表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
GEM《ジェム》  作者: 武村 華音
21/130

二人(涼&英二)

ちょっと他の視点から・・・。

ある種番外編的な一話です。

静斗は最近凄くイイ感じ。

男の色気も出てきたし、作曲も躓く事もない。

GEMは詞を書いてから作曲をする。

逆のパターンが多いんだけど僕達にはこの方法が合っている。

躓いてるのは僕だ。

僕が躓けばGEMの曲作りはストップしてしまう。

分ってるんだけどね・・・。

静斗は元々音楽に関しては真面目だったけど、さらに真剣さが伝わってくるようになった。

舞ちゃんのお蔭なのかな?

僕が舞ちゃんと会うのは、ほとんどライブハウスなんだけど・・・彼女の耳は凄いと思う。

可愛い顔して音楽には妥協なく厳しい言葉を吐く。

それが的を射た答えなだけに反論のしようもない。

最初に会ったときの脅えた様子はどこへ行ってしまったんだろう?

そう考えると音楽の力って偉大だなぁって思う。

そういえば初対面の時は静斗の半裸姿を見て凄い悲鳴上げてたっけ。

珍しく静斗も自分から謝った。

ムービーを撮ってなかったのが残念で仕方ない。

その位レアだ。

あれだけ女遊びが激しかった静斗がピタッと女遊びを止めた事にも驚いた。

舞ちゃんに本気だからだと思う。

静斗が女に惚れるのは知り合ってから初めてじゃないかな?

「涼?」

静斗が僕の後頭部を軽く叩いた。

「あ、何?」

「何じゃないだろ、歌い出し過ぎてんだけど?」

しまった・・・練習中だった・・・。

「珍しいね、涼がぼぉーっとしてるなんてさ」

麗ちゃんが笑った。

舞ちゃんはライブハウスに顔を出すけど、貸しスタジオの練習には来ない。

静斗が恥ずかしいから連れて来ないのかな?

・・・なんて思ってたんだけど、どうも違うみたい。

もしかしたら静斗は麗ちゃんの気持ちに気付いてるんじゃないかって思う。

だから自分からライブに誘ったりしないんじゃないかなって。

連れてくるのはいつも麗ちゃんだもんね。

でも、最近信也と静斗の様子がおかしい。

静斗は舞ちゃんの話をしなくなった。

別れたのかなって思ったけど違った。

ライブハウスで見掛けた時、隠れてラブラブモード全開だったし。

信也ともあんまり会話をしなくなったし、何かあったことは確かなんだけどな・・・。

ただ、信也が妙に舞ちゃんに反応するのが分からないんだよね。

「そういえばこの間のヘラヘラした男の人どうしたの?」

正式に断ったのかな?

「どうもしない。あの名刺は利用するために貰っただけだし」

信也は多くを語らない。

でも、利用って・・・?

穏やかじゃないな。

信也らしくない。

「麗、お前ちゃんと学校行ってるのか?」

静斗が麗ちゃんを眺めながら尋ねた。

「行ってるよ、気が向いたときに」

「留年するぞ」

「大丈夫。叔母さんがそんな事許さないから」

叔母さんって言うのは信也のお母さんの事だったと思う。

確信犯らしい。

見れば見るほど舞ちゃんと麗ちゃんは正反対だ。

顔はそっくりで可愛いんだけど。

麗ちゃんは天邪鬼で性格もキツめ、だけどちゃんと自分を持ってる。

色的に例えるならビビッドカラー、動物なら猫。

寮にも帰らないし、学校にもあまり行ってないし、髪はカラーリングにパーマを施してるし、男遊びも激しい。

でもいい子なんだよね。

多分照れ屋なんだろうな。

素直に感情表現できないだけで、実は面倒見が良くて心配性で姉御肌。

いつだって僕達の事気に掛けてくれてるし。

舞ちゃんは真面目で素直で博愛主義なカンジ。

色的に例えるならパステルカラー、動物なら人懐っこい犬。

恥かしがりやで赤面症でちょっと人見知りで男慣れしてない。

だから野獣の静斗といるのが不思議なんだよね。

彼女相手じゃ手も出せてないだろうって思う。

何だか初々しい。

和み系っていうか癒し系?

