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GEM《ジェム》  作者: 武村 華音
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ゴールデンウィーク(麗華&綾香)


ゴールデンウィーク。

麗華と舞華は今日も一緒にライブハウスにやって来ました。

ゴールデンウィーク。

私と舞ちゃんは再びライブハウスにやって来た。

「舞ちゃん、麗ちゃん。いらっしゃい」

「「こんばんわオーナー」」

私達は笑顔でオーナーに挨拶をした。

珍しく今日は早い時間から客が多い。

「今日は早くから混んでますね。GEM以外にも注目の方がいらっしゃるんですか?」

職業病・・・ではないとは思うけど舞ちゃんが尋ねた。

「あぁ、“歯車”ってバンド目当てじゃないかな。悪くはないと思うよ?」

オーナーは洗ったグラスを拭きながら答えた。

多少聴けるバンドが出ることが嬉しいのか舞ちゃんは笑顔だ。

いつもは雑音にしか聞こえないから仕方ないと思う。

「舞ちゃん、浮気は駄目だからね?」

「な・・・浮気って・・・何っ?」

私の言葉に舞ちゃんは驚いている。

「本命はGEMだって忘れないでよって言ってんの」

「わ・・・分かってますっ・・・!」

何を考えていたのか舞ちゃんの顔は真っ赤だった。

「君達二人で来たの?」

見知らぬ男が四人私達の傍にやって来た。

そして、私達を囲むように立ちはだかった。

何かヤバイ雰囲気・・・。

知らない人・・・だよね?

舞ちゃんは私の袖を握り締めた。

「ごめぇん、待ったぁ?」

聞き覚えのない女の人の声に私は振り返った。

男の人達も声の主を見ていた。

「綾香さん・・・!」

そこには英二と見知らぬ女の人が立っていた。

舞ちゃんが私の手を掴んで二人の傍に走り寄った。

「俺の連れに何の用?」

英二が男達を睨んだ。

「い・・・いや、連れが居るならいいんだ。じゃあねっ・・・!」

男達は逃げるようにその場を去って行った。

「大丈夫?」

女の人が舞ちゃんの顔を覗き込んだ。

長身で真っ黒な腰までの長いワンレングスへアの美人さん。

「あんなのに付いて行っちゃ絶対に駄目だからね。ヤられちゃうだけよ」

舞ちゃんは安心したのかその場に座り込んでしまった。

立っていられなかったんだと思う。

見て分かるほどに震えてる。

「あ・・・あの、ありがとうございました。この子男の人苦手なんでパニクっちゃってるだけですから気にしないで下さい」

私は舞ちゃんの隣にしゃがみながら二人に礼を言った。

「放っておける訳ないでしょ?英二」

女の人は英二に顎で合図した。

英二も分かったようで舞ちゃんを立ち上がらせるとステージ裏に連れて行った。

「貴女、麗華ちゃんでしょ?話すのは初めてよね?私綾香って言うの。よろしく」

そういえば舞ちゃんは知っていたらしい。

彼女の名前を呼んでた。

意外だ。

私達は話をしながら控え室に向った。

「綾香」

英二が手招きをしている。

控え室を覗くと舞ちゃんの両サイドに涼と静斗が座っていて、信也が水を舞ちゃんに渡していた。

舞ちゃんって皆に好かれてるんだなぁ・・・。

分かる気はするけど。

「げ、綾香・・・」

静斗は彼女の顔を見た瞬間、嫌な顔をした。

「あら、静斗。一日ぶりぃ」

私の隣の彼女は笑顔で手をヒラヒラと振った。

「舞華の事頼むな」

英二は彼女の頭を軽く叩いて、彼女も笑顔で答えた。

大人の女、ってカンジが羨ましい。

「お前、こっち来ないんじゃないのかよ?」

「来たくて来たんじゃないわよ」

静斗と彼女の関係は、静斗と英二の関係に似てるような気がする。

英二の彼女ってこんな人なんだ・・・。

なんとなく納得。


何だって今日なのよ?

大学行ってバイト行ってライブですって?

まったくハードな一日だわ。

「綾香」

英二がいつものように無表情でこちらに向って手を上げている。

人の気も知らないで・・・。

「悪いな、付き合わせて」

意外な一言にちょっと動揺。

「し・・・仕方ないでしょ、家に帰ったって一人じゃつまんないし」

意外と分かってくれてるのかもしれない。

私は英二の腕に手を絡めて微笑んだ。

「あら、珍しい」

ライブハウスに入ったら珍しく混んでる。

「今日は、あんた達がやる頃には鮨詰め状態ね」

あぁ嫌だ嫌だ。

「お前・・・裏で観たら?」

何だか今日の英二は優しい。

何でなんだろう?

