表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
GEM《ジェム》  作者: 武村 華音
23/130

バレンタイン(舞華&静斗)

世の中バレンタインになりました。

舞華もなにやら思案中。

GEMのメンバーは?

二月。

世の中はバレンタイン一色。

静はチョコとか食べるんだろうか?

甘いものを口に運んでいる姿を見た事はない。

珈琲もブラックだし。

でも、本人に訊く勇気はない。

何よりもそういったイベントに興味があるのかな?

でも、クリスマスは用意してくれてたし・・・。

私は結論の出ない事を何時間も一人で考えていた。

「舞ちゃん」

珍しく麗ちゃんが帰って来た。

「お帰り」

「ただいま」

何もなかったように平然と帰って来る麗ちゃんに慣れている自分に呆れてしまう。

「難しい問題でも解いてたの?」

麗ちゃんは私の机を覗き込んで尋ねてきた。

机には数学の教科書とノート。

確かに・・・勘違いされてもおかしくない。

「ううん、バレンタイン近いからどうしようかなって思ってたの」

麗ちゃんは意外そうな顔をした。

「え?誰にあげようって考えてんの?」

何でそんなに驚くのかな?

「GEMとお父さんだけど何でそんなに驚くの?」

私は首を傾げた。

「だよね」

何だか慌ててるのは気のせいなのかな?

「ね、麗ちゃん。GEMの人達ってチョコとか食べる?」

敢えて静の名前を出すのを避けた。

「涼は好きだよ?毎年喜んで食べてる。でも、他は甘いもの得意じゃないみたいだよ?」

やっぱりそうか・・・。

「そっか・・・じゃあどうしようかな・・・」

ビターが妥当かな?

私は頬杖を付きながら考えた。

「チョコじゃない何かをあげたら?」

「え・・・?でもそれじゃバレンタインじゃないじゃない?」

バレンタインってチョコじゃないの?

「あ・・・でもカレカノじゃないんだしおかしいか」

麗ちゃんの言葉の意味が分からない。

「ビターだったら大丈夫かな?甘くないチョコレート」

麗ちゃんはチョコは甘いものだと思い込んでるみたい。

「そんなのあるの?」

「あるよ?」

「麗ちゃんは毎年どうしてるの?」

私は訊いてみたくなった。

「別に?GEMにあげた事なんてないし、信也には私がプレゼントだし」

え?

い・・・今、何て・・・?

私の顔が熱を帯びていくのを感じる。

「舞ちゃん可愛い〜」

真っ赤になったと思われる私を見て麗ちゃんは笑った。

「バレンタインって言えばね、ライブやるんだよ。行かない?」

そ・・・それは無理というものでは・・・?

今年のバレンタインは木曜日。

「麗ちゃん、それは難しいよ・・・GEMのライブを観てたら門限過ぎちゃうもの・・・」

私は苦笑するしかなかった。

残念だけど行く事はできない。

「舞ちゃんが何か作るなら届けようか?私行く気だし」

麗ちゃんの言葉に私はなるほどって思ってしまった。

「お願いしちゃおうかな・・・」

「任せて」

麗ちゃんは笑顔で引き受けてくれた。

今度の部活ではバレンタインのチョコを作るのだ。

私は勉強そっちのけで何を作ろうか考えを巡らせていた。


バレンタインライブか・・・。

俺は別にイベントには興味ない。

それでも来る奴はたくさん居る。

それも甘ったるいチョコを抱えて、だ。

いらねぇっての。

何で女はイベント事が好きなんだ?

理解できねぇ・・・。

「やっほ〜っ舞ちゃんから差し入れだよん」

珍しく遅れて麗華が控え室にやって来た。

相変わらず耳障りな声だ。

俺にとっては、だけど。

ちょっと待て・・・あいつ、今何て言った?

舞華からの差し入れ?

「コレ涼のね。これがその他三人の分」

その他三人って俺を含むんだろうな?

何で三人?

