表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
GEM《ジェム》  作者: 武村 華音
2/130

待ち伏せ(舞華&静斗)

舞華と静斗の視線から物語を進行しております。


必要な文房具を買いに行かなければと寮の方向ではなく正門に向って歩いて行くとそこには見覚えのある人物が立っていた。

「舞華」

先週末に会った・・・そうそう、新井静斗さん。

「今、名前思い出してたな?」

新井さんはクスクスと笑った。

「あの・・・麗華は・・・」

「お前に会いに来たんだ」

私の目が点になった。

麗華じゃなく私・・・?

「ここは目立ちすぎるから公園で待ってる」

そう言って彼は足早に消えた。

私・・・行くって言ってないんだけど・・・。

断れなかった自分がいけないのだと私は公園に向った。

「舞華」

公園のベンチで新井さんが手を振った。

「あの・・・?」

「お前と話がしたかったんだ。麗華も信也にかなり怒鳴られてたし連れて来ないんだろうなって思ってさ」

私は首を傾げた。

意味が分からない。

何の話をしたらいいのか?

「お前どこか行く所だったのか?」

「あ、はい。買い物に・・・」

「付き合う」

彼は何を考えてるのか全く分からない。

「何買うの?」

「シャーペンの芯とノートと辞書です」

新井さんは顔を顰めた。

「真面目だな。じゃ、その後CD買いに行くの付き合え」

私は半ば強制的に彼と行動する事になってしまった。

着替えてくれば良かった。

近所に行くだけだからと横着しすぎた自分の行動に後悔した。

聖ルチアの制服を着て彼の隣を歩くのは・・・かなり周囲の目が・・・痛い・・・。

私は近所の本屋さんで必要な辞書と文具を購入した。

ここの本屋さんは大きくて文具も置いてあるので時々来る。

学園の購買部で購入しても構わないんだけど・・・皆一緒でちょっとつまらない。

購買部には可愛い物も置いてないし。

辞書だって自分が使い易い物を選びたかった。

「舞華、それよりこっちの方が使いやすいぞ」

意外にも彼はアドバイスをくれた。

勉強に縁のなさそうな彼が勧めてくれた辞書は確かに見やすくて引き易かった。

私は彼の勧める辞書を購入した。

「じゃ、買い物終わりだな。付き合ってもらうぞ」

彼は私の腕を掴んで目的地に向った。

「お前、CDとか聴く?」

「まぁ・・・聴きます」

うちの両親は芸能プロダクションを経営している。

血なのかもしれないけど・・・聴く耳は確かだと思う。

「何聴く?」

「あ・・・邦楽ならプロエとかフォンターナとかクレセント・・・ですかね」

思い出しながらいくつか好きなバンド名を並べると彼の眼が輝いた。

「じゃあクライスとかも聴く?」

「聴きます」

「俺も好きなんだ」

意外と音楽の趣味が似ているらしい。

「最近邦楽もバンド名が横文字で洋楽と区別つかないよな」

「GEMもそうだと思いますけど・・・?」

「あ、まぁね」

新井さんは鼻の頭をコリコリと掻いた。

「そういえば洋楽なんだけどルチアって知ってる?」

「あ、知ってます。学校と同じ名前だったんで聴いてみたんです。綺麗な声ですよね」

「俺さ、プロエのヴォーカルと同一人物じゃないかって思うんだよな」

彼は音楽馬鹿らしい。

音楽の話になると夢中だ。

「舞華、これ聴いてみろよ」

ヘッドフォンを渡されたので耳に当ててみる。

「・・・あ」

上手い・・・。

「いいと思わねぇ?」

「上手だと思います」

きっと色々な曲を聴いてるんだろうな・・・。

思わず微笑んだ。


初めて会った女にこんな感情抱いたことなんてなかった。

女には不自由してないし、来る者多少拒みつつ去る者は追わない主義だった。

なのにあいつはたった二時間足らずで俺の心に根を生やした。

あいつを送って行った後、信也は俺が手を出したんじゃないかと疑いながら忠告してきた。

「あいつにだけは手を出すな。あいつは特殊なんだ。あいつには関わるな、いいな?」

妙に真剣で驚いた。

すごいお嬢様って訳じゃなさそうだけど・・・男の免疫がないらしいし、人を疑わないのは見ていて分かる。

あいつの目は綺麗だ。

疑うことを知らない子供のような純な目をしている。

あいつと会ってから三日後、俺は聖ルチアの正門前であいつを待っていた。

正直馬鹿だ。

寮に帰るなら敷地内にあるし、正門から出てくることはない。

出掛ける奴らがチョロチョロいるけどあいつじゃない。

もしかしたら会えるんじゃないか・・・なんて考えてた。

信也や麗華に電話番号聞くことも考えたがあの様子じゃ教えてくれないと思ったし待ってれば出て来るんじゃないかって簡単に思ってたところも否めない。

・・・でも、現実は甘くない。

その日は空振りだった。

翌日も空振り。

その翌日も空振り・・・。

俺は何をしてるんだ?

