一月二日(舞華&静斗)
一月二日。
年初めのライブです。
菊池一家がやって来ます。
一月二日。
私は両親と共にライブハウスにやって来た。
年越しの電話の後から静に連絡をしていない。
できなかった。
「舞華」
静の声がした。
静は両親に会釈して近付いてきた。
「初めまして、GEMのギター担当の新井静斗といいます。ちょっとだけお嬢さんお借りします」
静は私の腕を掴んで歩き出した。
「し・・・静・・・?!」
「来い」
静の声は怒ってるみたいだった。
ステージ裏の人気のない場所で静は足を止めて振り向いた。
「俺、お前が誰の娘でも関係ないと思ってる。そんなもん聞かなくたってお前に惚れてるのは分かってただろ?」
「聞い・・・たの・・・?」
多分、私の声は震えていただろう。
「信也からな」
信也さんも話してなかったみたいだし・・・両親が行くって分かって話したんだろう。
どこまで話したのかは分からない。
静は髪を掻き上げた。
「俺はお前の事社長の娘なんて眼で見ねぇし、これからだって変わらねぇ」
私は静の胸に顔を埋めた。
「ゴメンね・・・本当に私なんかを好きになってくれてるのか不安だったの。知ったらそういう眼でしか見られないかもって・・・恐かったの・・・」
泣くつもりなんてなかったのに涙が溢れた。
「ばぁか」
静は優しく抱きしめてくれた。
「私なんか、なんて言うなよ。お前は俺が惚れた女なんだからさ」
そう言って静は私にキスをしてくれた。
「あれ〜?静斗、こんな所で何してんの?」
麗ちゃんの声だった。
「おう、あけおめ」
静は麗ちゃんに挨拶した。
「舞ちゃん?」
麗ちゃんが近付いてきて私の顔を覗き込んだ。
「何泣かせてんのよ?!」
麗ちゃんが静の足を思いっきり踏んだ。
「痛・・・!てめぇ何すんだよ?!」
「舞ちゃん泣かせたあんたが間違いなく悪い!舞ちゃん行くよ!」
私は麗ちゃんに強制的に連れて行かれた。
「あとで迎えに来るからお母さん達と待ってて」
麗ちゃんは両親の所に私を連行して再び消えた。
信也さんの所だと思うんだけど。
「舞ちゃん・・・さっきの子、彼・・・?」
お母さんは微笑みながら訊いてきた。
「な・・・何言って・・・」
私は動揺した。
お母さんはクスクス笑って私の頭を撫でた。
「いい子そうじゃない」
私何も答えてないのに・・・。
お父さんは聞いてないふりをしていた。
「交際証明なら申請してあげるわよ?」
「お・・・お母さんっ」
「このままじゃ校則違反だもんねぇ」
きっと叔母様は認めてくれない・・・。
叔母様は静の事知ってる筈だもの。
「お母さんに任せなさい」
お母さんはそう言って私の肩を抱いた。
そして何組もの上手とは言えないバンドの曲を聴き、最後のGEMの出番になった。
「あ、信也君はドラムなんだ?」
「うん」
曲が流れ始めると両親の眼はステージに釘付けになった。
「・・・舞ちゃん、これのどこが甘いの?」
お母さんはステージを見ながら私に尋ねた。
「オリジナルのセンスもいいし、完成度も高い。技術面は文句ないの。でもまだGEMが出来上がってないの。このままデビューさせると彼等は潰れちゃう。すぐにばら売りになる。だから・・・まだ駄目」
私もステージを見ながら答えた。
今日の静も輝いてる。
彼の首に掛かってるのは・・・私がプレゼントしたネックレス。
・・・嬉しかった。
「舞ちゃんは彼のバンドでもお構いなしなのね。手厳しいわ」
「・・・大事だからこそ評価は甘くしない。彼等が本気だから私も本気で彼等に向き合わなきゃ失礼だもの。お母さん達も何度か聴けば分かると思う」
私の言葉にお母さんは溜め息を吐いた。
お父さんは黙って聞いていた。
一般の高校生が彼等にこんな事を言うのはおかしい。
後は両親に任せて黙っているしかない。
私は表には出れない人間だから・・・。
あいつからの電話はない。
「静斗、舞から連絡きたか?」
「いや」
信也の声に俺は不機嫌に答えた。
「あいつ・・・恋愛したことないし、多分恐いんだと思う。責めないでやってくれ」
「分かってる」
あいつ、また明日って言ったのに・・・。
・・・待てよ?
