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GEM《ジェム》  作者: 武村 華音
12/130

集合(静斗&信也)

大晦日の晩。

静斗はテレビを眺めながら舞華からの電話を待っています。

あいつから電話が来たのは新年を迎える十五分前だった。

「もしもし、舞華?」

『起きてた?』

心なしか声に元気がない。

「どうした?」

『・・・何でもない』

何でもあるだろ。

そんな声で心配にならないはずがない。

「何かあったんだろ?言ってみろよ」

あいつはそれでも言おうとしない。

あいつの所には今両親が居るって言うし会いに行く事も出来ない。

こんなにもどかしいのは初めてだ。

『静・・・一月二日、ライブ・・・あるんだってね?』

「おう、どうせ来れないだろうから言わなかったけどな。麗華情報か?」

再び舞華が黙り込んだ。

『あのね・・・今度のライブ・・・私の親が見に行きたいって言ってるの』

何であいつの親が来るんだ?

俺にはあいつの言葉の意味が分からない。

「で?」

俺は続きを促した。

『多分・・・挨拶に控え室に行くと思うの・・・』

沈黙の長い電話に俺は不安になった。

「何?それって俺とお前が付き合ってるってバレたって事?」

『違うの・・・違う用件でそっちに行くの』

意味が分からない。

テレビが新年を迎えるカウントダウンを始めた。

「舞華、カウントダウン始まったぞ」

『うん・・・』

3・2・1・0!!

あけましておめでとうございま〜す!!

テレビでアナウンサーが大きな声で新年の挨拶をした。

「舞華、あけましておめでとう」

『あけましておめでとう・・・ごめんね、何だかどんよりした空気で新年迎えさせちゃって・・・じゃ、また明日・・・おやすみなさい』

あいつは小さな声でそう言って電話を切った。

あいつの事が凄く気になった。

俺は信也に電話を掛けた。

何か知ってるかもしれないからだ。

「もしもし?俺」

『おう、あけおめ・・・』

信也の声も何故か暗い。

「なぁ、何かあったのか?舞華もお前も何かおかしいぞ?」

『舞華・・・何だって?』

やっぱり信也は事情を知っているようだ。

「二日のライブに親が行きたがってるって言ってた」

『俺さ・・・お前等に話さなきゃならない事があるんだ。今からそっち行ってもいいか?』

いい話ではなさそうだけど、聞かなきゃいけない気がした。

「おう。あいつらに声掛けてみる」

『頼むな・・・』

俺は電話を切って、涼と英二に電話を掛けた。

あいつらはすぐにやって来た。

所詮俺等は暇人。

実家にも帰らない薄情な息子だ。

「これ手土産」

「おう、助かる。サンキュ」

涼がコンビニでビールを大量に買ってきてくれた。

「結構綺麗な状態保ってんのな」

「汚すとあいつが怒るからな」

「相変わらずラブラブモード全開だね」

他愛のない会話をしていると信也がやって来た。

やっぱり表情が暗い。

「信也、どうしたの?」

涼も英二も信也の様子がおかしい事に気が付いた。

「俺・・・ずっと黙ってた事がある・・・」

信也は玄関に立ったまま俯いて動かない。

「とにかく上がれよ」

俺は冷蔵庫からビールを取り出して奴等に配った。

信也は腰を下ろすと拳を握り締めた。

「取り敢えず飲もうぜ」

俺達はプルトップを引いて缶ビールを掲げた。

「あけましておめでとう!」

そして何故か全員がノルマのように一気に飲み干した。

話しにくい事を話す時のお約束だったりする。

「あのさ・・・M・K Recordsって知ってるだろ?」

あいつは急に話し始めた。

「大手じゃん」

「それがどうかしたの?」

「M・Kは麗と舞の両親の会社なんだ」

信也の言葉に俺は衝撃を受けた。

M・Kの社長がライブを見に来るって事なのか?

