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GEM《ジェム》  作者: 武村 華音
24/130

金曜日(舞華&静斗)

バレンタインの夜と翌日のデート。

久々に二人で会えるんです。

夜、麗ちゃんから電話が来た。

『舞ちゃん?皆喜んでたよぉ』

麗ちゃんの言葉に私は微笑んだ。

「よかった。気になってたの」

『信也も英二も静斗もあっという間に平らげちゃったんだよ、チョコ嫌いのくせに』

麗ちゃんも嬉しそうに話していた。

皆が食べてくれている姿を見れなかったのは残念だったけど。

『涼がまた差し入れして欲しいって』

「機会があれば是非、って伝えて」

『了解、じゃあね。おやすみ〜』

私は電話を切って微笑んだ。

皆喜んでくれたんだ・・・。

私は頬が緩んだままベッドに潜り込んだ。

そして、約束の金曜日。

学校を終えた私は小さな紙袋を持って寮を出た。

約束の場所に着くと私は辺りを見渡した。

「何キョロキョロしてんだよ?」

「信也さんは?」

そう、信也さんの姿がない。

「今日は用事があって来れないから二人で会っていいってさ」

静は私の手を握って店に足を踏み入れた。

私の心拍数が一気に上がった。

「舞華ちゃんだぁ」

綾香さんの声。

最近は見掛けると綾香さんから声を掛けてくれる。

「こんにちは綾香さん」

私は平静を装って綾香さんに挨拶をした。

「昨日あいつにチョコやったんだって?ありがとうね。すごく美味しかったって言ってたよ。美味しかったんなら土産に一個くらい持って帰って来てくれてもいいのにねぇ?」

あいつって金森さんの事しかないよね?

平らげちゃった、って麗ちゃんが言ってたっけ・・・。

「全員貰ったんだよ、あいつだけじゃない」

静が横から不機嫌そうに口を挟んだ。

「分かってるわよ、そんな事。ねぇ、舞華ちゃん。今度料理教えてよ、得意なんでしょ?」

静が噴き出した。

「何よ?」

「いや、何でも・・・」

何でもって顔じゃないんだけど・・・。

私が静の顔を見上げると彼はウィンクをした。

意味が分からない。

「ね、いい?」

「あ、はい。機会があれば」

「いくらでも作っちゃうから、ね?」

綾香さんは静達と同じ大学らしいけど学部が違うとかであまり交流はないらしい。

「諏訪さん、これ取り寄せ出来ます?」

他の店員さんが綾香さんに声を掛けてきた。

「じゃあ、またね」

綾香さんは笑顔で去って行った。

「あ、舞華。新譜出てる」

静の声に私は振り返った。

「フォンターナのアルバム。買ってくけど・・・久しぶりに寄ってく?」

静の言葉に私は笑顔で頷いた。

嬉しかった。

1カ月ぶりだもの。

私達は手を繋いだまま彼の家に向った。

多少散らかってるだろうと覚悟をして彼の家に足を踏み込んだんだけど・・・綺麗。

親御さんでも来たのかな?

「誰か掃除してくれたの?」

静を見上げるとおでこを指で弾かれた。

「痛・・・っ」

「お前以外の女連れ込んでるとでも言いたいのか?」

静は怒ってた。

「お前が汚いの嫌いだからこの状態を保つ努力をしてんだよ」

静はそう言ってコンポの前に腰を下ろした。

「ご・・・ごめんね。そういうつもりで言ったんじゃないの・・・」

親御さんが来たのかなって思っただけなんだけど・・・勘違いさせちゃったみたい。

どうしよう・・・怒らせちゃった・・・。

「舞、珈琲」

泣きそうになっていると静が言った。

「あ、はいっ」

駄目・・・泣きそう・・・。

私は慌ててキッチンに入った。

失礼なこと言った私が泣くのはズルイ。

泣いちゃ駄目・・・。

私が拳に力を込めると冷たい手がそれを包んだ。

「泣くなよ?怒ってないから」

静の声は優しかった。

「ごめんね静・・・」

私の目から涙が零れた。

泣かないつもりだったのに・・・。

「お前に悪気がない事くらい分かってるから」

静は振り返った私を優しく抱きしめてくれた。

煙草の匂いがする。

静の匂いだ。

私は静の背中に手を回した。


寝不足のまま講義を受けると教授の言葉が子守唄に聞こえる。

昼飯も食った後だし俺は睡魔に負けた。

しっかりと爆睡した。

そして、涼の声に起こされた。

「静斗、終わったよ」

久々にやらかしてしまった・・・。

やっちまったものは仕方ない。

「珍しいね、講義で寝ちゃうなんて・・・寝不足?」

「あぁ、ちょっとな」

恥ずかしくて理由なんて言えない。

「舞ちゃんの事でも考えてたの?」

涼は何も言わずにノートを貸してくれた。

「なっ・・・」

動揺した。

涼が俺の顔を見て笑った。

多分真っ赤だったんだろう。

「ごめん、図星だった?冗談のつもりだったんだけど」

お前確信犯だろ。

英二の影響か?