あの時、元旦になってたんだから・・・今日の事か?
俺はボーっと客席を眺めてた。
舞華と眼鏡を掛けた真面目そうな男と何故か目立つ綺麗な女が入ってきた。
あれが舞華の両親・・・?
俺は舞華と話したかった。
だからあいつの許に向った。
親が居ようが居まいが関係ない。
「舞華」
俺は声を掛けた。
ここ最近は一週間以上会わないなんて事なかったから久しぶりな気がした。
舞と舞の両親が俺の方を向いた。
俺は軽く舞の両親に会釈して歩み寄った。
「初めまして、GEMのギター担当の新井静斗といいます。ちょっとだけお嬢さんお借りします」
そう言って舞の腕を掴んでステージ裏の人気のない所までやって来た。
振り返った俺の眼にクリスマスにやったネックレスが映った。
こいつも俺の事好きでいてくれてるのだろうか?
「俺、お前が誰の娘でも関係ないと思ってる。そんなもん聞かなくたってお前に惚れてるのは分かってただろ?」
「聞い・・・たの・・・?」
「信也からな」
俺は髪を掻き上げた。
「俺はお前の事社長の娘なんて眼で見ねぇし、これからだって変わらねぇ」
あいつは俺の胸に顔を埋めた。
最近照れ隠しとか都合の悪い時にそんな事してるって気が付いた。
「ゴメンね・・・本当に私なんかを好きになってくれてるのか不安だったの。知ったらそういう眼でしか見られないかもって・・・恐かったの・・・」
あいつは泣いてた。
「ばぁか」
俺はそっと抱きしめた。
「私なんか、なんて言うなよ。お前は俺が惚れた女なんだからさ」
お前ほどいい女・・・俺知らねぇし。
俺はあいつにキスをした。
「あれ〜?静斗、こんな所で何してんの?」
嫌な声・・・。
麗華だ。
「おう、あけおめ」
早く立ち去って欲しかった。
なのに・・・。
麗華は俺達に近付いて来て舞を見つけた。
「舞ちゃん?」
麗華があいつの顔を覗き込んだ。
「何泣かせてんのよ?!」
麗華が俺の足を思いっきり踏んだ。
激痛が奔った。
「痛・・・!てめぇ何すんだよ?!」
「舞ちゃん泣かせたあんたが間違いなく悪い!舞ちゃん行くよ!」
あいつは麗華に連れ去られてしまった。
九日ぶりの再会は僅か数分。
でもあいつは客席から俺を見てる。
俺は首に掛けたネックレスを握り締めた。
ライブの後、麗華が舞華と両親を連れて来た。
「初めまして、M・K Recordsの菊池美佐子と申します。今日のライブとっても素敵だったわ」
あいつの母親は俺に名刺を差し出した。
GEMのリーダーは俺じゃない、信也だ。
「うちの会社が貴方達に期待している事を知っておいて欲しくて今日はお邪魔したの」
俺は煙草を銜えながら名刺を眺めた。
副社長―――。
「伯母さん、今日どうだった?」
信也は俺の煙草を横取りしながら尋ねた。
「及第点じゃないかしら」
舞華の母親はにっこりと笑った。
及第点・・・。
まだプロでは通用しない、と言われたのと同じだ。
「まだGEM色が構築されてない。それはプロになるためにはなくてはならないものなんだ。腕だけなら君達は充分に通用するが、GEMとしては現時点では難しい」
舞華の親父らしき人物が口を開いた。
あいつは父親の後ろに立って俯いている。
どんな表情をしているのかは窺えない。
「時々お邪魔するからライブの予定が分かったら彼女に連絡して欲しい」
舞華の親父は舞華の腕を掴んで控え室を出た。
「敦さん、舞華は置いて行って頂戴」
舞華の母親がそう言って俺を見た。
「貴方、送って下さるんでしょ?よろしくね」
俺の肩をポンと叩いて彼女は微笑みながら部屋を出て行った。
「きっついなぁ・・・GEM色かぁ・・・」
涼がボソッと呟いた。
反論できなかった。
その通りだ。
分かってる。
だからこそ悔しかった。
ご覧頂きありがとうございます。
ついに舞華&麗華の両親がGEMの前に登場です。
父親(菊池敦)が社長、母親(菊池美佐子)が副社長です。
舞華の母は舞華の恋を応援してくれているようです。
今後も出てきて欲しいですね、作者的には。
次回更新24日です。