束縛(舞華&麗華)
一月下旬。
舞華に元気がありません。
麗華も気になっているようです。
一月下旬。
あれから麗ちゃんは学校にも顔を出すようになった。
信也さんが言ってくれたのかもしれない。
・・・とは言ってもまだ四日だけど。
あまり学校に来ない麗ちゃんは孤立してる。
以前は友人に囲まれて楽しそうだったのに・・・。
私は交友関係は広くないけど、孤立した麗ちゃんを見ると心配になる。
それでも私が言うと逆効果らしい。
本気で心配してるのに麗ちゃんを怒らせてしまう。
私が心配しちゃいけないのかな・・・。
放課後、教科書を鞄の中に入れながら溜め息が漏れた。
「舞ちゃん」
聞き覚えのある声に顔を上げると、麗ちゃんが立っていた。
教室には私達しか居なかった。
麗ちゃんと話すのはあの日以来だった。
寮には帰って来ていない。
信也さんの家から通ってるんだと思う。
「何考えてたの?」
「麗ちゃんの事。どうして私・・・麗ちゃんを怒らせちゃうのかなって・・・」
私は麗ちゃんを見上げた。
今日は機嫌が良いらしい。
「今週末付き合ってくれるならもっと機嫌良くなれるんだけどな」
月に一度位だと思っていたのに・・・。
この間のライブから二週間しか経ってない。
今月三回目のライブだ。
「そんなに頻繁にやってるの?」
私が尋ねると麗ちゃんは笑った。
「最近、GEMの集客力で利益を上げてるから、オーナーが声掛けてくるの」
確かにGEMを見に来てるらしい人達の姿をよく見る。
所謂ファンと呼ばれる人達だ。
ライブハウスの隅に貼ってある予定表をチェックする人も増えた。
「で?週末どうする?」
「・・・少し考えていい?」
いつもなら二つ返事なんだけど・・・信也さんの言葉を思い出すと素直に頷けない。
「何を考えるの?」
「伯母様が何だか気付いてるらしいの・・・」
私は不安だった。
静を失いたくない・・・。
「私と一緒なんだから大丈夫。私と一緒に帰ろう、そうすれば見つかっても舞ちゃんは怒られなくて済むし。ね?」
何でそんな事平気で言えるの?
「私、麗ちゃんのせいにするつもりはないよ?」
そんなの嫌だよ・・・。
「舞ちゃんは校則違反になるような事しない子でしょ?私が無理やり連れて行くの。分かった?」
麗ちゃんの言葉に私は頭を振った。
「嫌・・・!それなら行かない・・・!」
私の目から涙が零れた。
「舞ちゃん・・・」
麗ちゃんが困ってた。
私が困らせてるのは分かってるの。
でも、麗ちゃんが悪者になるなんておかしい。
私が行きたくて行くのに・・・もう麗ちゃんのせいにはしたくない。
そんな嘘を吐いてまでいい子を演じたくない。
優等生でもない。
叔母さんの期待は大き過ぎて辛い。
あとちょっとでいい、ほんの少しでいいから自由になりたい。
もう脅えながら生活するのは嫌だ・・・。
「・・・分かった。でも一緒には帰るよ?」
麗ちゃんが根負けした。
私は小さく頷いた。
「ゴメンね・・・気遣わせちゃって・・・本当は信也さんのところに帰りたいよね・・・?」
「何言ってんの、私と信也は常に一緒なんだから大丈夫!」
麗ちゃんは綺麗。
ちゃんと自分を持ってるし、思ったことははっきりと言うし、心が強い。
大人の言う通りに生きてる私とは全然違う。
双子なのにどうしてこうも違うんだろう・・・?