俺は鞄に荷物を詰め込んで立ち上がった。

「今日会うの?」

「・・・あぁ」

「お礼言っといて」

「おう」

涼とはこの後も講義があるからと廊下で別れた。

そして俺は待ち合わせ場所に向った。

あいつは俺を見つけると辺りを見渡していた。

あいつはまだ知らない。

今日信也が居ない事を。

「何キョロキョロしてんだよ?」

「信也さんは?」

やっぱりな・・・。

「今日は用事があって来れないから二人で会っていいってさ」

俺はそう言ってあいつの手を握った。

ただ手を握っただけなのに心拍数が上がる俺は小学生か?

情けない。

店の中には綾香って女が居るし。

綾香は俺をからかって遊ぼうとする。

正しく英二の女版。

CDを買って舞華久しぶりに家に誘ってみた。

あいつは笑顔で頷いた。

ヤバイって・・・。

その気はないけどその気になりそうだ・・・。

玄関を開けて舞華が足を踏み入れた瞬間、信じられない言葉を吐いた。

「誰か掃除してくれたの?」

多分汚いと予想してたからだろうケド・・・。

俺はデコピンしてやった。

「痛・・・っ」

「お前以外の女連れ込んでるとでも言いたいのか?」

他意はないと分かっていても言わずにはいられなかった。

「お前が汚いの嫌いだからこの状態を保つ努力をしてんだよ」

あいつの顔を見ることなく俺はコンポの前に腰を下ろした。

傍にあるファンヒーターのスイッチを押すと、妙にその音が大きく感じた。

「ご・・・ごめんね。そういうつもりで言ったんじゃないの・・・」

舞華の声が震えている。

ヤバイ・・・。

「舞、珈琲」

俺はあいつの泣き顔を見たくない。

だからキッチンに向わせた。

「あ、はいっ」

あいつは慌ててキッチンに入った。

本当に泣いてるかも・・・。

俺は立ち上がってキッチンに向った。

あいつは俯いて拳に力を込め、涙を我慢していた。

ちょっと罪悪感・・・。

「泣くなよ?怒ってないから」

俺はあいつの手に自分の手を重ねた。

あいつの手は小さく震えていた。

「ごめんね静・・・」

「お前に悪気がない事くらい分かってるから」

振り返ったあいつを抱きしめずにはいられなかった。

俺はあいつが落ち着くまで抱きしめていた。

「舞華」

俺が呼ぶとあいつは顔を上げた。

あいつの目にはまだ薄っすらと涙が溜まっている。

ヤバイ・・・理性ぶっ飛びそう・・・。

それでもあいつに触れたかったから俺は唇を重ねた。

久しぶりに深いキスをした。

「んっ・・・」

あいつの声が漏れる。

その声が俺の欲望を刺激する。

「舞・・・もう疑うなよ」

俺は抱きしめる腕に力を込めた。

「うん、信じてる。珈琲・・・淹れるね」

あいつは殺人的な笑顔を俺に向けて腕からすり抜けた。

何とか理性が勝った。

しっかし・・・かなりのエネルギーを要したらしくとてつもない疲労感に襲われた。

俺は平静を装ってコンポの前に戻った。

久しぶりというのはかなり効く。

「あ、昨日・・・サンキュな。チョコ美味かった。俺も英二も信也も甘いの駄目だけどあっという間に平らげたぞ」

俺はきちんと礼を言ってない事を思い出して舞に視線を移した。

「昨日麗ちゃんから聞いた」

麗華から?

あいつは信也と帰ったと思ったんだけど・・・。

「昨日帰って来たのか?」

「ううん、電話で」

舞華は俺にカップを差し出しながら微笑んだ。

「あ、そうだ。渡したい物があったの」

舞華は鞄の中から小さな紙袋を取り出した。

「ライブの時すごく汗掻いてるでしょ?」

袋にはパイル地のリストバンドが数種類入っていた。

舞華らしい心遣いだと思う。

「サンキュ、使わせてもらう」

俺は舞華の腕を引っ張り抱きしめた。

まだ温まらない寒い部屋の中で、舞の体温がとても心地よかった。

ご覧頂きありがとうございます。


久々に二人きりで会えました。

手を繋いだだけで心拍数が上昇する初々しい二人・・・。

可愛い〜♪

何かこんな二人がとても好きです。


と言う事で・・・。


―― 新井あらい 静斗せいとの紹介 ――


某四大の三年。

涼とは中学校時代からの付き合い。

英二や信也とは大学に入った後、音楽サークルで知り合った。

音楽の話などで意気投合し、GEMを結成し現在に至る。

現在舞華にベタ惚れ。

腰までの金髪に近い茶髪と半端なく目立つ容姿で大学でも有名人。

容姿とは対照的に授業ではかなり真面目。

教授たちの受けもいい。

身長:179cm

血液型:O型

趣味:音楽鑑賞、作曲、酒、煙草

特技:ギターの早弾き

嫌いなもの:泣く女(舞華は当然ながら例外らしい)

苦手な事:嘘、掃除

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