「麗華から話を聞いてGEMに興味を持ったらしい・・・俺はコネとか嫌だし当てにもしてなかったし言う必要もないと思ってたんだ」

信也が珍しく喋る。

「でも、あの会社のブレーンが俺等の音楽を聴いて、見込みはあるって言ったらしい。麗華が言ってた」

「いい話じゃん」

英二は微笑んだ。

「で、何で信也が謝るの?」

涼が尋ねる。

俺も同じ疑問を持った。

「本気でやってるから言えなかった・・・コネとか言われたくなかったし実力で上がって行きたかったから・・・黙っててごめん・・・」

信也は俺達に頭を下げた。

「やめろよ、お前らしくない。実際、ブレーンが良いって言ってくれてるんだろ?俺等の実力を評価してくれたって事じゃん?謝る事なんてない」

俺は信也にビールを手渡した。

「俺等はお前が本気でやってるのも分かってるし、悪意がない事も分かってる。麗とか舞もそうだろ?」

信也は真剣にやってるからこそ言えなかった。

あいつはM・Kの社長の娘って見られるのが嫌だったんだろう。

俺はそんな眼であいつを見たりしないのに。

純粋にあいつに惚れてるのに・・・。

それだけがショックだった。


新年のカウントダウンが始まった。

こんな気分で年を越すのは初めてだ。

隣では麗華が平然と蕎麦を食ってる。

こいつは何とも思わないらしい。

当然か・・・。

俺は幼い頃から伯父さんと伯母さんの仕事の事知ってるんだし、今更言う事なんてない。

でも、俺は?舞華は?

舞華も俺も・・・あいつらに何も話してない。

話さなきゃならない。

俺はビールを飲み干し缶を握り潰した。

「信也?さっきから暗いよ?あ、あけおめ〜っ」

麗華は俺の顔を覗き込んでキスをしてきた。

「新年の初キス♪」

無邪気に笑う麗華を見ても今の俺はこいつを抱く気にもならない。

麗華は俺の顔をじっと見たと思ったら立ち上がってトイレに行ってしまった。

悪いとは思う。

でも、今はそんな気分じゃない。

新年最初の電話が鳴った。

『もしもし?俺』

相手は静斗だ。

「おう、あけおめ・・・」

気が重い。

『なぁ、何かあったのか?舞華もお前も何かおかしいぞ?』

舞華から電話があったのか・・・?

「舞華・・・何だって?」

『二日のライブに親が行きたがってるって言ってた』

「俺さ・・・お前等に話さなきゃならない事があるんだ。今からそっち行ってもいいか?」

早いうちに話してしまった方がいいと思った。

静斗は涼と英二に声を掛けてくれるというので俺はそのまま麗華に行き先を告げることなく家を出た。

バイクで行けばこの時間なら二十分くらいで着けるだろう。

俺は捕まるのを覚悟でバイクに跨った。

静斗の家に着くと涼も英二も既に来てた。

俺はどこまで話そうか考えていた。

「信也、どうしたの?」

涼が俺の顔を覗き込む。

「俺・・・ずっと黙ってた事がある・・・」

玄関に立ったまま俺は動けなかった。

「とにかく上がれよ」

静斗に促され、俺は腰を下ろすと覚悟を決めるように拳を握り締めた。

「取り敢えず飲もうぜ」

俺達はプルタブを開けて缶ビールを掲げた。

「あけましておめでとう!」

そして全員が一気に一缶を飲み干す。

いつからか話しにくい事を話す時のお約束になっている。

「あのさ・・・M・K Recordsって知ってるだろ?」

俺は考えながら話し始めた。

「大手じゃん」

「それがどうかしたの?」

「M・Kは麗と舞の両親の会社なんだ。麗華から話を聞いてGEMに興味を持ったらしい・・・俺はコネとか嫌だし当てにもしてなかったし言う必要もないと思ってたんだ。でも、あの会社のブレーンが俺等の音楽を聴いて、見込みはあるって言ったらしい。麗華が言ってた」

「いい話じゃん」

英二は微笑んだ。

「で、何で信也が謝るの?」

涼が首を傾げる。

「本気でやってるから言えなかった・・・コネとか言われたくなかったし実力で上がって行きたかったから・・・黙っててごめん・・・」

俺はブレーンが舞華である事実を告げることは出来なかった。

追々分かることだし、今話す事じゃないと思ったからだ。

俺達は結局飲み明かした。

朝方麗華がかなり怒りながら電話してきたけど、俺は少しだけ気持ちが軽くなっていた。

床に転がって大の字で寝てる仲間を見て俺は微笑んだ。

仲間がこいつらでよかった。

素直にそう思った。

ご覧頂きありがとうございます。


年越し電話って多いですよね。

私もよく掛けます。

携帯だとなかなか繋がらなかったりします。

皆同じ事考えてるんだなぁって思います。

・・・でも、舞華の落ち込んだ年越し電話は嬉しくないなぁ・・・。


静斗の家にGEMが集合。

それも新年早々。

男の友情ってイイですね。

私は好きです。

ビールの350缶を一気飲みして語るってのは武村の仲間内のお約束です。

だから友人が一気飲みした時は何かあったんだなって分かります。

現在はドクターストップで出来ませんが、酒を飲んでから話すほうが精神的に楽になります。

ま、個人差がありますけどね。


本日大量修正しました。

いつの間にかGEMをJEMと記載してたんです。

それに今頃気が付いたので一気に修正しました。

本編の内容に変更はございません。

ご迷惑お掛けしました。


次は22日に更新します。

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