私は麗ちゃんが羨ましい。
私も麗ちゃんみたいになれたらいいのに、っていつも思ってる。
でも、麗ちゃんみたいな勇気が・・・私にはないんだよね・・・。
放課後、舞ちゃんの教室を覗いた。
教室にはもう誰も居なくて舞ちゃんだけが席に座っている。
舞ちゃんは心ここに在らずって感じで溜め息を吐いた。
「舞ちゃん」
私が近付いても気が付かないので声を掛けた。
「何考えてたの?」
「麗ちゃんの事。どうして私・・・麗ちゃんを怒らせちゃうのかなって・・・」
多分あの時の事を気にしてるんだと思う。
あの喫茶店でのやり取りだ。
私はここ最近、真面目に学校に来てる。
信也に言われた事もあるけど・・・舞ちゃんに酷い事を言ったって思ったから。
案の定、舞ちゃんは落ち込んでる。
分かってた事だけど・・・舞ちゃんが悲しむ姿は見たくない。
つくづく勝手な女だなぁ私って・・・。
自分のせいなのにね。
「今週末付き合ってくれるならもっと機嫌良くなれるんだけどな」
舞ちゃんはライブを見に来ると楽しそうだ。
当然行くって答えると思っていた。
なのに・・・。
「・・・少し考えてもいい?」
意外だった。
「何を考えるの?」
「伯母様が何だか気付いてるらしいの・・・」
舞ちゃんが時々ライブに出掛けてる事に?
まさか。
叔母さんが気付くはずないじゃない。
でも、誰がそんな事言ったんだろう?
・・・信也・・・?
それ以外に接点のある人物が居るとは思えない。
ライブに行ってるのを知っていて、舞ちゃんと交流があるのは信也だけだと思う。
舞ちゃんの口から他の名前を聞くことはないし・・・って聞くほど一緒に居ないんだけど。
ライブの予定も私に聞いてくるし。
もし、他に交流のある人物がいたらその人に訊く筈だよね?
「私と一緒なんだから大丈夫。私と一緒に帰ろう、そうすれば見つかっても舞ちゃんは怒られなくて済むし。ね?」
叔母さんに舞ちゃんが怒られるのは嫌だ。
平気で舞ちゃんを傷付ける言い方をする。
今の私はスルーされるけど、舞ちゃんにはかなり大きな期待をしてるらしい。
その期待が大きければ大きいほど舞ちゃんは苦しむのに。
「私、麗ちゃんのせいにするつもりはないよ?」
何でそんな事言うのよ?
「舞ちゃんは校則違反になるような事しない子でしょ?私が無理やり連れて行くの。分かった?」
舞ちゃんは首を振った。
「嫌・・・!それなら行かない・・・!」
舞ちゃんの目から涙が零れた。
「舞ちゃん・・・」
私は困った。
舞ちゃんをライブハウスから遠ざけようとしてるのは信也だろうし、何を言ったのか舞ちゃんは不安そうだし・・・。
でも、行きたいみたいだし、私のせいにするのは嫌だって言うし・・・。
「・・・分かった。でも一緒には帰るよ?」
舞ちゃんは小さく頷いた。
「ゴメンね・・・気遣わせちゃって・・・本当は信也さんのところに帰りたいよね・・・?」
「何言ってんの、私と信也は常に一緒なんだから大丈夫!」
もし、本当に叔母さんにバレてたら大変だからその日だけは付き合おう。
舞ちゃんは気付いてないけど、私と一緒に帰れば間違いなく私が責められる。
それでいい。
私は元々素行不良だって言われてたし、信用もない。
舞ちゃんは私が守る。
人身御供に差し出すくせにって・・・?
私だって相手を選んでる。
両親は決して舞ちゃんを傷付ける真似はしない。
でも、あの叔母さんからは舞ちゃんを守らなきゃって思うの。
性質が悪い人だから。
私は四年前、あの叔母さんからかなり口汚く罵られた。
だから自由になるために最後の手段を取った。
叔母さんの目の前で。
舞ちゃんにはそんな事させたくない。
高校卒業まであと少しじゃない。
あと一年。
卒業しちゃえば舞ちゃんだって堂々とライブに行ける。
それまでの我慢だ。
ご覧頂きありがとうございます。
麗ちゃんはその時の気分で行動、発言をしていまい、必ず自分の行いを後悔してしまう、そんな子です。
また、麗ちゃんは過去に伯母の目の前で何をしでかしたんでしょう?
次回更新・・・明日出来れば明日やります。
出来なければ九月二日で・・・。