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GEM《ジェム》  作者: 武村 華音
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遭遇(信也&麗華)

静斗の家にやって来て母親が気付き始めたと告げた信也。

そして、翌週の金曜日。

二人が会う日、信也は静斗と共にその場所に居た。

俺は嘘を吐いた。

静斗と舞華に・・・。

母さんは気付いてなんていない。

気付き始めたのは麗華だ。

最近の麗華はちょっとおかしい。

それを誤魔化すように男遊びを再開した。

「麗華、お前どこに居る?」

俺は電話を掛けた。

『あ、信也・・・?・・・今日はすみ君のとこに居る・・・あっ・・・』

どうやら最中らしい。

俺は電話を切ってベッドに身体を投げた。

あの日、伯母さんが静斗に舞華を任せて帰ってから何だかおかしい。

なんとなく否定してみたけど騙されてくれてはいないようだ。

約束の金曜日。

俺は静斗と共に舞華を待っていた。

「お前だけでも中に居たらどうだ、寒いだろ?」

俺の言葉に奴は首を振った。

「俺はいつもここで待ってるし、今更場所を変える気はない」

夏も冬もここに立っているらしい。

毎週だからなのか・・・周囲の視線が気になった。

「舞華」

静斗は右手を上げた。

俺には舞華の姿は見えていなかったが、こいつには見えていたらしい。

「静っ・・・寒いから中で待っててって言ってるのに・・・信也さんも寒かったんじゃ・・・?」

舞華は静斗の手に触れようとしたが俺の顔を見て止めた。

二人は慣れたように店内に入り、音楽論議を楽しんでいる。

いつの間にか店員まで話に紛れ込んできた。

静斗の話では、ここに通い始めて九ヶ月。

そりゃ、顔馴染みが居たって不思議はない。

「今日はお友達もご一緒なんですね」

店員の言葉に静斗は視線を逸らしながら頷いた。

かなり機嫌が悪い。

俺のせいなのは分かってる。

一時間程話し込んで俺達は店を出た。

店の外に出ると二人が困惑した表情で顔を見合わせていた。

「どうした?」

「いや・・・この後、いつもは俺んちに行くんだけど・・・今日はどうしようかなと・・・」

静斗が髪を掻き上げた。

「そこの店にでも入れば?家はマズイから」

俺はいつも行く店に二人を誘った。

「あれぇ・・・信也?」

聞き覚えのある声。

「麗ちゃん?」

舞華が俺の後ろから顔を出した。

「舞ちゃん?何してんの?」

麗華が顔を顰めた。

俺が舞華と居るのが気に食わないらしい。

「今日は俺に付き合ってもらってたんだ。そこのCD屋まで」

俺は購入したCDをチラつかせて微笑んだ。

「で、店ん中で静斗も見つけたから茶でもしようって話になって連れて来た」

麗華はようやく静斗の存在に気が付いたらしい。

「最近、また派手に遊びだしたな」

静斗はさっさと席に着くと煙草に火を点けた。

煙草が好きではないはずの舞華も自然にあいつの隣に腰を下ろして一緒にメニューを見始めた。

俺は慌てて二人の前に腰を下ろしてウェイトレスを呼んだ。

「アメリカンとカフェオレとウィンナーコーヒー」

俺達は麗華を無視するように音楽の話を始めた。

「最近のお勧めとかない?新人とか」

「最近はあんまりいない・・・かな。うちからも出てないし・・・あ、でもこの間静の家で聴いたのが良かった」

無意識なんだと思うけど・・・。

「舞華、静はやめとけ。っていうかそいつの家の話は外ですんな。どこで誰が聞いてるか分からないんだからな」

「珍しい顔ぶれよね?」

背後から麗華がやって来た。

「このまま信也の家にでも行くの?」

俺の首に腕を絡めながら麗華が舞華を見ていた。

「わ・・・私は麗ちゃんじゃないわ・・・っ」

真っ赤な顔で舞華が言い返す。

「言ってくれるじゃない」

珍しい姉妹喧嘩の始まり。

「最近学校にも来てないでしょ?先生方も心配してる」

「言われなくても分かってるわよ」

「じゃあちゃんと学校に・・・」

「説教なんてやめてよね、お母さん達にでも言われたの?」

「そんなんじゃないっ・・・!私は・・・!」

舞華がテーブルの下で拳を握り締めた。

