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GEM《ジェム》  作者: 武村 華音
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ホワイトデー(舞華&静斗)

ホワイトデーは金曜日。

二人のデートは・・・?

今日は金曜日。

本来ならCD屋さんに向うのに私はライブハウスにやって来た。

三月十四日。

世間で言うホワイトデー。

隣には麗ちゃんがいる。

オーナーはイベントの日にはGEMにライブをさせる気らしい。

「麗!またお前は舞華連れて来て!!」

「舞ちゃんに聴かせて何が悪いの?!」

二人の怒鳴り声も最近は当たり前で、慣れてきてしまった自分がいる。

「珍しいわね、信也君が怒鳴るなんて」

私は予測していなかった声に肩を震わせた。

「お母さん・・・!」

お母さんは私に微笑んだ。

「何驚いてるの?私だって様子を見に来るくらいするわよ?」

お母さんがここに来るのは二ヶ月ぶり?

「誰から・・・連絡貰ったの?」

私はお母さんに視線を向けたまま動けなかった。

「麗ちゃんよ?」

意外だった。

「他から声が掛かってるなんて言われたらそりゃ焦るでしょ?」

私が麗ちゃんに視線を移すと麗ちゃんは微笑んでいた。

確かに本当の事だけど・・・。

多分麗ちゃんは私がここに出入りしてる事を見つかっても言い訳できるようにお母さんを呼んだんだと思う。

皆に気を遣わせてしまってる自分が情けなかった。

「舞華」

静の声に私は振り返った。

彼は廊下の自動販売機の前に居た。

お母さんは微笑みながら私の背中を押して麗ちゃんと共に控え室に入って行った。

「悪いな、今日いつもみたいに会えなくて」

静は苦笑した。

「私、GEMもライブ観るの好きだから残念なんて思ってないよ?」

観に来れた事が嬉しかった。

確かにいつもみたいには会えなかったけど、私は静のギターを弾いている姿を見るのも好き。

だから残念なんて思わない。

「舞、これやる」

静は小さな箱を私の掌に乗せた。

「お前のところがピアス禁止なのは分かってるんだけど、お前に似合いそうだったから」

空ける前に中身言われちゃった。

私は苦笑した。

箱を開けると綺麗なピアスが光っていた。

繊細な細工が施されているけど煩くない、上品なピアス。

ネックレスもそうだけど、静はこういうのを見つけるのが上手だと思う。

「いつかして欲しいと思ってさ」

伸びてきた静の手が私の耳朶に触れた。

反射的に目を瞑り、身体が小さく震えた。

その直後唇が塞がれた。

耳朶から首の後ろに回された手が私を逃がしてはくれない。

深いキスに眩暈を起こしそうになる。

「相変わらずアツいね」

私達が慌てて身を離すと、控え室から出てきた若林さんが微笑んでいた。

「邪魔しちゃってごめんね。舞ちゃん、これホワイトデーのお返し」

若林さんは私の頭に帽子を被せた。

真っ赤になった私の顔が隠れて私はちょっとだけほっとした。

「あ・・・ありがとう・・・ございます」

「学校、厳しいんでしょ?そういうの被った方が目立たないと思って。また差し入れよろしくね」

若林さんはそう言って控え室の中に消えた。

「あいつらもお前に観て欲しいんだよ」

静は私の頬を撫でて再びキスをした。


金曜日。

なのに俺はライブハウスに居る。

オーナーから頼まれれば断るなんて出来ない。

舞華とのデートを諦めるしかなかった。

俺は自販機の前で大きな溜め息を吐いた。

仕方ないのは分かってる。

でも残念に思う気持ちは隠せない。

「麗!またお前は舞華連れて来て!!」

「舞ちゃんに聴かせて何が悪いの?!」

控え室から信也と麗華の声が聞こえた。

舞華が・・・来た。

