンとこないらしい。
「理事長の息子さん、と申し上げたほうが分かり易いですね・・・」
彼女の目は疑っている。
確かに叔母様と信也さんはあまり似てない。
叔父様は大柄だけど、学園に関わらない叔父様を彼女が知る筈がない。
小柄な叔母様に対して大柄な信也さん。
信じてもらえていない気がする。
まさかこの時間に聖ルチアの子に会うなんて考えてもいなかった。
多分、彼女もそうだろうけど・・・。
「そう・・・ですか・・・理事長の・・・」
「はい・・・」
とても気まずい・・・。
「舞ちゃん帰ろ」
麗ちゃんが私の腕を引っ張った。
「あ、じゃあ・・・」
私が軽くお辞儀をすると、信也さんが彼女を見て口を開いた。
「こんな時間に一人で出歩くのは感心しないな。何かあったら俺が母さんに怒られる、さっさと買い物を済ませて来い。送って行く」
私と麗ちゃんは顔を見合わせた。
「麗、舞。ライブの話は絶対にするな」
彼女が店内で会計をしている時信也さんはそう言った。
「茶葉が無くなったから買いに来たって言えよ。遅い時間だから俺と麗華が付き合った。いいな?」
益々分からない。
けど、信也さんに従うしかない。
私は小さく頷いた。
麗ちゃんは携帯電話を取り出し何やら操作している。
「買い物終わったのか?送って行く」
信也さんに警戒しながらも彼女は小さく頷いた。
「私達もご一緒します」
私達が一緒ならば彼女も恐くないだろうと思ったからだ。
「菊池さんのお宅はご近所なんですか?」
彼女の問いに私は頷いた。
「えぇ、茶葉がなくなってしまったので慌てて買いに来たんです。女性一人だと危ないからって信也さんと麗ちゃんが付いて来てくれて・・・」
彼女は麗ちゃんの持っているビニールを見て茶葉が入っていることを確認していた。
やっぱり疑っている。
・・・って言うよりも本当に茶葉を買っている事に私も驚いていた。
「大変ですね、こんな遅い時間にお付き合いなさるなんて」
彼女は信也さんを見上げた。
「いや別に?この二人とは生まれた時からの付き合いだからな。あんたこそ何でこんな時間にコンビニなんかに居たんだ?」
彼女は動揺していた。
「わ・・・私は・・・」
言葉に困っている彼女を見て、私は言いづらい事なんだろうと思った。
暫くの間沈黙が続いた。
「あ、あの・・・うちここなんです。ありがとうございましたっ」
彼女は家の門を開けた。
「人の事詮索する前にあんた自身も同じくらいヤバイ状況だって分かった方がいい」
信也さんは彼女にそう言った。
口止めをしようとしているのだと初めて分かった。
「チクればその場に何であんたが居たのか訊かれることも考えろよ」
彼女は何も言わずに踵を返し家の中に消えた。
「ヤバイかなぁ・・・」
麗ちゃんが呟く。
「とにかく白を切り通せ」
信也さんはそれしか言わなかった。
そして帰り際に彼女の名前だけを私に訊いて帰って行った。
舞華達を帰してすぐに俺は涼と家路についた。
「寂しい?」
涼はそう言って俺の顔を覗き込んだ。
「そりゃ・・・な」
俺も素直に認める。
相手が涼なら隠す必要もない。
「だよね」
涼は苦笑した。
「ねぇ、訊いてもいい?嫌だったら答えなくてもいいから・・・」
俺は黙って頷いた。
「気になってたんだよね・・・何で最近信也が二人の邪魔をしに来るのかなって」
数ヶ月間見ていたら分かる事だ。
「舞華が出掛けてることが学校側にバレそうになったらしい。信也がそう言ってた」
涼の顔が険しくなった。
「それ・・・いつの事?」
「正月明けくらいだったと思う」
涼は腕を組んで首を傾げた。
「それって・・・本当なのかな?」
俺は涼の顔を見た。
「あ、いや・・・そんなに何ヶ月間もヤバイ状況って続くものなのかなって思って・・・さ」
涼の言葉に俺は驚いた。
こいつは人の事を悪く言う奴じゃないからだ。
「失礼な話だけど・・・信也が二人の仲を邪魔してるって事ありえない?」
何のために・・・?
そう尋ねようとした瞬間、麗華の姿が俺の脳裏を掠めた。
涼も同様だったらしく、俺達は顔を見合わせた。
「「まさか・・・」」
そんな事はないと思いたい。
「静斗は気付いてたんだね?」
「そりゃ・・・な」
麗華に気付かれないために邪魔をしていたのか?
俺は拳を握り締めた。
「麗ちゃん、正月明け頃・・・かなり遊んでたみたいだし・・・あ、でもこれはあくまで僕の勝手な憶測だから。変なこと言ってごめんね」
涼らしい言い訳だ。
俺は苦笑した。
最寄の駅で涼と別れ、俺が一人で家に向っている時だった。
『クラスメイトに見つかっちゃった・・・』
舞華からのメールを見て俺の背筋が凍りついた。
この時間に出歩くお嬢様が居たことにも驚くが、信也の母親にバレるかも知れないと思うと恐かった。
案の定、家に辿り着いてすぐに信也から電話が来た。
内容は聞かなくても分かる。
「もしもし・・・」
『・・・信也だけど』
「何?」
『さっきコンビニで舞華達のクラスメイトと鉢合わせした』
ほらな。
『悪いが暫く舞華と会うのを控えてくれ』
やっぱりな。
そう言ってくると思ったぜ。
「お前が話せば済むことじゃないのか?」
お前が母親に今日の事を話せばそれでいいんじゃないのか?
違うのか?
それともお前は俺から舞華を引き離そうとしているのか・・・?
『話はするつもりだが・・・暫く見張りが付くことになるだろう』
何だよ見張りって・・・?
お前の母親はそうやって舞華の自由を奪うのか?
「なん・・・だよ、それ?何で・・・何であいつがそこまでされなきゃならねぇんだよ?!」
訳が分からない。
自分の娘でもないのにそこまでやるのか?
お前の母親は何様のつもりだ?!
俺は拳を握り締めた。
『悪いな・・・また、電話する』
信也は多くを語らずに電話を切った。
そんなんで納得できるかよ。
できる訳ないだろ。
触れられなくなっただけじゃなく会えなくなるのか・・・?
冗談じゃねぇ・・・!
俺は拳をテーブルに叩き付けた。
ご覧頂きありがとうございます。
同級生とコンビニで遭遇。
何だか事件になりそうな予感。
シリアスな話のはずが、ただ真面目なだけの話を書けない武村は途中息抜きのように静斗のお預けを状態を書いてましたが・・・会えないとなると・・・武村もお預け状態?
静斗が涼と一緒に帰った・・・と言う事で・・・。
―― 若林 涼の紹介 ――
某四大の三年。
GEMではヴォーカルを担当。
ステージ上ではキレ気味で弾けているが、ステージを降りると穏やかな人格になる。
妙に勘が良く、人の態度の変化に敏感。
静斗とは中学時代からの友人なので、お互いに女遍歴は熟知している。
外国の血が混じっている。
エキゾチックで中性的な容姿を持ち、高校時代に女装をさせられ男を虜にした経験あり。
髪は地毛で栗色。
一見温厚そうな人物。
現在彼女なし。
静斗の目の前で舞華を口説く事を楽しんでいる。(静斗苛め?)
身長:177cm
血液型:B型
趣味:カラオケ、音楽鑑賞、人間観察
特技:読心術、女に甘える事、歌
嫌いなこと:悪口を言う事、友人が傷つく事