「最悪の場合そうさせてもらうわ」

私がフロアを眺めていると見覚えのあるシルエットが目に入った。

舞華ちゃんと麗華ちゃんだ。

麗華ちゃんと話すいいチャンスだと思った。

英二の腕に手を絡めたまま私は二人の方に足を向けた。

すると、四人の男が二人に近付いていく。

・・・ナンパだ。

あの人数は危険だ。

舞華ちゃんの顔は血の気が失せている。

「ごめぇん、待ったぁ?」

私は二人に声を掛けた。

「綾香さん・・・!」

舞華ちゃんは麗華ちゃんの手を掴んで私達の方に駆け寄ってきた。

余程恐かったんだろう、身体が震えている。

「俺の連れに何か用?」

英二が睨むと奴らはあっさりと退散した。

情けない奴ら・・・。

「大丈夫?あんなのに付いて行っちゃ絶対に駄目だからね。ヤられちゃうだけよ」

私が舞華ちゃんの顔を覗き込むと、今にも泣き出しそうな顔をしている。

その姿を見て可愛いと思ってしまう私ってちょっと不謹慎ね。

舞華ちゃんはヘナヘナとその場にしゃがみ込んだ。

「あ・・・あの、ありがとうございました。この子男の人苦手なんでパニクっちゃってるだけですから気にしないで下さい」

麗華ちゃんはそう言ったけど、このまま放っとけるなら助けたりなんかしない。

「放っておける訳ないでしょ?英二」

私が英二を見上げると彼も理解したらしく舞華ちゃんを連れて控え室に向った。

あそこに行けば静斗が居るから。

「貴女、麗華ちゃんでしょ?話すのは初めてよね?私綾香って言うの。よろしく」

私が麗華ちゃんに視線を移すと、彼女は不思議そうに私を見つめていた。

「あの・・・舞華ちゃんを知ってるんですか?」

彼女は真っ先にそれを訊いてきた。

「まぁね、私の働いてる店によく来てくれるから」

信也の彼女だって言うし、私は簡単に答えるに留まった。

「歌、歌ってるんですか?」

「は?」

何でそんな質問が来るのか理解できない。

「舞華ちゃんの知り合いって言うからそうなのかなって・・・違うんですか?」

何で舞華ちゃんの知り合いだと歌ってる人になるんだろう?

「私は聴く専門よ」

麗華ちゃんは益々不思議そうな顔をしていた。

「綾香」

英二が私に手招きをした。

どうやらそこが控え室らしい。

私が室内を覗くと静斗と視線がぶつかった。

「げ、綾香・・・」

何よご挨拶ね。

そんなに心底嫌そうな顔しなくてもいいじゃない。

・・・って私がいつもからかうから嫌がられても仕方ないんだけどね。

「あら、静斗。一日ぶりぃ」

思いっきり笑顔で返してやった。

来週覚えておきなさいよ、っていう私の心の声を感じ取ったのか顔を引き攣らせた。

あぁ、楽しい。

「舞華の事頼んでもいいか?」

英二が私の暴走を止めるように頭を叩いた。

「OK」

私は英二に笑顔で答えた。

英二には逆らえないんだ。

惚れた弱みよね。

私と英二の出会いは大学のラウンジ。

私が溢した珈琲を拭くのを手伝ってくれたのが始まり。

無表情で何も言わないで手伝ってくれた。

所謂一目惚れ。

名前も名乗らずにその場を去ってしまったので私が探して猛アタック。

そして現在に至る。

「お前、こっち来ないんじゃないのかよ?」

静斗の迷惑そうな声にちょっと腹が立った。

「来たくて来たんじゃないわよ」

私が言い返すと英二は私の腕を掴んで廊下に出た。

「何よ?」

「大人しくしてろ」

「私が悪いの?喧嘩売ってくる静斗のせいじゃないの?何で私が・・・っ」

英二は面倒臭くなったのか私の唇を塞いだ。

「あんま煽るなよ」

私は何も言えなくなってしまった。

「続きは帰ってからな」

英二はそう言って私の首筋に口付けた。

そんなんで大人しくしちゃう私って・・・単純。


ご覧頂きありがとうございます。


麗華は毎回露出の多い服装で、舞華は大人しめの清楚な服装でやって来ます・・・が、実際にこういった姿でライブハウスに行くのはとっても危険ですのでやめましょう。

舞華と麗華は基本的にバックステージで見てるから安全なんです。


綾香と英二の馴れ初めを紹介したってことで・・・。


―― 諏訪すわ 綾香あやかの紹介 ――


英二の彼女。

某四大の三年。

GEMメンバーと同じ大学です。

教育学部在籍。

人付き合いが苦手で、大学でも結構一人でいる事が多い。

素直ではないためなかなか交友関係が広がらない。

舞華の事は妹のように可愛がるが、静斗に関してはからかうのを楽しんでいる。

週末は英二の部屋に泊まりこむ。

英二にベタ惚れ。

料理は・・・あまり上手じゃない様子。

綺麗な黒髪で、腰までのワンレングスヘア。

綺麗な顔立ちだが、普段着はジーンズにカットソーとラフな姿が多い。

身長:175cm

血液型:AB型

趣味:静斗いじめ、音楽鑑賞

特技:化粧、空手

苦手なこと:料理、人付き合い

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