可能性的にはゼロではないと思ってた。

でも、来ないものだと考えていた。

毎週末自宅に帰る舞華は今週も自宅に帰ると言ってたし、俺はライブが終わったら寄ろうなんて密かに考えていた。

上着のポケットの中の小さな箱を触りながら俺は小さく微笑んだ。

「珍しいわね、信也君が怒鳴るなんて」

舞華ではない女の声に俺は控え室の方を覗き見た。

あいつの母親が居た。

「舞華」

今ならあいつと話せるかもと、俺は大きくない声であいつの名を呼んだ。

あいつはすぐに振り返った。

でもあいつの母親も気が付いた。

何か言われるかもしれないと思ったが、あいつの母親は微笑んであいつの背中を押して麗華と控え室に入って行った。

いい母親じゃねぇか。

あいつはすぐに俺に近付いてきた。

「悪いな、今日いつもみたいに会えなくて」

俺は苦笑した。

「私、GEMもライブ観るの好きだから残念なんて思ってないよ?」

舞華は何でこうも俺を欲情させるのが上手いんだ?

天然だというから性質が悪い。

「舞、これやる」

俺は小さな箱を上着のポケットから取り出してあいつの掌に乗せた。

「お前のところがピアス禁止なのは分かってるんだけど、お前に似合いそうだったから」

舞華が苦笑した。

何でだかは分からない。

「いつかして欲しいと思ってさ」

俺は微かに見えるあいつの耳朶に手を伸ばした。

反射的に目を閉じたあいつの唇に俺は耐え切れずにキスをした。

ほのかに馨るのはシャンプーの馨りだろうか?

「相変わらずアツいね」

涼の声に俺達は慌てて離れた。

「邪魔しちゃってごめんね。舞ちゃん、これホワイトデーのお返し」

涼は舞華の頭に帽子を被せた。

「あ・・・ありがとう・・・ございます」

舞華は俯いたまま涼に礼を言った。

「学校、厳しいんでしょ?そういうの被った方が目立たないと思って。また差し入れよろしくね」

涼はそう言って控え室の中に消えた。

「あいつらもお前に観て欲しいんだよ」

俺は舞華の頬を撫でて再びキスをした。

そう、GEMは舞華が来ると調子がいい。

涼も“舞ちゃんが居ると落ち着くよね”なんて言ってたっけ。

もしかして惚れてんじゃないだろうな・・・なんて、ちょっと疑いたくなる。

でも、彼女持ちの英二も似たような事を言ってた。

舞華は不思議だ。

周囲を和ませるし、人を優しくさせる。

だから俺もこいつの傍が心地いいなんて思うんだろうな。

「お前、帽子似合うな。今度一緒に買いに行くか?」

本当に似合ってる。

あいつは笑顔で頷いた。

可愛すぎる・・・。

俺はいつまで我慢できるんだろう・・・?

襲わない自信なんて既に無いけど、こいつを壊したくない。

それも俺の本音だ。

らしくないけどな。

ご覧頂きありがとうございます。


ホワイトデーが金曜日でデートがお預けになってしまいました。

でも、信也が一緒のデートよりも舞華に触れられるライブのほうが静斗にとっても嬉しいでしょうね。


ちなみに執筆を2007年のカレンダーで始めたため、現在2008年のカレンダーで話を書いております。

プロローグは2007年4月21日土曜日だったりします。


―― 菊池きくち 麗華れいかの紹介 ――


舞華の双子の妹。

聖ルチア学園二年。

幼稚部から通っている。

外交的で友人も多かった中学時代とは対照的に高等部では孤立してしまっています。

天邪鬼で自由人だけど姉御肌。

結構舞華の事を考えてたりします。

信也と同棲中。

学校にはほとんど行ってないが、理事の力で進級している。

身長:160cm

血液型:AB型

趣味:ライブ通い、買い物、男遊び

特技:男に甘える事、化粧

苦手なもの:家事全般、勉強、叔母、舞華の涙

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