その拳にそっと静斗が手を重ねるのが見える。

「じゃ、私信也の家に帰る。気が向いたら学校にも行くわ」

麗華は俺の腕を掴んで出口に向う。

二人は驚いたように俺と麗華を見つめていた。


面白くない。

静斗と舞ちゃんの事が気になって仕方ない。

信也の家に居ても落ち着かないのでここ数日間、他の男の家に転がり込んでいる。

他の男の家に来てもやることは同じ。

でも・・・虚しい。

満たされない。

仕方ないので外に出た。

「角君、美味しいコーヒー飲みたい」

私の我が儘にもこの男は応えてくれる。

「この先に美味しい店があるから行こうか?」

多分この男は私が好きなんだと思う。

私は好きじゃないけどね。

顔も良いし、金持ちだし、優しいんだけど・・・物足りない。

信也ほど満たしてくれない。

そろそろ信也のとこに帰ろうかな・・・。

そう思いながら店に入ってコーヒーを注文した。

いい雰囲気の店だ。

信也が好きそうだな・・・。

そんな事を考えていたら、目の前に現れた。

「あれぇ・・・信也?」

この辺に出没するとは思ってなかった。

「麗ちゃん?」

信也の後ろから顔を出した人物に私は驚いた。

意外な人物だった。

何で舞ちゃんと一緒なの?

二人で会うことなんてないと思ってたのに・・・。

「舞ちゃん?何してんの?」

多分、私は舞ちゃんを睨み付けてる。

「今日は俺に付き合ってもらってたんだ。そこのCD屋まで」

信也は証拠と言わんばかりにCDを私に見せて微笑んだ。

別にそんなのが本当でも嘘でも構わない。

でも、舞ちゃんと居るのが解せない。

舞ちゃんが信也と付き合うなんてないと思うけど・・・でも嫌。

他の女なら仕方ないけど、舞ちゃんだけは・・・。

私の半身だから。

信也はさっさと舞ちゃん達の所に行ってしまった。

私の方を振り返ることもしない。

そりゃ・・・私が勝手に他の男の所に行ってるんだし、愛想尽かされたって仕方ないんだけど・・・でも、信也は私だけを見てるはず。

早く信也を連れて帰りたいって思った。

「珍しい顔ぶれよね?」

私は背後から三人に声を掛けた。

角君なんて眼中になかった。

「このまま信也の家にでも行くの?」

信也の首に腕を絡めながら舞ちゃんに尋ねた。

「わ・・・私は麗ちゃんじゃないわ・・・っ」

真っ赤な顔で舞華が言い返してきた。

相変わらず純な子。

「言ってくれるじゃない」

「最近学校にも来てないでしょ?先生方も心配してる」

相変わらず真面目だし。

「言われなくても分かってるわよ」

「じゃあちゃんと学校に・・・」

「説教なんてやめてよね、お母さん達にでも言われたの?」

「そんなんじゃないっ・・・!私は・・・!」

舞ちゃんは俯いてしまった。

子供の八つ当たりだって分かてる。

本当に舞ちゃんが心配してくれてるって事も分かってる。

でも嫌なんだもん。

「じゃ、私信也の家に帰る。気が向いたら学校にも行くわ」

私は信也の腕を掴んで店を出た。

舞ちゃんに申し訳ないなって思ったのもあったけど、信也に満たして欲しかった。

安心させて欲しかった。

「麗、お前角と居たんじゃないのか?」

信也の声はちょっと冷たかった。

「いいの、私は信也と居たいの」

隣で大きな溜め息が聞こえた。

「いい加減、男遊びはやめとけ」

足を止めた信也が真剣な顔でそう言った。

「・・・やめさせてみなさいよ」

可愛くない女だと思う。

でも、舞ちゃんみたいに素直にもなれないし、可愛くもなれない。

信也は私のそういうところを分かってくれる。

だから安心してたんだ。

家に着くと私達はすぐにベッドに倒れ込んだ。

やっぱり信也の体温と匂いは落ち着く・・・。

私は数日間のモヤモヤを忘れ、ただ信也を求めた。

ご覧頂きありがとうございます。


昨日薬を変えてもらったら少し楽になりました。

まだ多少頭は重いんですが、吐き気と眩暈は治まり先日よりもかなりいいです。

頑張って投稿を続けていきたいと思います。


昨日、気分転換に書いている作品をUPしました。

「After the rain」という作品です。

お暇でしたら読んでやって下さい。



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