自分の行動が理解できないまま四日目を迎えた。

諦めかけた時、あいつが現れた。

制服のままどこかに出掛けるらしい。

チャンスだと思った。

「舞華」

俺は声を掛けた。

何故だかドキドキしている。

彼女の動きが止まった。

「今、名前思い出してたな?」

俺はクスクスと笑った。

何だか分からないがこいつが可愛いと思った。

「あの・・・麗華は・・・」

「お前に会いに来たんだ」

どうやら麗華に会いに来たと思ったらしい。

そう思うのも無理はない。

しかし・・・周囲の目が気になる。

ここで立ち話するのはちょっと・・・。

俺は公園で待つと言ってその場を離れた。

来るかどうかなんて分からなかった。

あいつは律儀にやって来た。

制服のままなのが残念だったけど。

「あの・・・?」

「お前と話がしたかったんだ。麗華も信也にかなり怒鳴られてたし連れて来ないんだろうなって思ってさ」

別に難しい事言ったつもりはないのにあいつは首を傾げた。

「お前どこか行く所だったのか?」

「あ、はい。買い物に・・・」

「付き合う」

どんな理由でも構わなかった。

「何買うの?」

「シャーペンの芯とノートと辞書です」

そんな物だとは思ったけどさ・・・。

「真面目だな。じゃ、その後CD買いに行くの付き合え」

俺は半ば強制的にあいつを連れ出した。

本屋で使い易い辞書を探しているようだった。

「舞華、それよりこっちの方が使いやすいぞ」

俺が使い易いと思う辞書を渡してみる。

何故意外そうに見上げるんだ・・・?

確かに勉強できますって感じじゃないけどさ・・・。

これでも大学生だし・・・俺。

結局あいつは俺が勧めた辞書を買った。

「じゃ、買い物終わりだな。付き合ってもらうぞ」

俺はあいつの腕を掴んで目的地に向った。

「お前、CDとか聴く?」

「まぁ・・・聴きます」

何でもいいと思いながら訊いてみた。

「何聴く?」

「あ・・・邦楽ならプロエとかフォンターナとかクレセント・・・ですかね」

意外にも俺の好きなバンド名が並んだ。

「じゃあクライスとかも聴く?」

「聴きます」

「俺も好きなんだ」

意外と音楽の趣味が似ているらしい。

「最近邦楽もバンド名が横文字で洋楽と区別つかないよな」

「GEMもそうだと思いますけど・・・」

「あ、まぁね」

そうきたか・・・。

俺は鼻の頭をコリコリと掻いた。

「そういえば洋楽なんだけどルチアって知ってる?」

「あ、知ってます。学校と同じ名前だったんで聴いてみたんです。綺麗な声ですよね」

「俺さ、プロエのヴォーカルと同一人物じゃないかって思うんだよな」

俺の話をあいつはただ黙って聞いていた。

店に入ると俺は自分がいいと思うバンドのCDを視聴させてみた。

「舞華、これ聴いてみろよ」

聴き始めて少ししてあいつが嬉しそうな顔をした。

「・・・あ」

表情をみればいいか悪いかはすぐに分かる。

「いいと思わねぇ?」

「上手だと思います」

俺はあいつとの共通点を見つけて一人喜んだ。

「あ、プロエのCD出てる・・・」

「俺それ持ってる、良かったら聴きに来るか?うちそんなに遠くないし」

いつもの調子で口が動いた。

大体の女は隠された意味を理解して微笑むんだけど・・・。

「え、いいんですか?」

拍子抜けするほど素直に言葉を解釈したらしい。

“あいつは特殊”だと言う意味がなんとなく分かった。

しかし、言ってしまったものは仕方ない。

下心を隠して俺はあいつを家に招いた。

家と言っても賃貸マンションの2DK。

最近はお持ち帰りも控えていたせいで家の中は荒れ放題。

寝る場所は確保してあったけど床が・・・見えない。

「汚いけど、まぁ上がれ」

「・・・い」

小さな声が聞こえた。

「ん?」

「こんな犬小屋以下の場所に住んでるんですか?こんなとこ汚くて座れませんよ・・・!掃除しましょう!」

あいつは汚いのが許せなかったらしく掃除魔人と化して鬼のように掃除を始めた。

あのとてつもなく汚かった部屋を一時間くらいで片付けてしまうあいつは凄いと思う。

部屋の片隅にゴミ袋が五つ積んである。

そんなにゴミばっかりだったのかと自分の部屋ながら呆れた。

「お前・・・凄いな」

「新井さんもあれだけ散らかせるんですから凄いと思いますよ。あ、珈琲淹れてもいいですか?」

「お願いします・・・」

あいつに呆れられてしまった・・・。

俺達は珈琲を飲みながら音楽を聴く事にした。

「たくさんあるんですね」

眼を輝かせながらあいつは壁一面に並んだCDを見ている。

純粋に音楽を聴きに来たのだと改めて落胆した。

「聞きたいのがあったら貸してやる」

あいつは嬉しそうに俺を見た。

あぁ〜襲いてぇ・・・。

何でこんなに無邪気に男の部屋に来れるんだ・・・?

俺はお預けを食らった犬ように心で泣いた。

あいつにCDを貸す事で再び会う口実を作る。

この女は時間を掛けてオトすしかないらしい。

俺は悶々としながらもその中に楽しみを見出した。

ご覧頂きありがとうございます。


サブタイトルの(カッコ)内の人物視点で物語が進行していくお話です。

プロローグは(カッコ)なしなので誰の視点でもありません。

強いて言うなら作者視点・・・?

こんな形で進行していきますという意味で本日UPしてみました。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