「何それ?」

英二が尋ねた。

「今日はバレンタインだよ?チョコに決まってんじゃん」

麗華は当然でしょというような顔で答えた。

俺達の顔が微かに引き攣った。

「舞ちゃんが甘くないチョコで何か作ったみたい。舞ちゃんは料理上手だし信用していいと思うけど?」

確かにあいつは料理が上手い。

そんな事はGEMの全員が知ってる。

あいつの手料理を食った事があるからだ。

「ちゃんと甘いの嫌いだって伝えたから大丈夫だよ」

「まぁな、あいつは料理上手いからな」

信也はそう言って手を伸ばした。

舞華の腕を信用しているんだろう。

「静斗も食べてごらんよ?」

俺は麗華に促され手を伸ばした。

正直、チョコは嫌いだ。

俺は舞華からだと言われたので覚悟を決めて口に放り込んだ。

「・・・あ」

思わず声が漏れた。

意外にも甘くないし美味うまい。

口の中にほんのりと珈琲の味が広がる。

「さすが舞華だな」

信也が呟いた。

「お前達が食えるなら俺も食ってみよ・・・」

英二は俺達の反応に安心してチョコに手を伸ばした。

そして同じ反応をした。

「お、うめぇ・・・」

俺達は顔を見合わせて笑った。

「でも、何で涼だけ別物なんだ?」

俺は納得できずに尋ねた。

「涼は甘いのイケるでしょ?だからだよ」

麗華は微笑んだ。

ほんの少し舞華と重なって見えた。

禁断症状か?

「嫉妬すんなよ」

英二が俺の耳元で囁いた。

「僕もそっち食べてみたい」

涼はそう言って俺達の分のチョコを摘んだ。

「あ、こっちも美味しい。舞ちゃん凄いね」

さすがに俺は涼の分のチョコを摘む勇気はない。

「英二は家に帰ってもチョコあるんだろ?」

俺は英二に視線を移した。

「あの女のチョコは最悪だ。洗面所に篭らなきゃならん位に酷い」

いや、お前の言葉もかなり酷いぞ・・・。

俺は綾香という女に同情した。

「あいつに教えてやって欲しい位だ」

「何、英二って彼女居るの?」

麗華が俺達の会話に入って来た。

「居て悪いか?」

英二はこういう事を訊かれるのが嫌いらしい。

「連れて来ればいいじゃない」

麗華は楽しそうに英二を見上げる。

俺は英二の反応を見て楽しんでた。

「うるせぇ」

英二はチョコを摘みながら心底鬱陶しそうに呟いた。

どうせ今日来てるんだろうな。

会えないのは俺だけか・・・。

「静斗、ちょっといいか?」

信也が俺を廊下に促した。

何の話をするのか分からないが俺は付いて行った。

「明日、俺用事あるから付き合えない。二人で会って来い」

俺の頭が理解するまでに多少の時間を要した。

「それって・・・二人で会ってもいいって事か?」

思わず確認してしまう。

「明日だけな」

信也の言葉に俺はおもいっきり喜んだ顔をしたんだろう。

信也が噴き出した。

「お前、ガキみてぇ・・・」

「放っとけ」

俺は緩んだ頬を叩きながら言い返した。

その日のライブは大盛況。

俺達は絶好調。

悪夢はライブの後だった。

俺達の控え室には大量のチョコ。

控え室中に甘ったるい馨りが漂っていた。

胸焼けがする。

去年とは比べものにならないほどに増えている。

誰の目にも明らかだった。

涼以外のメンバーがそれを打ち上げで配ったのは言うまでもないだろう。

ちなみに一番喜んだのはオーナーだ。

ご覧頂きありがとうございます。


本日二話UPしました。

もう一話がちょっと遊んでますので・・・。


チョコが嫌いな人には地獄のような日ですよね・・・。

英二の彼女、綾香の用意するチョコレートにもかなり興味があります。

武村だけでしょうか・・・?


体調だいぶ回復。

少しずつ書き溜めた作品の書き直しをしていこうと思います。

まだまだ1/10しか書き直しが出来ていません・・・。

それでも偶数更新だけは守っていこうと思っております。

気合です気合!

気合入れて頑張ります・・・!


次回更新九月十日。


突然ですが・・・。


―― 菊池きくち 舞華まいかの紹介 ――


聖ルチア学園二年。

ルチア会の書記をしています。

成績は上位五位以内を常にキープ。

部活は家庭部。

父の妹(叔母)である理事を恐れている。

内向的で人付き合いが苦手。

特に男性免疫はほとんどなし。

絶対音感の持ち主。

両親の経営する仕事を陰で支えているブレーン。

胸までの真っ黒なストレートヘアでおっとり控えめ。

通常は大人しく目立たない。

温厚な性格で嫌とは言えない損なタイプ。

身長:158cm

血液型:AB型

趣味:手話、料理、読書、音楽鑑賞、勉強

特技:掃除、洗濯、料理

苦手なもの:断る事、理事長、男性(一部除く)

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