何だか僕まで安心するんだよね、彼女が居ると。

ここまで正反対な双子ってのもあんまりいない気がする。

って言ってもそんなに双子の知り合いがたくさんいる訳じゃないんだけど。

舞ちゃんと麗ちゃんがいる時はGEMも絶好調。

GEMにとってなくてはならない存在になっちゃってるんだから二人もかなり大物だよね。


静斗をからかうのは面白い。

俺の日課だ。

静斗と涼は大学に入ってからの付き合いだが信也とは高校からの付き合いだ。

俺は舞華と静斗をよく見掛ける。

毎週金曜日、あいつらはいつもCD屋にいる。

あのCD屋は俺の女が働いてるし、金曜から日曜まで俺の家に泊まるから迎えに行ってやってる。

だから毎週見てるんだよな。

教えてやらないけど。

俺はCD屋の目の前にある喫茶店でいつも煙草を銜えながらその様子を眺めていた。

静斗の嬉しそうな面。

女を渡り歩いてた男とは思えない。

あいつをからかうには恰好のネタだけど。

CD屋の店内を毎週見てからどこかに向っていく。

ラブホじゃないのは確かだ。

舞華はまだ男を知らない。

見てれば分かる。

まさか静斗の家だとは思わなかったけどな。

あの静斗が女を家に連れ込んで何もしないなんてありえない。

今まであいつの家に乱入して裸じゃない女がいた事はなかった。

毎回皆で女を品定めして遊んだものだ。

それが最近はどうだ。

全く女の気配がない。

奴にとって舞華は例外らしい。

ま、分からんでもないがな。

俺らにも舞華の存在は特別だ。

でも、今日は何故か信也が一緒だ。

そのせいか静斗の機嫌も悪そうだ。

やって来た舞華も信也がいる事を知っていたらしく驚かない。

店内に三人で入って行った。

珍しい顔合わせだと思いながら俺は煙草の火を灰皿に押し付けた。

俺は珈琲を飲みながら女を待つ。

この店は居心地がいい、落ち着く。

文庫本をジーンズのポケットから取り出して読み始めた。

俺はこのひと時も結構好きだったりする。

「へぇ・・・雰囲気いいね」

聞き覚えのある声がした。

声の方向には麗華と“カクテル”とかいうバンドの男が店に入って来た。

男の名前なんて知らない。

関心もない。

しっかし・・・何て日だ。

俺は取り敢えず気付かれないように背を向けた。

「英二」

綾香が俺の肩を叩いた。

綾香は俺の女だ。

「また眺めてたの?」

俺の隣に腰を下ろしながら綾香は店に視線を移した。

「可愛いカップル、今日は一人多かったみたいだけど?」

「だな。ちなみにおまけの男の女が背後にいるからあんま俺の名前口走るな」

綾香は意地悪そうな笑顔を向けた。

「じゃ、帰る?」

「いや、もう少し状況見てから帰る。何か変だし」

綾香は俺の顔を眺めながら微笑んだ。

正直、俺は愛想も良くないし、性格も顔もいいとは思えない。

静斗や涼を見ているほうが目の保養だと思うんだが・・・。

「今日何食べたい?」

「何って・・・お前にそんなレパートリーがあるのか?」

綾香の拳が鳩尾にヒットした。

隣に座ってるくせに見事に鳩尾を殴れるから凄い奴だと思う。

「てめ・・・っ!」

空手黒帯だろ?!

手加減しろよ!!

俺は鳩尾を押さえて身体を丸めた。

本当マジ効いた・・・!

っていうか意識が飛ぶかと思った。

「英二のだ〜い好きなチゲ鍋に決定ね」

俺の大嫌いな、だろ・・・!

綾香と付き合い始めて既に二年。

ライブも観に来るけど控え室には絶対に顔を出さない。

基本的にたくさんの人間の居る所が苦手らしい。

っていうか人付き合いが天才的に下手だ。

舞華と麗華を足して二で割るとこんなカンジになるのかもしれない。

若干麗華が強い気がするけど・・・。

・・・若干か?

8:2で麗華だろ・・・。

俺が自分ツッコミをしているとCD屋から三人が出て来た。

静斗と舞華が顔を見合わせて困っていた。

やっぱり信也がいる理由が分からない。

三人の行き先を目で追っていると・・・おい、待て・・・。

三人は俺達のいる喫茶店に入って来た。

ここは修羅場になるのか・・・?

俺は振り返ることなく耳を澄ませて奴らの会話を聞いていた。

「修羅場?」

「黙ってろ」

舞華と麗華が若干喧嘩っぽい状態にはなったが、麗華が信也を無理やり連れ帰ることで事態は簡単に終結した。

「女の子二人顔が似てたね」

「双子だからな」

「あ、そうなんだ。納得」

綾香は俺の斜め前の席に移動してまじまじと静斗と舞華を観察し始めた。

「綾香、悪趣味だぞ」

「あら、いいじゃない。私は英二と違って面識ないんだし、って・・・あれ?」

綾香が困惑した顔をしている。

「何?」

俺が綾香の視線を追うと、すぐ後ろに静斗が立っていた。

「やっぱ英二だ。そうだと思ったんだよな。彼女?」

俺は舌打ちをした。

「控え室にも連れて来ないじゃん。見られたくなかったのか?」

静斗は楽しそうに微笑んだ。

「別に・・・綾香は人が多い場所が苦手なんだよ」

「へぇ・・・綾香サンって言うんだ?初めまして新井静斗です」

何よそ行きの顔してんだよ・・・。

「知ってる、いっつも見てるから」

綾香も珍しく笑顔で答える。

「いっつも?」

「そ。私、そこの店の従業員なの。貴方達目立つし店員の間でも有名なのよ」

綾香に悪魔の尻尾が見える・・・。

「綾香やめろ」

これ以上の放置は危険だ。

俺は綾香の腕を掴んで立ち上がった。

「英二?」

「悪いな、こいつ口が悪いから退散するわ。このままだとお前絶対にキレることになるから」

俺は腕を放すことなくレジに向った。

「英二、もう少し話したい〜」

「却下」

「英二ぃ〜」

「甘えても駄目」

俺があいつの意見を完全に却下すると舌打ちが聞こえた。

発信源は綾香だ。

「今日、絶対にチゲ鍋ね」

ご覧頂きありがとうございます。


二人というサブタイトルですが・・・。

舞華&麗華 舞華&静斗 静斗&麗華 静斗&涼 英二&綾香 等々・・・。

特定した二人ではございません。

たまには英二や涼視点からでも書いてみたいなぁと思って書きました。


作詞作曲というのはプロの方々は大抵曲が先のようです。

GEMは敢えてその逆をいってみました。

少数派とはいってもそういう方もいるのは事実です。


先日から高熱が続いたんで昨日病院に行ってきました。

“扁桃炎”だそうです。

扁桃腺が炎症を起こして膿んでました。

痛いです。


次回更新九月八日。

更新時間未定です。


次回からあとがきで登場人物の紹介でもしたいなぁと考えております。

お楽しみに・・・。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